大学の講義が終わり、時刻は17時。
今日はサークルもなく、トモダチと世間話をしている
このトモダチは、良く言う一軍の部類。
俺もどうやらその部類に入ってるとか言うけど、そんな気はしない。
そして、俺以外に喋れるやつは幾らでもいると言うのに、毎日のように俺に寄ってくる。
微かにだが、そいつは、俺以外の奴との会話は、楽しくなさそうな顔をしている
イズミみてぇ
(今日の講義意味わかんねぇ!)
「分かる 笑
でも、一応は理解出来たよ」
(マジで?!やっぱ頭良いなぁ)
「んな訳」
いつもこういう話をしているが、何か楽しくない
イズミの時と変わらない会話をしているのに
(この後どっか予定ある?ボーリング行かね?)と優しい笑顔で言われた。
その優しい笑顔、イズミに少し似てるなぁ。
けど、やっぱりイズミ以外には、ウッとかNoが言えないとかはない。
今日は少し離れた景色を見に行きたいから無理かな。と答えると、少し残念そうな顔をして了承してくれた。そのついでに(今度写真で良いから、その絶景見せてくれよな?)と言われ、「気が向いたらね 笑」と返すと、(信じてっから〜)と言われた。
トモダチと別れを告げ、カバンからイヤホンを取りだして、片耳に付け、電車へ向かう途中に知らないお姉さんが俺へと走ってくる
(あの!!)
このパターンは…逆ナンか
またか…飽きたし、今は誰にも喋りかけて欲しくなかったんだけどなぁ…
ダルいなと思いながら、声をかけてくれた上品そうな お姉さんに返事を返す
「はい、どうかしましたか?」
(お兄さんイケメン…ですよね!つい声かけちゃいました。良かったら一緒にカフェにでも行きませんか?)
「すみません 笑 俺これから予定があるんです。
また会えた時にカフェにでも行きましょ?」
(あ…はい!)
「では…笑」
そう言い、一応印象をよくするために軽く手を振り、愛想笑いをしてお姉さんの横を通り過ぎる
もう二度と会わないと思うけど…
あちらこちらと女性や男性に視線を向けられながら、電車の中へ入り、車両席に座る
何度も電車に乗っていて慣れたが、どうすればこの女性達の熱い視線を回避出来るのかと毎度思う。
会えるのか知らないけど、今向かってる絶景と言われてる場所にいればなぁ…。
イズミは、金髪でチャラそうな見た目の割に、自然の事は誰よりも愛していて、1人の奴を大事にする奴だ。
お前に逢って、話したいことたくさんあんだよ…早く、俺の前に現れてくれよ
お前以外に、信頼出来る奴誰もいないんだよ
悩み事も聞いてくれよ。
イズミ視点
真っ暗な世の中
どうしてこう思っちまったのか…分かんねぇ
カナメの前から離れて、数え切れない程の地獄があって、今の俺は…きっとゾンビみたいなもんだ
県は一緒だが、前とは市がバカみたいに遠のいて、今通ってる偏差値54程の大学に行き、家族のいる家へ帰り、風呂飯、寝る以外の事はしない。
休日はゲームなどの娯楽はせず、ベッドから動かないまるで屍。
気分が出れば、高校の頃カナメと一緒に聞いた「ミスター・ブルースカイ」、「ねむるまち」の2つをリピート。
けど、今日は違う動きをしている
久々に、絶景を見たいと思った
大学が終わって、サークルも少し早めに終わり、夕方18時頃の時間帯
こういう時、成人している人にしか出来ない特権と俺は思う。
弟のイタチに「今日帰んの遅くなる。絶景見てくる」とメッセージを送信すると、すぐに「気を付けてね」という返事がきた。
引っ越す前までは、返信クソ遅かったのになw
マップを頼りに、結構家から離れて行くと、目的地に到着したとなり、前を向けば、時間帯がちょうど良いという事もあり、言葉では言い表せないほどの美しい夕焼けがある。
あぁ…綺麗。やっぱり、どんだけ地獄があっても、この絶景は見ていたい。
そして、あわよくば、カナメと見たかった。
カナメ今何やってんだろ。俺の事探してくれてるかな。あん時俺が言ったこと、覚えてっかな?
