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2.第三者の考え
「この人の記憶がない気がする」
潔は俺の目を見てそう言った。
その場にいた全員の視線が突き刺さる。
覚悟はしていたものの完璧だとは言い切れないのが悔しい。
「…忘れられてんのは、俺かよ。」
「ごめん、なさい。俺は…君にとって大事な人だったの…かな?」
「…大事な…あぁ、そうだ。大事な奴だったはずだよ…ッ」
自然と肩に力が入った。
誰も目も見る事ができずに俯いていた。
「…ダメや。凛くん電話でーへん。」
「そりゃ辛いよな。俺だって関係は違っても凪がそうなったら焦るし。」
「…このままじゃ凛ちゃんは…」
病院の庭みたいなところのベンチに座って玲王と氷織と蜂楽が話してる。
やっとみんなの名前と顔が一致し始めたところなのに問題がでかすぎるし。
(潔に会いたいな〜。記憶がないからって俺には関係ない事だし。)
「やっぱり凛ちゃんの記憶を思い出させないと2人は幸せになれな……」
目で追いかけていたちょうから視線をずらすと蜂楽の呟きに驚いて立ち上がってしまった。
「凪…?」
玲王が俺の方に向かって歩いてくる。
「…よ。…だよ。」
「凪、今はお前に構ってる暇は…」
「ダメだよッ…‼︎潔の記憶がないならなんなの?潔に苦しい思いさせてまで思い出させるほどの存在なの?ねぇ、凛は今の潔に必要?」
その場にいた全員が俺を見ている。
玲王が俺の胸ぐらを勢いよく掴んで柱に叩きつけた。
「こんな大事な時に何言ってんだよ…お前だって見てたろ。アイツらが幸せそうに並んで歩く姿。何回も目にしただろ。」
「そんなことしたって自己満足だ。壊れた関係を戻さないと気が済まないだけだろ。」
玲王の目が見開かれた。
「なんかさ、めんどくさい。俺だって我慢してきたんだ。この状況は神に与えられたチャンスだとしか思えないよ。」
みんなに背を向けて歩き出した。
いつもなら玲王が運んでくれるのに今はそんな事してくれないことは分かっていた。
だから仕方なく足を動かす。
(そうだ、これは俺にとってチャンスだ。)
ずっと隠していた思いを叶えるには、今しかないんだ。