テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
久しぶりに開いたら凄く改良されてて驚いています。久々に1人語りするのも楽しいね。
※ジョジョの奇妙な冒険より、ミスフー。
地雷は自衛を
クオリティ低め
グダグダ長いので、本当に暇潰しにしてください。本当に生半可な気持ちで触れたら終わりますよ🫵
季節感など知りません。自分の気持ちに正直に行きます。
センシティブは友達と等価交換で付けてます。正直な話自分でも要らないと思ってます。
AIからのコメントが気になって最近書いたものを引っ張り出してきました。多分すぐ消す。
乾燥した冷たい風が身体を撫でる。今年も、この日が来た。
2月14日、バレンティーノ。
カップルが浮かれる日。片思いのガッティーナ達や学生が目の前の理想に目が眩んで、狂わされていく日。その日から逃げられるヤツは居ない。恋人持ちの俺にも、可愛いガッティーナ達がチョコレイトを送ってくるのだから。
その大量の紙袋を両手に、だだっ広い白を基調とした、アンティークな廊下を、場違いなビビットカラーの服で歩く。そりゃあ、ただの社交辞令でのチョコレイトはあるかもしれない。でも、それを口実として本命でも渡されたら、溜まったもんじゃあ無いのだ。こりゃ、ジョルノの所には部屋1つ分埋められるくらいのプレゼントやチョコレイトが有りそうだな、と思った。彼の公にギャングを知らせた所も、カリスマ性なのだろう。そんなカリスマ性に狂わされた女や偉い奴が大量に送っているのだろうと思うと、なんだか笑いが零れる。
コツ、コツ、コツ
そんな想像をしていた頭に、そんな堅苦しい音が響く。俺が良く聞いた事のある、丁寧な足使いの奴は、1人しかいない。
「よッ、フーゴ」
相手と目を合わせ、ヤツが声を発する前に挨拶をする。挨拶と言っても、ここに見合わないラフな挨拶だと思うが。
「Ciao、ミスタ」
伏せ目がちにフーゴは返事を返した。多分、位的には俺の方が上だから、ラフに返事するのはプライドが何かが邪魔しているのだろう。社交的に返事でもしたら…なんて脅してやったら、すぐ言う事を聞いてくれるのだから可愛い奴だと思う。それは、俺の権限なのか、恋人としてなのかは分からない。
彼も、俺と同様に両手にいっぱいの紙袋を抱えている。ピンク、ブルー、ホワイト、ブラウン…様々な色の紙袋だ。彼に向けられたこの紙袋は、全て恋愛目線なんだろうか。
「お前、今から空いてる?」
そんな軽いジェラシーを隠しつつ、話をし始める。彼も、俺に対してジェラシーを持ってくれるのだろうか。
「あァ、…急用は無いから、空いてる」
「んじゃ、今から俺ん家行こーぜ」
間髪をいれず、ほぼ被せるようにして誘う。傍から見たら余裕が無いヤツとでも思われそうだが、お前らがそんな状況になった事が無いだけだろう、そう思った。そう思っている間に、フーゴから「ん、」と小さく声が発される。それは了承の合図だと、俺は知っている。肩に腕を回してやりたいが、紙袋に阻まれ、それは許されない。少しその部分に不満を持ちながらも、進行方向を変えて、2人で歩き始めた。
◇
家の前に着いて、1度紙袋達を床に下ろし、カチャカチャと鍵と鍵穴から音を鳴らしながら鍵を開ける。カチャリ、と他とはひと味違う音を認識して、扉を開ける。
「先、入って良いぜ」
「…お邪魔します」
そう言って、彼は開けた扉に隠れて行く。見えなくなった事を確認して、扉から手を離し、1度下ろした紙袋を拾う。足で閉まろうと動く扉を止め、中へと進んでいく。そのままの勢いで真っ直ぐ進み、リビングのソファに腰掛けていたフーゴの隣に座る。何度もお互いの家を行き来しているから、お互いの家の理解はしっかりしている。フーゴの貰った紙袋は全て、机の上にもう置かれている。丁寧に左に寄せてある為、俺も右に寄せつつ、紙袋を置いた。
カサリ、と音が鳴る。お互いに無言の部屋には、少し大きく聞こえた。
「…じゃ、始めるか」
沈黙の中でそう語り掛けるように呟く。それと同時に位にテレビをつけ、サブスクを選択する。お互いが一緒に見た映画を、もう一度選択した。ソファから立ち上がり、座る場所を交換する。お互いがお互いのチョコレイトの前に座る。そして相手の頂き物の紙袋から中身を取り出し開封して、中に入っているチョコレイトを食べ始める。この時、喋らないと決めている訳では無いが、無心で食べているので会話は始まらない。
これを始めたのは、一昨年からだっただろうか。俺がフーゴの貰ったチョコレイトをフーゴが食べるのが許せなくて、お互い相手のチョコレイトを食べよう、と提案したのだ。恋人に、何処の馬の骨かも知らないヤツからのクソ見てぇな愛情がこもった貰い物を食うなんて、許す訳ねぇに決まってるだろ。
そんな事を思い出して少しイラつきつつ、高級そうな箱を開ける。中身は、4個入りだった。
「うげ」
映画の音と少し咀嚼音が聞こえるだけだった部屋に、嫌そうな声が響く。その声に気づき、フーゴが目だけでコチラを見る。チョコレイトを咀嚼音しながら、手にはもう次に口に入れるチョコレイトを持ったままだ。そんなフーゴの頭を少し撫でて、立ち上がる。行く場所はキッチンだ。キッチンで取り出すのは、小さいナイフとまな板だ。それを持って再度ソファに、戻る。4つの中から1つチョコレイトをまな板の上に取り出し、半分に切る。元は4つだが、5つになったと思えばいい。そう思い込み、チョコレイトを再び口に運び始めた。割ったチョコレイトは中身が入っている訳ではなく、甘ったるいミルクチョコレイトだった。これは、フーゴの好みに入るのだろうか、多分入らねぇな。なんて思った。