ちゃんと、生きた心地を感じれてるかな?
逢いてぇな
こういう絶景な所に来たら、今ある地獄から逃げれたようで、好きなように思考が回せて楽しくなる。
久々に、引っ越す前のところの絶景に行きてぇな
少し崖になっているところに腰を下ろし、下を眺めれば、何だか見た事のある純白なホワイトカラーの髪色、カリンチョリン、朱殷色の瞳でたまにしかないハイライトが俺の方に向いているように見えた。
カナメ?
どうしよう。俺、今の俺めちゃくちゃダサいよ
高校の頃の”俺”じゃないよ?
あ、あそこの木々…。俺の身体能力なら、結構太い枝に乗れるかな
急いで見つけた枝に登り、カナメが来てもいいように隠れた。
正直、めっちゃ情けない。
カナメ視点
ふと上を見れば、金髪で、カリンチョリンで、おにとっては唯一無二の黒い瞳の人が、崖の上に座って俺を見ているのが見えた。
イズミだ。
不思議とすぐに頭が回転し、スマホを開いてすぐにここのマップを見れば、イズミがいた行き方がすぐに出て来た。
一瞬でその行き方を覚え、スマホをポッケにしまい、全力疾走でイズミの元へと走る。
イズミがいた崖のところへ辿り着いたが、イズミの姿がなかった。
けど、まだこの崖にいるはず。
途中アホみたいに急な坂も、全部で普通30分程かかる道を全て走って約15分でここまで来たから、横腹痛いし息も苦しい。
心臓の鼓動もうるさい。
しゃがんで息を整えたい。
目で辺りを見渡せば、金髪の奴が俺の方を見ていなかったが、枝に乗っかっていた。
良く登れんな。俺が乗っても大丈夫な程に太い枝
俺も乗れっかな
イズミ視点
枝に乗っかって、空の方に首を向けていたら、急に優しくて、ほんの少し甘い声で「イズミ」と呼ばれた方向へ向けば
カナメがいた。
なんで?どうやって?気配消した?
ていうか、来るの早くない?ついさっき枝に乗っかったのに。
変な憶測をしていると、カナメの口が開いた
「見つけた」
またもや優しくて少し甘い声で、俺の方を向いて喋っていた
お前って、そんな声も出せてたっけ?
その発言で、さっきまで考えていた事の答えが出た。カナメなら覚えていてくれるって信じてたよ
「「 んはっw 約束、覚えててくれたんか」」
「イズミのは全部覚えていたいから」
「「ホストかよ」」
「な訳」
あぁ…落ち着く。ここに来て良かった。
やっぱ…俺、高校の頃よりも友達は倍以上に増えたのに、誰1人信頼出来てなかったか。
カナメみたいな全てを丸投げ出来るような、しばらくの間溜まっていた涙が零れていきそうな……そんな事がなかった。
「……信頼出来る親友は出来たか?」
少し不安げなのに、声は変わらない優しかった。
何だが、今はカナメが話し手になってんなァ。
高校の頃は俺がずっと話し手だったよな。
成長してんなァ。家族の事も、ちゃんとケジメつけれてっかな?
「「あ〜、んや。カナメ以外だーれも」」
「そっか」
「「カナメは?親友増えたか?ゆめにも出会ってねぇか?」」
「うん。出会ってないよ。親友は変わらずイズミだけw」
「「そーかー」」
お互い変わんねぇなぁ。
「なぁ」
「「ん?」」
優しい声はどこかへ行き、高校の頃良く聞いていた声に戻っていた。
あぁ、これは聞かれる
「急に俺の前から消えてどうしたんだよ」
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