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かくれんぼならぬ鬼ごっこが行われた住宅地は、いつの間にか619号室に戻っていた。
「――――」
アリスは目を閉じた。
――花崎の死は、バグだった。
あの橋の直前の停留所で彼は目を覚まし、降りるはずだった。
つまり、人間界に戻った彼は、その本来の運命通り正しく動いた。
しかし―――。
あのバスが事故にあうだろうと予測できる今の彼なら、バスの乗客10名と運転手1名を、助けることもできた。
――それをしなかったのは、彼自身の選択。
そして、アリスがここにいるのも、彼の選択により導かれた結果だ。
「――――あいつは生き返ったか?」
アリスは目を開けて振り返った。
そこには顔面を蒼白にした尾山が立っていた。
「ええ。無事、生き返りました」
「―――そうか」
尾山はそう静かに言うと大きく息を吸い、そしてゆっくりと吐いた。
「それなら、私の役目はもう終わりだ。自殺で処理してくれ」
そしてアリスに柔らかく微笑んだ。
アリスはそれには答えずに、尾山を見つめた。
「尾山さん。最後に、ゲームをしませんか?」
「――ゲーム?」
尾山が眉間に皺を寄せる。
「ええ。僕と二人でゲームをしましょう。何も死に急ぐことはないじゃないですか。ここには無限に時間があるのですから。ひと勝負くらい、いいでしょう?」
「――ふっ」
尾山は笑った。
「君は本当に、不思議な少年だ」
尾山は頷いた。
「いいよ。何にする?トランプか?それともかくれんぼ?」
「いえ―――」
アリスは微笑んだ。
「”30カウント”でどうですか?」
「30カウント……」
尾山は顎に手を添えて首を捻った。
「交互に数字を言っていって、30を言った方が負けっていう、あのゲームか?」
「そうです。1回につき、最大3つまでカウントを進めることができます」
「――いいよ。やるか」
尾山は、目を細めてアリスを見つめた。