「あッ、ミスタ、これ」
そう言われてフーゴの持っている紙袋の中を見る。中には、緑色のマフラーが入っていた。色のセンスは、フーゴの服の色を連想させる為、悪くは無いと思う。だが、それだからと付ける訳では無い。付けて、フーゴが嫉妬でもしてくれるなら、付ける価値が少しはあるだろうが。
「どうする?…使うか?」
「んーん、使わねぇよそんなもん」
「でも、捨てるのは勿体無くないか?」
「じゃあオメーが使うって言うのか?」
それは俺がいたたまれなさ過ぎるから、正直に言うとやめて欲しい、と思う。自分が知らねー女か誰かに貰った物を、軽率に付けないで欲しい。そう言いはしないが、コイツの頭なら分かるだろう。なんて思いながら気を紛らわせる様に、丸型のチョコレイトを口に入れる。外のチョコレイトがパリ、と割れ、中からガナッシュが、ゆっくりと出てくる。ラム酒などの、上品な味がする。
「いや…それは違うだろ」
じゃあどうするか…とフーゴは考え始めた。流石、コイツはわかっている。そう思いながら、映画に目を向け、イチゴの風味がしそうな、ピンク色のチョコレイトへ手をつけた。
◇
「はァ〜…食った食った」
食べ終わったチョコレイトの箱を見て、体を伸ばしてソファに体を預ける。フーゴの方を見ると、あと少しの様だ。その姿をじっと見つめていると、あんまり見るなと言わんばかりの目線を送られる。目線に気づいていないフリをして見つめていると、蝶の形をした可愛らしいチョコレイトを口に入れて、フーゴが顔を顰める。多分、ライトブラウンの色をしていたから、ミルクチョコレイトだろう。フーゴの食べているチョコレイトの横にあった牛乳をフーゴに差し出す。考えたら、コイツ美味しくチョコレイトを食おうとしてるな。そんな事を考えているうちに、そのミルクチョコレイトが最後の1粒だった様で、フーゴが息を吐いた。
「ご馳走様」
別に俺の知らねぇ女共から貰ったチョコレイトに感謝の言葉も要らねぇと思う。と言葉が首まで出かけていたが、寸前で止めた。さっきの緑色のマフラーは、机の上に置かれている。どうするつもりなのか、聞く気は起きなかった。
「なぁ、フーゴお前さ、なんで今日テンション何時もより低いんだよ?」
ずっと思ってた事を聞く。すると気にせず映画を見つめていたロイヤルパープルの色をした瞳が顰められ、瞳が瞼で軽く隠れる。
「…それ、本当に言わなきゃダメですか」
別にアンタが知ったって関係無いから良いでしょ、と小声でフーゴが零す。言いたくないと言わんばかりに顔を顰めている。だが、そこで易々と引く男じゃあない。
「俺は聞きてーの、俺に関係が無いとしてもな」
フーゴの方を見て目を少し細めて言ってやる。コイツは軽く俺のこの行動に弱い。ならそこをとことんついてやる。
「…クソ…、君の貰っていたチョコレイトの量が多くて少し嫉妬したんですよ!!!これで満足かボケ!!!」
そう言いながらフーゴは顔を真っ赤にして今にも湯気が出そうである。その姿の右腕は、今にも振り上げて殴られそうな程震えていた。
可愛い、不意にそう思ってしまう。これは俺は悪くない、フーゴが悪い。絶対に。
「クッソ、テメー何とか言いやがれッ…!?」
照れ隠しの様に暴言を吐く口を塞ぐようにキスをする。驚きではくはくと小さく口が動くのを少し感じてから、隙を見て舌を差し込む。その行動により更に動揺し始める身体を撫でる。まるでワレモノを扱う様に。
「…っ、ん゙…!!」
フーゴから声が漏れる。人がどう思うのかを気にしない声だ。口を離し、身体ごと顔を引く。フーゴはゲホゲホとむせながら呼吸を整えようとしている。そんな所も可愛らしい。
「お前゙ッ…急に何で…!!」
「俺は悪くねーよ、お前が悪いの」
意味がわからないと言わんばかりの顔で、フーゴは目を白黒とさせる。そのご自慢の頭を使えば分かるんじゃあねぇのか、と思ったが、頭が回らなくなっている原因は俺だろうと思い、言うことはやめてやった。慌てているフーゴの右手を取り、俺の手の指を編み込むように絡める。
もう一度キスをしようとすると、繋いでいない方の手でフーゴが口元を覆う。人が燃えてきた時にそんな事をされると、燃焼が落ち着いて来るだろ、と少し不貞腐れる。
「…今から勢いでスるつもりか?」
「そのつもりだぜ」
もごもごと、口元を覆っているせいで聞こえずらい声をどうにか聞き取って返事をする。フーゴは突然、自分の口元を覆っていた手を離し、俺の口元を覆う。その行動に戸惑っていると、一言フーゴから言葉が零される。
「…ッ、シャワーだけ浴びさせろッ…!」
また顔が真っ赤に染まる。イチゴみてぇだ。そう思いながら、フーゴが動いた余韻でゆらゆらと揺れるイチゴの耳飾りと、真っ赤な顔からは考えられないような冷徹な色をしたロイヤルパープルの瞳を交互に見つめる。見ていると、目元がグッと細められる。耐えられないのだろう。
「しゃあねぇなァ〜」
そう言葉を漏らして、1度フーゴの上から退いてやる。
「早く戻って来いよ?」
俺は先に行ってるからよ〜、と言葉を付け足して、ソファから立ち上がる。そのまま寝室の方まで歩いていき、扉を開けてベッドに勢いよく座る。そのまま、フーゴが戻ってくるのを待つ事にした。部屋のフレグランスにオイルを入れ直したりして、部屋の雰囲気を出来るだけそれっぽくすることに努め始めた。
