テラーノベル
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お久しぶりです!
何ヶ月ぶりでしょうか……時が経つと、本当に文章を書くのが下手っぴになりますね。
低浮上すぎて心配のマシュマロを数件送ってくださった方々、ありがとうございました!
窓から差し込む青白い光がタイルの質感を浮かび上がらせる。 静寂と陰影が織りなす夜。
ゆっくりと伸びていく光が俺に一つの扉を示した。
真夜中の執務室。
そこには暗闇の中に混ざる影法師と、真珠色に包まれる日本がいた。
冷たい光沢と厳かな静寂が沈む部屋にやわらかな温度を感じる。
無機質な床に落ちた一輪の花。
確かにそこに在るというのに、決して手の届かないもののようだった。
しばらく声を掛けることができず、立ち尽くしていると、
ふと光に濡れる双眸がこちらを捉えた。
紅の瞳が、この時だけは今にも消えそうな残り火のように見えた。
「……ロシアさん…?どうしてここに…」
「…デスクに荷物が置かれたままだった。それで、少し心配で探していたんだ。」
「それは、ご迷惑をおかけしました…。」
目を伏せ、申し訳なさそうにする姿に、わずかに肩の力が抜ける。
息を呑むほどの幽玄さを纏っていたとは思えないほどに、いつも通りだった。
「…日本は、何故ここにいるんだ。」
「…どうしてでしょうか…。自分でもよく分からないんです」
ふふ、と息を零すように笑う彼。
そっと口元へ添えられた指先の奥で、ふにゃりと綻んだ頬は照れくさそうでいて、どこか無邪気に見えた。
「ロシアさん、知ってますか?」
「この場所では月がよく見えるんですよ。」
そう呟く彼は、無彩色のガラスの額縁に映る玉盤を見つめた。
それを映す玻璃の両目は、紅を飲み込み淡い銀色へと溶けてゆく。
不思議と月を追う彼の横顔には、普段纏っている翳りが見当たらなかった。
息をすることさえ憚られる澄んだ空気の中。
この静謐を崩してしまわないよう、一拍置き、そうか、とだけ呟いた。
そう小さく漏れた声を拾うように、今度はまっすぐ俺を捉える。
「…良ければ、ご一緒しませんか?」
やわらかく瞳が弧を描き、
白磁のように月光を吸い込んだ肌に、朱がにじむ。
はにかむように伏せられた睫毛は、頬へ影を落とし、揺れるたび淡い明暗を滲ませていた。
白く流れる薄雲。
返事のないまま時が過ぎる。
「…?」
小さく首を傾げた日本が困ったように笑う。
その仕草でようやく我に返った。
逸る心を押し隠すように、一歩、また一歩と歩み寄る。
衣擦れだけが細く一筋の音を引いた。
触れる温度を感じながら、その傍らへ静かに腰を下ろした。
窓硝子の向こうには、遥か足元まで広がる無数の灯。
星を喰らうビル群が夜空を塞ぐ。
高層の谷間を縫うように車列が流れ、航空障害灯が赤く脈を打っていた。
街は絶え間なく時を進めていく。
けれど、この部屋には秒針さえ届かないようだった。
ふと、月を見上げる。
いつからだろうか。
こんなにも月が綺麗に感じるようになったのは。
幼い頃に見上げたそれは、どうしようもなく無機質で孤寂だった。
夜空に穿たれた円い光は、こちらを見据えているようで、俺までひどく寂しく感じられる。
美しいとは、思えなかった。
けれど、今は違う。
淡い月影に身を預けているだけで、不思議と気持ちが晴れる。
もう少しだけ、そう思い遠くを見上げていたはずが、いつの間にか心は隣へ移っていた。
いつもなら見慣れているはずの姿が、今夜はひどく鮮麗に映る。
彼の動作一つ一つが目に焼き付く。
息遣いすらも心を震わせる。
その思考の片隅に俺がいて欲しいと願ってしまう。
……あぁ。
そういうことだったのか。
胸にゆっくりと落ちたその感情は、名前を与えるにはあまりにも遅く、あまりにも鮮やかだった。
机の上に置かれた白い手へ、視線が落ちる。
気づけば、指先はその方へと伸びていた。
触れれば、彼は俺を見てくれるだろうか。
温度さえ感じられる距離に届いた手。
だが、触れる直前、俺は動くことはできなかった。
多分、変わってしまうのが怖かった。
この関係を自らの手で壊してしまうくらいなら、届かない距離のままでいたかった。
そうやって自分に言い訳を重ねていた その時
「……少し、冷えますね。」
耳元に落ちた透き通る声と同時に、引きかけた手の甲へ、ふわりとやわらかな温もりが触れた。
思わず息を呑み、視線を遣る。
そこには、俺の手をそっと留めるように、自らの手を重ねている日本の姿があった。
重ねられた指先は、決して冷えてなどいなかった。
彼がくれたのは、俺の不器用な躊躇いをそっと包み込むための、あまりにも優しい嘘だった。
時が夜を裂き、ここに残る空気だけが部屋を満たしていく。
傍らで玉響に薫る満月。
刻一刻と過ぎる時間に心音を重ねながら、
永遠に続かない夜をただひたすらに眺めていた。
明けることすら惜しいと思えるほどの、美しい夜の底で。
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コメント
3件
最高ッッ‼︎‼︎ロシ君出てるの嬉しすぎる!!最高‼︎‼︎
初コメ失礼します…! 文章力とか言葉選びが凄すぎて…😭✨️ 読んでてめっちゃ惹き込まれました…!! 次のお話も楽しみにしてます!
いやー、めっちゃ良かった…!正直、最初「お久しぶりです」って挨拶があって、ああ作者さんが久々に書いた話なんだなって思ったんだけど、読んでるうちにそんなのどうでもよくなるくらい世界に引き込まれたわ。 真夜中の執務室、月明かり、そして「温度さえ感じられる距離に届いた手」を引っ込めようとした瞬間に、向こうから重ねられた手——あのシーンはやばい。心臓止まるかと思った。「冷えますね」って嘘の温度で、相手の迷いを包み込む優しさ、尊すぎるでしょ…。 「明けることすら惜しいと思えるほどの、美しい夜の底で」ってラスト、余韻がずっと残る。これは続きが気になるわ…!