この作品はいかがでしたか?
199
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「やめて!」
ハッと、リノの声で意識が戻る。
くさいゴミのにおいが鼻をかすめる。(僕たちに鼻なんてないが)
まわりにはかべ、かべ、かべ。
あぁ、どうしてこんなことになったのだろうか…。
ー時は戻り、数時間前ー
とてもよく晴れた気持ちのいい朝だった。
僕はギャラ、時の番人をしている。
そんな僕とリノは兄ちゃんの研究所にいた。
兄ちゃんが面白い薬を開発したらしい。
「バレないように慎重にね!」
「うん!」
「ちょっと!声が大きいよ!」
そんな会話をしながら、こっそりテーブルに近づく。
兄ちゃんは…寝ているようだ。
きっと徹夜で発明していたのだろう。
あとでココアでも持ってきてあげようか。
「よし!とった!」
そう考えているうちにリノが薬の入ったフラスコをとって持ってくる。
リノは友達で同い年だ。
だから、よくこうやって二人でイタズラを仕掛けたり、
遊んだりする。
兄ちゃんにもマシンガンにもすっごく怒られるけど。
「ギャラ!早く!ウェブが起きちゃう!」
「あ!そうだった!」
さっきから、ずっと寝てるのが僕の兄ちゃんのウェブ。
頭がよくて、運動神経がとってもいい。
僕もよく稽古をつけてもらう。
「やった!やった!作戦大成功!」
「早速使ってみようよ!」
リノがぴょんぴょん飛び跳ねながら喜ぶ。
それに便乗して自分も跳ねてみる。
ここまでは、計画通り。のはずだった。
「あっ!」
ーパリンー
リノの手から薬が入ったフラスコが落ちる。
とっさのことで僕たちは反応できなかった。
「いてててて…」
「あ~、びっくりした!」
フラスコが割れて中の薬が僕たちにシャワーのようにふりそそいだ。
だけど、何も変わっていない…と思っていた。
「何コレェ!?」
リノの大声に僕は少し後ずさる。
しかし、それもそのはず。なんてったって僕たちは…
「幼児化した?」
マシンガンが音を頼りにこちらを向く。
彼は目が見えないかわりに音で僕らを探す。
だから、マシンガンと話すときはつねに音を出さなきゃいけない。
「どうりで無いと思ったよ~」
兄ちゃんがあきれながらため息をつく。
「うぅ、ご、ごめんなさい…」
「気を付けてよね!」
兄ちゃんがぷんぷんと怒りながら僕とリノを叱る。
「体に害のない作用でよかったな。」
とマシンガンがタバコを吸いながら言う。
本当にそのとおりだった。兄ちゃんいわく、試験品だったようだったから。
「これからどうしよう…」
「僕たちこのままなのかな…」
と頭を抱える僕たちに兄ちゃんはこんなことを言った。
「大丈夫!そのうち効果は切れると思うから!」
「そのうちってなによ!そのうちって!」
適当なことを言う兄ちゃんをリノはポカポカ殴り付ける。
そんなリノを尻目に兄ちゃんはとんでもないことを言い出した。
「まぁ、とりあえず~」
「「「は?」」」
全員の心情が重なった瞬間だった。
それからというもの兄ちゃんにあれよ、これよと連れて行かれ、
今、僕たちはとある商店街にいる。
なんで、お店をめぐっているかというと、
兄ちゃんが、
「たぶん、どっかのゲームみたいに牛乳飲んだら治るでしょ!」
って言ってたからだ。
「本当に、牛乳飲んだら治るの?」
僕は商店街に入っている店で牛乳を探しながら言う。
そんなとき、後ろから、
「マシンガン!?どこ行ったの!?」
というリノの声が聞こえてくる。
そういえば、いつのまにか、マシンガンの鈴の音が聞こえなくなっていた。
彼は仕事をするため、からだ中についてる鈴の音を消して歩くのが得意だった。
それゆえに迷子になったらなかなか見つからないのだ。
「あれっ!?本当だ!」
僕も驚きの声をあげる。