◇
立ち上がり、寝室に行くミスタをボーッと見送る。僕も立ち上がり、扉の中へミスタが消えていった、居なくなったのを確認して、机の下に実は置いていた緑色の紙袋を机の上に取り出す。
中身は、…下着とオーバーサイズの真っ白のTシャツだ。
ただのオーバーサイズじゃあなく、袖は肘ほどまであり、太腿が半分ほど隠れるくらい大きなシャツだ。オーバーサイズのTシャツの下に、スケベな下着を着ているのが、ミスタからの反応が1番良い事を、僕は知っている。
今日の下着は、新調したミスタも知らない物だ。
正直、時々こんな物を着る自分に困惑する時がある。でも、ミスタが居るからどうでも良くなる自分が居る。この思いに名前や説明をつけることが、僕には難しい。
紙袋をぐしゃりと鳴そうな程強く握り、風呂場へと歩く。ミスタの家は恋人になってから何度も来たことがあるので、場所は理解している。紙袋の中身を取り出してから自分の着ていた服を突っ込み、バスタオルを片手にバスルームへ入り、扉を閉めた。
髪は濡らさず、汗を流す程度にシャワーを浴びる。ミスタの香りを象徴するように見えるシトラスの香りのボディソープで身体を洗う。早くしなければ、アイツは萎えたとかどうとか言ってくるだろう。いや、僕は別にシなくても良いんだ。アイツが萎えたってどうでもいい。
タオルで身体を拭き、軽くドライヤーをかけ、先にオーバーサイズのTシャツを着る。そうして下着を履いて、両腸骨でリボンを締める。チラ、と鏡を見るとTシャツの裾から、自分の脚と今紫色のリボンのタレが、ほんの少しだけはみ出ている。それを見て、少しだけ恥で耳に熱が溜まるのを感じる。
「…バカみたいだ」
今の僕なら、ナランチャにド低脳とも、クサレ脳ミソとも言えないだろう。
二度と帰ってこない彼に想いを馳せて、1つ小さい息を吐く。そして、寝室の扉を目指し、進む為に通る脱衣所の扉を開けた。
◇
快晴の明るい水色をした空を横目に、アンティークな置き時計を見る。時計の針は、2時を指していたが、一瞬のうちに長針が少しだけ右に振れた。2時1分。ベッドから立ち上がり、出来る限り光を遮るように、部屋中のカーテンを閉じる。そして、使うかもしれないという甘い期待とある訳ないだろうと思う賢者を頭に、2人でバカにしながら買ったクッションを置いた。その作業を淡々と行ってから、ベッドへ再び座り直した。
そんな事をしていると、カチャリとドアノブが動き、扉から音が鳴る。こちらから見ると引き戸の扉が開き、少しドライヤーをかけたような艶やかなブロンドの髪をして、白い肌に真っ白のTシャツを着たフーゴがコチラの部屋に足を踏み入れる。全体的に淡い色合いの中に、彩度が高いロイヤルパープルの色をした瞳が、良いアクセントになっている。そんな所も、フーゴの魅力的な部分のひとつなのだろう。
脚を垂らして座っていたベッドに乗り、ヘッドボードに背中を預け、脚を伸ばす。その伸ばした脚に右手で指を指し、左手でココに来るように促す。その手を確認して、少し恥じらいつつもコチラのする通りに乗ってくる所は、何時でもたまらないものがある。
たが、ミスタの脚の上には座らず、脚を跨いで膝立ちをする。フーゴはいつもそういう奴だ。
────まァ、俺からしたら素晴らしいけどな。
股に手突っ込み放題だし、何よりTシャツの裾がヒラヒラと揺れ、下着が見えそうで見えないのが堪らなく好きだから。
右手をフーゴの真っ白の太ももに触れさせる。程よくハリがあり、女よりもがっしりしている。だが、男の中ではか弱い方に分類されるだろう。その太ももを軽く掴んでみる。掴むと言っても、小動物を握るくらいの微弱な力で。その感触に浸りながら、左手の人差し指で「上へ」と促す。それだけでフーゴは理解出来るのだ。それは、何度も身体を重ねた為か、ただ単にフーゴの理解力が高いのか、誰にも分からない。
ミスタの左手をジ、と見つめ、理解した様に、ミスタとは対になる様な白い手が、Tシャツを摘む。そして、Tシャツを上にあげるのだ。たくし上げるのでは無く、ただ単に持ち上げるだけ。その少し上品な動きが、今からやる事と対比して、堪らない物がある。
裾から出てくるのは、見た事のない今紫色の大部分がレースで仕立て上げられている物だ。そこに窮屈に収められている物を見るに、女物だろうと理解出来る。俺好みのこれを見つけて、出来るだけ大きい物にしたんだろう、リボンのたれと横が長いのが、それを物語っている。俺の為に女物を着るほど尽くす、普段からは考えられない健気さと色っぽさが狂わしいほど愛おしい。
「カワイーじゃあねェか、コレ」
今すぐにも剥ぎ取りたいのをバレないようにしつつ、右腸骨に張り付いたリボンに指を引っ掛けて、指を隙間に入れる。
「言うと思った」
そう吐き捨てるフーゴの顔は、軽く赤らめられているが、呆れたような顔の雰囲気が強かった。内心は、呆れている訳が無いと思うが。
下着と同色の今紫色をした結ってあるリボンを弄ってみる。横をのばすように引っ張ったり、少しだけたれを引っ張ったり。
そこで不意に、右のたれを勢い良く引っ張り、右腸骨に結ってあったリボンを解く。リボンが解けて、下着ごと落ちる前に、フーゴの手が動き、右腸骨を押さえ、下着が落ちるのを止めた。
「せっかく着てやったのに、そんなにすぐ脱がすか?」
