診療所に戻ったユリは、二階の私室でリクライニングチェアに身体を沈めてテレビの王宮爆撃報道を見ていたドクター・スベリエに声をかけた。
「お父さん、大丈夫だった?」
「ああ、なんとかな。ユリこそ、頑張ったな。お疲れさん」
「電気、つけないの?」
「ガラスがないから、虫が入ってくる」
「なるほど。でも、夏でよかったね、寒くない」
「遺体には問題だが、まあ、それも、もうなんとかされているだろう」
「ご飯は?」
「みんなと済ませたよ」
診療所の看護師たちのことだった。
「王宮に各界から差し入れ、とかで、ヘンにうまい食事だった」
「私たちも、軍の配給をもらって食べたけど、普通に美味しかった」
「なんだかんだで、王宮は愛されているよ、国民に」
「ですね。私、シャワー浴びるね。とりあえずさっぱりしたい」
「それがいい」
窓ガラスはほとんど割れてしまっていたから、ユリも明かりをつけずに、服を脱いで、シャワーを浴びた。
熱い湯が、たくさんの死のなごりを拭い去る。