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『(黒尾先輩の今日のスパイク、助走の力の溜め具合が弱いな。)』
『(夜久先輩、レシーブ良い感じ…!でも、重心はもう少しだけ前の方が良いかもっ、)』
『(…っ、また研磨くんのトスのレベルが上がってる……すごい…)』
『(海先輩、サーブ絶好調!!!)』
ボールが床に叩きつけられる音が体育館に響き渡る。私は右から左へと視線を移動させ、気づいたことを用紙にメモする。
『(……あぁ、また黒尾先輩のスパイク止められちゃった…)』
私がそんなことを考えながら、黒尾先輩のプレーを見ていると、研磨くんが黒尾先輩に話しかけた。
孤爪「クロ、もうちょっとスパイクの助走の力溜めないと。」
『っ…!!!』
研磨くんが黒尾先輩に言ったアドバイスはさっき私が用紙に書いたことだった。用紙の【黒尾先輩 : スパイクの助走の力の溜め具合が弱い。】の文字と研磨くんの発言が重なる。研磨くん、凄いっ……
黒尾「…………おぅ、わかった。」
黒尾先輩はそう返事をすると、さっきの位置に戻り、また試合が再開した。
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「「「お疲れ様でした!!!」」」
体育館に響き渡る声。私はその声を聞くと同時に、みんなに駆け寄りタオルと水が満タンに入ったタンクを「お疲れ様です!」と声をかけながら渡していく。そして私はその中からある人の方に駆け寄る。
『夜久先輩!!』
夜久「あ、りんっ!…今日の改善点は、?」
そう夜久先輩に言われ、私は先輩にさっきの試合中に悪かった点・良かった点をまとめて書いた用紙を渡した。
『今日は主にレシーブの時の重心が後ろ気味でした。もう少し重心を前にすると、もっとボールが上がりやすくなると思います。』
夜久「ん、了解。ありがと。」
夜久先輩はそう返事をすると、その用紙を見ながらタンクを飲み始めた。
続いて、私はまた次の人へ…次の人へと用紙を渡していく。そしてついに手持ちの用紙が1枚になった時。……残すは…
【 黒尾鉄朗 】
『黒尾先輩っ、』
黒尾「ん、?あ、りんか。」
私が名前を呼ぶとすぐに振り向いてくれる黒尾先輩。
『はい。これ、今日の分です。』
黒尾「おぅ、ありがとな。」
そうお礼を言ってくれる黒尾先輩。
練習前のあの態度はどこへ行った。
『…今日は中々スパイク、決まりませんでしたね。』
黒尾「……おぅ…」
『でもっ、研磨くんにアドバイス貰ってからスパイクが決まる回数増えて来てましたよねっ!』
私がそう笑顔で言うと、黒尾先輩も笑顔で返事をしてくれる。
黒尾「あぁ、!今日は研磨に感謝してるよ。」
孤爪「…クロ、「今日 “ は “」ってなに。」
黒尾「うわぁぁぁぁっ、」
突然後ろから研磨くんが黒尾先輩に向かって喋り出すと、後ろに研磨くんがいると気づいていなかった黒尾先輩はそう声を出して驚く。
『先輩、研磨くんがいるのに気づいてなかったんですかっ、?(笑)』
黒尾「笑うなっ、気づかないもんは気づかないだろ。」
黒尾先輩がそう私に呆れたように言ってくると、私は謎に自然と笑えてきた。
黒尾「おいっ、笑うなって…」
『とか言いつつ、先輩も笑ってるくせにっ(笑)』
黒尾「口閉じよっか?」
孤爪「クロ、そんなことより、さっきのこと。” 今日は “ ってなに。いつもは違うってことなの。」
私とが笑いながら黒尾先輩に話していると、後ろから少し怒った顔をした研磨くんが先輩にそう言い始めた。
黒尾「……………そ、そ、そ、そんなことねぇよ。」
孤爪「もうクロなんて知らない。」
黒尾「え、ちょっ、研磨ごめんって!!今日帰り奢るからっ!!」
孤爪「アップルパイね。」
黒尾「またかよ。…まぁいいよ。」
そんな2人の他愛のない話を聞きながら、私はコートの片付けに入った。
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