右手でフーゴはリボンを押さえながら、左手でミスタのニット帽を器用に脱がせ、床へポイと手首を使って投げ、ミスタの頬に左手を添えて、愛おしいものを見るように目を軽く細め、口角をほんの少しだけ上げて、こちらを見つめてくる。愛おしいのはお前だっつーの。
「脱がさなきゃヤる事もやれねーのに?」
「僕は別にそれでもいいよ、シたいんなら、僕の要望を聞きながらどうするか、自分で考えて」
考えろ、とコッチに無茶振りをしてから、人の脚に跨りながらリボンを結い直すフーゴを見て、ベッドサイドに置いていた潤滑油を手に伸ばし、フーゴの前に下着の上から潤滑油を付けた手で触れる。
「っあ、ッバカ…」
もう少しで結びきれただろうリボンからフーゴの手が離れ、リボンがハラリ、と落ち始める。そのリボンを落ちる前にフーゴは再度押さえた。ベットに垂れたリボンが、シルク素材のように部屋のどこかの光を宿し、薄く光を帯びている。
結ぶ余裕など無くすように、しつこく触れてやる。形を確認するようにしながら。手を動かす度にフーゴから甘く短い声が漏れる。
しばらくすると水音が増し、下着のレースもヘタレてくる。そのレースとほぼ同時くらいに、フーゴの力も抜けていく。それを理解したうえで、下着に手を突っ込むのだ。普段ならそんな事をすればパープルヘイズでお陀仏だが、今はそんな事は無い。ゔっ、と声をあげてリボンを結びかけていたが、不意に垂れた片手が、フーゴの口元へ動く。それと同時に腰が引かれる。
リボンを掴んだ手は、まだ開ききらない。
腰を後ろから抱くように腕を回し、グイ、とこちらに寄せるように引っ張る。腕で腰を抱いたまま、フーゴの物に直に触れる。下着があるから手が動かしにくいが、致し方ない。
「っん、ぅ」
甘く甲高い声だが、女程は高くない。 その声が酷く好みへと変わっていったのは、何時だっただろうか。別に男なら誰でもいいようなゲイって訳じゃあねぇンだけどな。
「…? ミスタ、?」
「ん、ワリ 考え事してた」
「…僕とシてるってのに、考える暇があるってのかよ。ん、」
「イヤイヤ、お前に関係が無い事を考えてた訳じゃあ無いぜ?」
「…そう、」
可も不可もない、ただただ冷たく感じる返事を返される。確かに、何かを考えてた俺が悪いよな、と思い、再び物に触れようとした瞬間、フーゴの右手が握っていた手を開き、その手をフーゴ自身の顔の近くに持ってくる。下着の右側が全体的に落ち、辛うじて左のリボンでギリギリ保てている状態になる。右側が落ちた結果、下着で隠されていた場所がチラリ、と見え隠れする。
「これなら、別の事を考える暇なんてないだろ?」
なんて自信ありげなドヤ顔で言い始める。こちらとしては物凄く嬉しいのは、顔に出すだけにした。
「流石IQ152だこと。だけど、それが裏目に出る事もあるんだぜェ?」
そう伝えると、フーゴの顔がポカンとする。その顔と身体対比が凄い、と毎度ビビらされる。まだ子供の原型の残った顔立ちだからだろう。昔の時よりは、幾分か大人びたがな。「別に裏目になんか出ないだろ」と言った本人に触れていた手を、形を感じさせるように動かし、目的の場所へと進ませる。目的の場所はご名答、小さく引き締まったフーゴのヒップだ。フーゴは、手の動きに身体を跳ねさせてから、やると思ったと言わんばかりの顔を見せる。さっきまでポカンとしてた癖に。少し口角を上げて、フーゴを見つめる。何の顔だと言わんばかりの顔をしているその顔が、すぐに歪むのを考えると、クツクツと喉の奥から笑いが込み上げる。
引き締まったケツを形を確かめるように手を滑らせる。暫く撫で回してから、片手からほんの少し程しかはみ出る事がないケツをグ、と掴む。フーゴの身体が軽く強ばり、ケツの感触も芯を持つ。
だが、その強ばりもすぐに無かったことになる。
「…っはぁ、ぅ」
フーゴのケツに触れていた手を離し、口で小さいパッケージの潤滑油の封を開ける。片手で器用に中身を押し出して、手に伸ばす。元々手についていた潤滑油と、パッケージに入った潤滑油が手の上で混ざりあう。混ざって量が増された潤滑油を余すことなく手につける。
その手を柔、らかさを持っているケツの間に、割り入れる様に指をいれる。声は出されず、フーゴの瞳が縮み、目を見開かれる。目全体が見開かれたから、瞳が縮んだように見えたのだろうか。
「ホレ、脚開け」
指を割り入れ、穴の手前で第一関節を曲げる。正確に言うなら第二関節まで曲がっているのだが。小さく引き締まっていても、しっかり厚みはあるんだな、と第三関節の半分ほど沈む自分の指を見て認識する。これを見ると中まで指が辿り着くのかと不安になるが、脚を開かせればどうって事ないんだろう。
フーゴの両手がミスタの両肩に置かれる。フーゴの手に力が入り、グ、と肩への圧力が増す。二の腕を力を入れすぎたのか、軽く震える腕を重心にして、身体を支えていた膝を、フーゴは開いていく。ミスタの太ももにケツが落ちきるギリギリで膝が外側に開いていくのが止まった。「イイコ」そう声を漏らしてフーゴの頭を撫で、下を向いている顔の、唯一キスが出来そうな額の隙間に口付けをする。
髪の毛はパリ、と硬かった。シャワーに行っていたが、身体だけを流したのだろうとわかった。
俺は使わねぇけど、ワックスでも置いといてやろうか。
そう感じさせるほど、丁寧に髪は濡らされていない事が、頭の全体を撫でてわかった。
フーゴの腕が震える様に痙攣している。この腕を肩から外したら、身体が落ちてどうしようもないんだろう。その細い腕に、確かに細いが、その身体を任せられるほどだろうか。
