テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最原 × 王馬
超高校級設定なし、謎時空
元恋人同士
最原 「」
王馬 『』
雨上がりの街角。夜風に濡れたアスファルトが街灯を反射して、薄い金色の揺らめきを生んでいる。人通りは少なく、昼の喧騒を忘れた都会は、不自然なほど静かだった。
僕は、その静けさの中で足を止めた。
視界の端に映った後ろ姿。黒いフードを被り、傘も差さずに濡れた髪を払いながら歩く人影。心臓が跳ねる。何年経っても忘れるはずがない。あの小柄な背中を。
「…王馬、くん?」
声は、思っていたよりずっと震えていた。彼が振り返るまでの一瞬が、永遠に感じられる。
そして、ゆっくりとこちらを向いたその顔──
『…あれぇ? もしかして…最原ちゃん?』
軽い調子の声。けれど、目の奥は笑っていなかった。見覚えのある仮面のような笑みは、そのままに。
息が詰まる。何年も、何百回も夢に見た再会。けれど現実は、あまりにもあっけなく訪れてしまった。
「ひ、久しぶり…。元気、だった?」
『んー、まぁまぁ? 別に死んでなかったし。あ、最原ちゃんも生きてたんだ。よかったよかった!』
冗談みたいに笑う声。昔と同じ。なのに、昔よりずっと遠い。
僕は一歩近づこうとして、足が止まった。彼の表情が、「これ以上は来るな」と告げているように見えたから。
「…相変わらずだね」
『そりゃそうだよ。オレは嘘つきだもん』
その響きに、胸が締め付けられる。昔なら「それもそうだね」なんて笑えたはず。けれど今は、その言葉が喉に詰まって出てこない。
間が空く。夜の静けさに、二人の呼吸音だけが残る。
「…会いたかったよ」
気づけば口をついていた。王馬くんが少し目を見開いた気がしたが、すぐに小さく笑って肩をすくめた。
『へぇ。オレに? なんで?』
「なんでって……そんなの、」
『ほら、言えないんでしょ?』
挑発するように笑う顔。だが、声の震えは隠せていない。
『最原ちゃんさ、あのとき“別れよう”って言ったの、忘れた? オレのことなんか、とっくに忘れてると思ってたのに」』
「忘れられるわけ、ないだろ……!」
声が少し大きくなった。王馬くんは一瞬たじろぐ。その表情を見て、胸の奥から感情があふれ出した。
「王馬くん以外、考えられなかった! 他の誰かと過ごそうとしても、全部上手くいかなかった…。結局ずっと、君だけが!」
『…やめてよ』
低く、かすれた声が遮る。彼は顔を背け、笑いながら言った。
『そんなこと言われたら、オレ、期待しちゃうじゃん』
震える肩。笑っているはずなのに、声は泣き出す寸前のようだった。
僕は一歩、踏み出した。けれど、王馬くんは後ずさりする。
『ダメだよ。オレたちは戻れない。…最原ちゃんだって、もう気づいてるでしょ。』
「……あぁ」
認めるしかなかった。あの日、一度壊れてしまった絆は、もう二度と同じ形にはならない。分かり合っていた“つもり”で、いつの間にかすれ違って。
沈黙が、冷たい夜を支配する。
やがて彼は、いつものように軽い声で言った。
『ま、でもさ。こうやって偶然会えただけで、今日はラッキーかも? オレ、最原ちゃんに“生きてる”って証明できたんだから』
「……それで、満足なの?」
『さぁ? 満足したふりくらいはできるかな』
そう言って笑った彼の目が、街灯に揺れて滲んだ。涙かどうかは分からない。けれど、見間違えるはずがない感情がそこにあった。
『じゃあね、最原ちゃん。…もう追いかけてこないでよ?』
踵を返す後ろ姿。小さな背中が、また遠ざかっていく。伸ばした手は、空を掴むだけだった。
『痛みだけでも君に残したかった』。
彼の声が、歌詞のように胸に焼きついて離れない。
僕はただ、雨上がりの夜に立ち尽くすしかなかった。
コメント
1件
みぅだよ…🤍🥀 「Rowan」の第1話、読ませてもらったよ。 雨上がりの街角であの別れた人と偶然再会する瞬間、すごく胸が締め付けられた… 最原くんの「会いたかった」が本心なのに、王馬くんが「期待しちゃうじゃん」って震えながら笑うとこ、ほんとに切なかった。 「痛みだけでも君に残したかった」って言葉がずっと心に刺さってる。 あの距離感と、戻れない二人の空気感がリアルで深い…。 続き、絶対読みたいです…🌙
ろろさゔ @よつばリスナー
55
しいな
70
#紅鮭軸