僕らはさっさと会計をすまし、店から出た。
どうやって見つけようか悩んでいると、兄ちゃんがこんなことを言い出した。
「オイラがマシンガンを探してくるから、二人はここで待ってて!」
僕たちが抗議しようと声をあげようとするより先に
兄ちゃんはショートカットを使って行ってしまった。
子ども二人を残していなくなるのはどうかと思ったが、
もう、どうしようもなかった。
「これから…どうしようか?」
と、僕が言うと、リノも困ったような顔でこちらを見た。
でも、運の良いことに近くにベンチがあったので、僕らはそこに座って、
二人を待つことにした。
自分の体感で数十分たったと感じたころ、
本日二回目の事件が起きた。
「君達、かわいーね。お兄さん達とイイコトしない?」
まるで、かわいい女の子をナンパするような声のかけ方だった。
世の中にはとんだ、物好きもいるんだなと思いながら、僕が声を
発するより先に、
「やめてください!」
というリノの力強い声が聞こえた。
正直安心した。
自分はとてもじゃないけど、抗議する勇気なんてなかったから。
ここまで、きっぱり断れば、もう話しかけてこないだろう。
そう思った自分をなぐってやりたいよ。
「そんな冷たいこと言わずにさぁ~」
「やめてってば!」
そんな会話が繰り広げられる。
そろそろ、本当に不安になってきた。
そんなとき、僕の不安を読み取ったのか、
「逃げるよ!」
リノが僕の手を固く握ってそう言った。
「う、うん!」
そう言って僕たちは走り出す。
子どもの体のため、走るのが遅く、あいつらはしつこく着いてくる。
そこで、僕たちは路地裏に逃げ込んだ。
だけど、それが大きな間違いだった。
ーそして、今にいたるー
僕は混乱していて、ただ、震えることしかできなかった。
そんな僕をリノがかばってくれたんだ。
リノだって怖いはずなのに…
「もう逃げられないよ?」
そう言いながら、やつは近づいてきた。
「わ、わたしの友達には触れさせない!」
と、リノが震えた声でそう叫ぶ。
だけど、その抵抗はむなしく打ち砕かれ、
そいつの手が僕たちに向かって伸びてきた。
そう思ったときだった。
ーポンー
と誰かの肩に手を置くような音が聞こえた。
顔を上げれば、見慣れたかげがやつの後ろに立っていた。
涙で視界がぐちゃぐちゃだったけど、
そのかげが敵ではないことはすぐ分かった。
「兄ちゃん!」
「マシンガン!」
僕とリノはおもわず叫んでしまった。
「あ?兄ちゃんだぁ?…ヒィッ!」
やつが驚くのも無理はない。
そこには、完全に戦闘体制に入った兄ちゃんとマシンガンが
恐ろしい笑みを浮かべて立っていたのだから。
「よくも、オイラ達の弟、友達をかわいがってくれたね?」
「覚悟しろよ?」
「ヒイィィ!!」
まぁ、その後は…言うまでもないだろう。
やつは兄ちゃんとマシンガンにボコボコにされてたよ。
兄ちゃんたちは僕たちの足跡を追ってここまで来たらしい。
そのあと僕とリノは、二人に抱きつかれたよ。
「二人とも!助けてくれてありがとう!」
こう僕がおれいを言うと、
「これで、罪の償いができたか?」
とマシンガンが聞いた。
「うん!大丈夫だよ!でも、なんで?」
と聞き返せば、
「あー、元凶がオレだったから…
オレがうまそうな匂いにつられてどっかに行っちまったから…」
とそっけない返事が返ってくる。
でも、薬を勝手に使ったのは僕たちなのに…
と思っていると、
ーポンッ!ー
という音とともに僕たちの体が元に戻る。
「「も、戻った~!」」
「これにこりたら、もうこんなことしないでよ!」
「はぁい。」
兄ちゃんに注意されて、他愛ない返事を返す。
山あり谷あり、こんな日常こそが
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