髪に触れていた手を、フーゴの後ろ頭から滑らせて背中まで這わせる。その微量の刺激で軽くフーゴの背中が仰け反り、肩に伝わる力が強くなる。フーゴの右手が肩から外れる。何をするつもりなんだろうか、そう考えているうちに、フーゴの両腕は首へ回り、ミスタを抱くようになっている。
腰が引かれて、上半身はミスタに縋り付くような状態だ。フーゴの全身が蕩けて、欲に従順なのがよく見える。それが、ミスタの中の性癖を抉るように叩きつけられる。自分の唇を軽く舌を出し、ペロと舐める。軽く乾燥している事に気づく。そういえば、キスすらしていなかった事を思い出した。
「フーゴ」
そう口にすると、フーゴの頭が目を合わせるように持ち上がる。何の為に呼ばれたのかと、ポカンと小さく開けた口で、目を白黒させている所に口付けをする。驚きで逃げようとしたフーゴの後頭部を掴み、顔が離れていたら、勢いよくぶつかりそうな程の強さで抱き寄せ、開いたままだった口に舌をぶち込む。そこで脚を開いて力の抜けた後孔に優しく、だけど勢いはありげな力で人差し指と中指を入れてやった。
「ぅぐッ、!?」
唇の隙間からくぐもった声が漏れ、フーゴの手がミスタの肩をつかみ、ドン、と押した。力が入っていないなどという、か弱い動作はひとつも無く、強い力でお互いの身体が引き剥がれる。だが、後孔から指が抜けた訳では無いし、フーゴはゼーゼーと肩で息を吸っている。気持ち良くなかったというより、勢いでやってしまったのだろう。良くあることだし、毎度人間の底力は凄まじい物だと思わされる。
「ッ待て 、ミスタ 、ダメ だッ ……♡」
顔を上げ、目を真剣に合わせたようなフーゴの後孔の中の指を曲げてやり、刺激を与えてやる。全力でリミッターを掴んでいたであろう冷静無頓着、と言わんばかりのいつものロイヤルパープルの目に、色が混じる。ショッキングピンク程ガツンとしたものでは無い。ピンクサファイア、それくらいの甘い、でも欲情的な色。フーゴの顔が緩み、いつもの冷徹な雰囲気は何処へと聞きたくなる表情に変わる。いつもの表情からは考えられないこの顔が、好きだ。
フーゴから力が抜け、腰がミスタの太ももに密着する。それと同時に、フーゴの後孔に指が2本沈む。フーゴが軽い喘ぎを漏らす。もう顔は下を向いている。その顔を持ち上げて、キスしてやりたい。フーゴへ筒抜けで、いつもなら何が飛んできても、おかしくない事を考えていると、フーゴの手がミスタのズボンのウエストにかかる。ズボンが下ろされる…という訳にはいかなかった。まァ、座っているし、なんせ太ももにフーゴが乗っているのだ。そんな簡単に下ろせるものじゃあない。
「…ふ、」
喘ぎなのか不服そうなのか、どちらにも取れる声がフーゴの口から零れ落ちる。脱がせられない事を理解し、観念したように、フーゴはミスタの身体の中心に、スボンの上から手を触れさせ始める。フーゴの手の感覚が、ミスタの体と考え方の中心に鎮座するブツに伝わる。芯を持っている事を手から感じたようだ。フーゴの口角があがる。ここまでやってコッチが欲情してない訳があるのか、と聞いてやりたかったが、性に従順なコイツには聞く気は起きない。なんか、優等生が裏では性欲強いみてーな、そんな感じがする。そこがそそる。
軽くフーゴの頭が持ち上がり、上目遣いのようにコチラを見詰め始める。まァ、言いたいことは分かる。伊達に女とコイツを何回も抱いた訳じゃあねェからな。下手したら、累計の女よりコイツを抱いてるかも知れない。それくらいゾッコンって事なのか、ただただ相性が良いだけなのか、そんな事は最初からどうでもいい。どっちにしても、ブッ壊れる程食い尽くしてやるだけなのだから。
フーゴの後孔から指を抜き、ミスタは自分の膝を曲げる。フーゴが軽く前に押し出され、先程引き剥がした距離は、無かったことになる。フーゴの両手がミスタの肩を掴み、グ、と力が込められる。身体を倒し、フーゴを押し倒すような体制に移動する。フーゴの両腕が肩から外れる。その両腕は、自分の身体が落ちないように支えているミスタの腕へ絡められる。フーゴの絡めた腕から右腕を引き抜き、ベッドへ落ちた落ちたフーゴの手の甲にキスをする。優しくフーゴの手をベッドにおろし、自由になった右腕は、再びフーゴの後孔へと伸ばされる。今度は3本。抵抗に従いつつ、隙を見て奥へと進める。
奥に進めるにつれて、フーゴは離された左腕でミスタのモノへ触れ、緩く擦られる。その行動が、愛おしい。
指が飲み込まれた事を確認して、フーゴの額に短いキスを何度も落としながら、軽く中で指を曲げる。
「ッふ、ん…」
緩く擦られていた手が、微かに震える。痛みがある訳では無い事を確認すると、指を分けて動かす。短い喘ぎがフーゴから漏れる。それを再び確認してから、何度も抱いたから分かる、フーゴを悦楽へ沈めさせる場所に、指をかすめさせる。
「あ゙ っ、ぁ…」
フーゴから、先程までとは違う音程の声が鳴らされる。そこをフーゴがムカつく位愛でてやると、短い母音が何度もフーゴから鳴る。フーゴの後孔の抵抗が緩まっていく。フーゴの表情が緩んで来たら、指を抜く。4本にしていれ直すとか、そんな話じゃあねェ。4は縁起が悪ィし、なんなら4本まで中を広げる必要だって無いからな。
引き抜いた腕で、自身のズボンを下ろす。同時に下着も下ろし、ベッドの外へ投げ飛ばす。自身の物はどんなに雑でもいいが、人の、尚更親愛のヤツの物なら、雑には行かない。フーゴの脚に、しがみつくように張り付いている下着の、解けていないリボンを解き、前に引っ張る。フーゴの股の間から、布切れとなった下着が抜ける。フーゴの下着は、床に滑らせるように落としてやった。
「舐める?」
フーゴの顔中にキスを落としながら聞く。どうせ、返事はノーしか無いのだが。
「…イヤ、 いいかな」
そりゃそうだ。何度も抱いたが、口淫なんて数えられるか、なんならされたかも怪しいのだから。そんな事を考えていると、「それより」とフーゴから言葉が発せられ始める。
「早く愛されたいんだけど、急かさないと分からないのか?」
そう耳元で囁かれた。そこで、何かがプツリ、と音を立てて、重力に従い落ちていく。そんな感覚がした。ベッドサイドから、厚みが薄い箱をひったくる。適当に1つ取り出し、封を切る。いつもの事のように素早く避妊具を付ける。だが、いつもより手こずったのは、言うまでもない。フーゴの後孔に、自身のブツをあてがう。焦らすなど、そんな余裕はもう無い。いや、余裕を持つことが出来ない。後孔に先端がかかり、奥を目指してゆっくりと腰を押し付ける。
「ん、んぅ゙ …くッ、」
フーゴから苦しさが見えるような声が漏れる。無理は無いだろう。腰を進めるこちらも、圧で押し返されそうなのだから。フーゴの身体に込められた力を抜くように再度何度も顔中にキスを落とす。フーゴの力が段々と抜けていくと同時に、また1つ爆弾、いや、パープルヘイズのカプセルに似た衝撃が落とされる。
「ッ口にはしない…、のか?」
パープルヘイズのカプセルのウイルスに犯されたように、体内が心做しか、ドロドロに溶けていく感覚がした。軽く開いたフーゴの唇に、自身の唇を触れさせる。わざと開けたかのような口に、舌を捩じ込む。それに答えるようにフーゴの舌が絡められる。少しフーゴの口内に舌を触れさせるだけで、ガク、とフーゴの身体の力が抜ける。その緩んだ時に腰を押し込み、フーゴのケツと、ミスタの股関節がぶつかる。
舌を抜き、唇を離す。エロ同人見たいな、糸がお互いの唇から伸び、距離を離すと、プツリ、と途切れた。
「動いていい?」
「…いや、もう少しこのまま、」
短い沈黙の後、待てが下される。理性はとっくのとうに9割は捨てたのに、1割で聞くんじゃあ無かったと後悔させられる。
お互いにキスを求め、何度も落とし合う。キスをする度に、軽く中が締まるのが、堪らなく欲望を掻き立てる。
「ン、動いていいよ」
ヨシの言葉をかけられてから、フーゴは両腕をミスタの首に回す。腕がかかったのを確認すると、ゆっくりと腰を引く。中から抜けた部分から熱が冷めていく、事は無かった。今からが本番だからだろうか。半分程抜いてから、グ、と再び奥へ進める。奥に進めていくと、フーゴから息が漏れる。深呼吸のような感じ。長いストロークで腰を動かす。
「ん、ッあ …ふ、ぅぐ 、」
フーゴから出来る限り押し殺したような喘ぎが漏れ、耳に入り込み、脳髄に響く。その声に理性が焼き切れていくのを感じながら、腰を揺らす度に、ストロークを短くしていく。
「ミ、スタッ…もう、ヤバッ」
引き抜く時間が始めの4分の1程になった時、そうフーゴから、喘ぎの中で声が発される。言葉が脳に達した時、ストロークを更にはやめる。
「いーぜ、何時でも」
「ん、ぐッッ…」
フーゴの頭が、お互いの胸の間に入り込むように下を向く。フーゴの身体が持続的に跳ね、フーゴが昇った事を感じさせられる。言ってねーけど中でもな。フゥフゥと息をするフーゴを見つめる。ワックスで固められることから逃れた髪の毛が、汗ばむ肌に貼り付いている。その髪を剥がすように、フーゴの顔に手を触れさせる。ぼんやりとコチラを見つめる顔に沢山のキスを落とす。
「俺も後もうちょいだから付き合えよ」
フーゴの片方閉じた瞼にキスをし、ストロークをウンと短くする。いきなりの刺激にフーゴから戸惑いと悦楽、焦りが混ざった声が漏れて、シワの寄ったシーツを被ったベットへ、落ちていく。血液が集中し、グツグツと煮るように身体が熱を帯びる。フーゴの身体がいっしゅん強ばった所で、精を吐き出した。
一瞬、全身に風が吹き付けた様な、そんな雰囲気がした。
腰を引き、丁寧にフーゴを撫でてから、身体をあげる。フーゴの回されていた手が首から離れる。避妊具を取り、口をキツく結んでゴミ箱に投げ入れる。
頭が回っていないのか、そのまま寝転がっているフーゴの頭を撫で、キスを落とす。このままピロートークをして、今日は終わり。
フーゴが重そうな上半身を持ち上げる。このまま寝そうだったのに、何かあったのだろうか。そう思っていると、ドン、と勢いよく両肩を押され、バランスを崩してベットに再度倒れる。理解が追いつかず目を白黒させていると、天井のみの視界にフーゴが表れる。下半身が、いや、アレが熱に包まれる感覚がする。
「…何してんの?」
咄嗟にそう声をかける。上に乗られているから身動きも取れないし、これしか出来る行動はなかったのだが。
「君が終わるまで待ってたら我慢出来なくなって。不完全燃焼は嫌いだから」
いや俺はもう終わってるから正直離して欲しい。そう思って軽く顔を歪ませて、声をかける。
「自分でしろよ、俺は性欲無くなって丁度良かったんですケド」
「僕だって達してから丁度良かったのに、君がするからこうなってるんだろ」
ぐうの音も出ない。その言葉が自分に良く似合うな、と思った。
「…あァ、それより君のが1番気持ち良いとか、言った方がいい?」
その言葉を聞いた時、腰にデカイ重りが着いたかのように腰が重くなる。まァ、使わせてくれたらいいんだよ。そう言いながら上で目を閉じながら腰を揺らすフーゴを見つめる。ボーッとコイツが達した後どうしようかと軽く考えつつ、改めれば珍しい景色を目に焼き付けようと努力する。
見つめていると、薄く目を開けたフーゴと目が合う。気づいたフーゴが上半身を倒し、長い口付けをする。口付けに夢中な所で、腰を衝撃を与えるように動かす。フーゴの身体が震える。震えが止まった後、口が離された。酸素を求めるように肩を揺らして呼吸をするフーゴを、器用に上半身を持ち上げて、押し倒す。
意味がわからないという顔をしているフーゴに、次はコチラから口付けをする。
「パニーちゃんがそんな事言うから、勃っちゃった」
コチラを恨むような顔で見つめてくる。そんな表情は見えていない事にして、たっぷりのキスをしながら、腰を揺らし始めた。
◇
急に眠気が消え、目を開ける。あの後お互いにやり合って2、3回戦くらいして、気絶するように寝た記憶がうっすらと蘇る。
横には、自分と同様に落ちたのであろうフーゴが、コチラに背を向けて寝ていた。時計を見る。22時前。今から空いている店など、アンティークな雰囲気のバール程しか無いだろう。ならば、今から何処に行こうか。と考えていると、フーゴが目を覚ましたようで身体を持ち上げ始める。
「おはよ」
「…おはよう、君の方が先に起きてるって、なんか新鮮だな」
そう言われて、昔のこの時間の記憶を掘り返す。確かに、したのが夜ならば、朝に強いフーゴの方が毎度先だった。そんな普通が出来る程、コイツと接していたのだと、同時に考えさせられた。
「何か食う?」
「特に良いかな、バールでも行く?」
飯を食わないとなると、目的は酒だろう。久しぶりにパーッと呑むのは、悪い気はしない。
「何呑みてーの?」
「…グラッパが良いな」
「アリ、俺の行きつけでいい?」
「いいよ」
フーゴが起き上がり、ベットの縁に腰掛ける。身体が大丈夫なのだろうかと軽く心配になる。
「オメー、身体大丈夫なの?」
「ン、大丈夫だよ。身体は弱くは無いから」
にしても良かったな、服を着替えておいて。そんな小言を言ってから、フーゴは立ち上がり、扉まで歩いていく。
昼間は薄暗い程だったが、軽く色彩の混じった黒に染まった部屋の扉を軽く開けられ、部屋へ暖色に塗られた光が入り込む。その状態でフーゴは振り向く。
「君も早く準備してよ、待ってるから」
顔の凹凸に沿うようにオレンジ色の光がフーゴにかかる。その片手には、先程の下着とシャツが握られていた。返事をする前にフーゴは、扉の近くのスイッチを押して、部屋の電気をつける。電気が作動したのを確認してから、扉の先へ出ていった。
その後を追うようにして立ち上がり、この部屋のクローゼットを開ける。その中からいつもと同じ服を取り出し、手脚を服に通す。
ベルトを締めた後、レザーのブラックのジャケットを取り出し、上から羽織る。別に昼間ならば着なくてもいいのだが、夜となると温度が下がる為、来ていた方が安心だ。
もう1着、カーキ色をしたロングコートを取り出し、玄関で服を着直していたフーゴにかけてやる。
「着とけ」
「ン、ありがとう」
フーゴが袖に手を通し、ボタンを4つ締めたことを確認して、扉を開けた。
◇
そのままバールでアホ程呑み、お互いにフラフラの状態でミスタの家に帰り、後ろから何かに殴られたかのように意識を飛ばした。
寝室に光が差し込む。光が瞼から透けて、目に届く。眉間にシワを寄せ、目を開ける。細めて開けた為、ほぼほぼ見える事はない。クシャリと言う音で、硬いテクスチャの物が身体に引っ付いている事に気づく。
昨日のレザーだ。まさかの着たまま寝てしまっていたのか。形が変わっていたらと考えると、軽くナイーブな気分になる。
起き上がり、ジャケットを脱いでクローゼットを開く。ハンガーにジャケットをかけると、フーゴに貸したロングコートは、きっちりとかけられていることに気がつく。
流石ボンボン出身だな、と思う。フーゴはまだ寝ているようなので、起こさないように扉を開ける。玄関のポストを確認すると、1つの手紙が入っていた。麻の紐を赤のワックスで止めるように、封がされている。
全体を回し見すると、達筆に名が書いてある。
ジョルノ ジョバーナ
これを読み間違えることは許されないだろう。後手紙を開かない事も。多分、一日で手紙が届く事はほぼ有り得ない事だから、仕事終わりにジョルノ自身が入れていった物だろうと思う。
何かあったかと考えつつ、手紙の封を開ける。
信愛なるミスタとフーゴへ
明日、僕の所まで来てください。話したい事と、渡したい物があります。
簡単に言えばそんな事が書いてあった。自身がコチラの家に入れて帰るということは、相当急用で重大なブツなのだろうと思う。
寝室に戻り、暗がりに留まりたがるように丸まっているフーゴに声をかける。
「起きろ、オメーの強い朝だぜ〜」
「うるさい…寝かせろよ…」
「オメーの親愛なるボスから、手紙が届いてんぜ?それでも起きねーの?」
「……ッは、!??」
起こしたら殺すと言わんばかりの顔をしていた表情が真っ青に染まる。
何か心当たりがあるのだろう。
「何か隠し事でもあんの?」
「……昨日の報告を忘れてたんだよ、絶対それだ…」
寝っ転がったまま、顔面蒼白でフーゴは頭を抱える。まず起き上がった方が良いんじゃあ無いのか。その声は、もう今のフーゴには届かないだろう。
「とりあえず行こうぜ、俺も呼ばれてっからよ」
「…うん、」
セックスの後より身体が重そうな雰囲気を醸し出しながら、フーゴは起き上がり、再び絶望したような顔をする。ジョルノから呼ばれたってだけでマイナスしか考えて無さすぎるだろう。
「…服が無いじゃあないか!これじゃあ1度家に戻らなければならないッ!!!!」
その声に今更気付かされる。そういえばコイツを家に返さなかったし、ここは俺の家だからコイツのあの穴だらけの服とか持ってる訳がない。この世に見捨てるれたような顔をしたフーゴの手を取り、玄関の扉を開けた。
◇
別に俺は昨日の夜着替えたヤツで良いだろう。まァ、それでバールも行ったし爆睡したけどな。フーゴの家まで足早に、知っているだけのショートカットを使って進む。
着いた途端にフーゴを早急に室内へブチ込む。
「早く準備しろよなァ」
自身はそう言って綺麗にクッションが装飾され、服も何も落ちていない清潔なソファにドカンと座る。部屋全体が人が使ったようには思えない清潔感があるが、人が生きている事を感じる。その絶妙なラインが、この部屋が好きな理由でもある。
奥の部屋から音が聞こえる。急いでいるのが、妙に力の篭った音で伝わる。
「終わった、早速行こう」
先程の慌てていた顔が嘘のようにスッキリしている。スイッチでも入ったのだろうか。そのスイッチは、俺には、一生見つけられはしないのだろう。そう思いながら、今朝開けた扉では無い戸を開けた。
◇
ジョルノの待つ部屋へと通常より脚を出す速度を早めながら歩く。早足になると、歩幅が合わないからか、フーゴがいつも異常に歩行に意識を向けている。そんなフーゴの手首を掴み、引っ張りながら部屋へと一直線に向かっていく。
上品に彩られたダークウッドの扉を、この雰囲気に有り得ない様な力でバン、と開ける。開けると同時に手は離してやった。ジョルノの前でこんな事したら、なんて言われるか分からない。
「2人とも、おはようございます」
「ッおはよう、ございます…あの、ジョジョ…」
フーゴの顔が歪み、真っ白に染まる。今から言われるであろう言葉にビクビクしている事が分かりやすい。
「…フーゴ、体調が悪いんですか?」
労りの言葉をかけられるとは思っていなかったフーゴの顔が、豆鉄砲を食らったような間抜けな顔に変わる。
そりゃあ、オメーが思っている話なら俺は呼ばれねーから、お前の思い通りになる事は有り得ねーんだけどな。
「ッいえ、そんな事は無いです!お気遣いありがとうございます」
気を取り直したようにフーゴの顔が安堵に染まる。2人だけの世界を作られると、俺が気まずいのだが、それはお二人様が理解しているのかは、全然知らない。
「じゃあ、何のために俺らを呼んだんだよ」
同時に呼ぶって事は、相当の理由があるんでしょォ〜??軽く圧をかけるように呼んだ真実を問いかける。俺から何かオーラでも出ていたのか知らないが、ジョルノがコチラを見て思い出したかの様な顔をする。呼んだのに理由を忘れたのかと、溜息をつきそうになるが、ついたらフーゴにでもシバかれるのは目に見えている。
ジョルノが何をするにも使っている、クッションがしっかり付いているお高いデスクチェアから立ち上がり、机の横に備え付けられた引き出しから何かを取り出す。
「これを2人にプレゼントしようと思っていたんです」
そう言ってジョルノは1つの小さな紙袋をフーゴとミスタの手の中に置く。
「…今開けても?」
「Sì」
返事を聞いてからフーゴは紙袋を止めていたテープを剥がし、紙袋の口を広げて中を確認し始める。フーゴが了承を得たのだから、俺も開けたって大丈夫だろう。そう思い袋の口を開けて、中身を取り出す。上品なブレスレットだ。全体的に装飾が散りばめられている訳では無く、1つの飾りが大きく主張されている。
「これ、バレルモチーフのアクセサリですね?」
「そうです。良くご存知ですね」
「そりゃあ、アクセサリに興味が無い訳じゃあ無いので…」
的確に何がモチーフかを当てたフーゴの手には、同じ飾りが付けられた洒落たシンプルなデザインのネックレスだった。
「ハワイに行かれたんですか?スケジュールには書かれていなかったと思いますが…」
「いえ、君達に似合うかと思って、少し前に部下に頼んだんです」
昨日に間に合わせたかったのですが、2人が来ないものだから遅れちゃいましたね。なんてくすくす笑いながら言うジョルノに、お互いに何も喋れなくなる。昼間からお互いにズルズル連れ込んで、遊び倒したとは言えない。
「ありがとうございます。これから沢山使わせて頂きます」
そう言葉を放ち、深く頭を下げるフーゴの横でミスタも軽く頭を下げる。にしても、このアクセサリに意味があるのだろうか。それともジョルノの自己満か。家に帰ったら少し調べたりしてみようと思う。
そう考えている時も、ジョルノ顔は笑顔に染まっていた。
コメント
1件
わあ、バレンタインの話だったんですね!🍫 ミスタとフーゴの関係性がすごく丁寧に描かれていて、特に「他の人からもらったチョコを交換して食べる」っていう独自ルールが二人の距離感を象徴してて素敵でした。フーゴが嫉妬して顔を赤らめるシーン、めちゃくちゃ可愛くて胸がときめきました…!最後のジョルノからのプレゼントも含めて、お互いを想う気持ちが伝わってくる温かいお話でした。読ませてくれてありがとうございます🌷