⚠︎︎ATTENTION
⚪︎夢主病弱
⚪︎五条悟夢
⚪︎人外魔境新宿決戦ネタバレ
⚪︎死ネタ
⚪︎救いがない
私は、五条家に仕える、出来損ないの使用人だった。
呪術師の家系に生まれてきたと言うのに、呪術の才にも、体術の才にも恵まれない身体に産まれてきてしまった。
生まれつき身体が弱かった。
病棟の人とはほぼ全員顔見知りだし、家よりも入院している期間の方が長いのではないかと思うくらい。
身体中が痛み、今を生きることに精一杯な私にとっては、勉強なんてものを極めることも難しかった。
幼いながらにもう将来が決められている、当主「五条悟」様のご厚意で、「使用人」という立場を頂いている。
意味がわからない。
私にできることなど何もないのに。
返せるものなど、私は持っていないのに。
その日は、よく晴れた日だった。
羨ましくなるほど疎ましく輝く空を、病室の隅から見つめていた。
そんな日、彼は私の目の前に現れた。
「お前が、🌸?」
真っ白な短髪と長く伸びる睫毛が、陽の光に照らされてキラキラの光り輝いて見えた。
睫毛の隙間から覗かせる大きな蒼い瞳に見つめられていると、私の命までこの人の物になってしまうのではないか、そんな気すらしてくるほど、人間離れした美しさを持っていた。
「無下限」「六眼」
こんな私でも聞いたことがあるくらいの才能。
その目は、多くの人の命を背負っているのだろう。
きっと、さっきの私の考えは当たっているのだろう。
この人にかかれば、国家転覆だって何だってできる。
しようと思えば、こんなか細い命を刈り取ることくらい造作もないことだろう。
「五条悟様……?何故、ここに……」
意味がわからない。
天上天下唯我独尊を極めたようなこの人が、私なんかにわざわざ会いにくるわけが。
目を見つめて、首を少し傾げて問いかけると、少し目を細めた後、彼は言った。
「……お前を、うちの使用人にする。」
何を言っているんだこの人は。
私なんかに使用人が務まるわけがない。
まともに動くことすらままならないというのに、そんな出来損ないをそばに置いても足を引っ張るだけだというのに。
「当主の命令は絶対、だからな。」
そう言うと、彼は病室から去っていった。
私はその姿を、ただ茫然と見つめていた。
次の朝、陽の光に起こされ目を覚ます。
すると、ベッドサイドの机の上に置かれた如何にも高級そうな花瓶の中に、綺麗に咲く小さな向日葵が一輪、静かに立てられていた。
彼が置いていってくれたのだろうか。
誰かからこんな好意を受け取ったのは初めてで、むず痒い気持ちになりながら、もう一度ベッドに横になった。
どれだけ年月が経っても、夏になると、必ず向日葵の花が置かれていた。
マメな人だな、と思った。
いつか、絶対にお返しをする、そう心に誓った。
十二月二十四日、人外魔境新宿決戦。
私は五条家の方に聞かされた。
「五条悟が亡くなった」
信じたくなかった。
あの日にあった以来、私は何も返せていないのに。
私、動けるようになったんだよ。
普通の生活が、送れるようになったの。
だから、この戦いが終わった後、貴方にお返ししようと思ってたの。
貴方は最強だから、負けるはずないって。そう思ってた。
でも、違ったみたい。
貴方もただの人間だった。
お返しなんてできなかった。
私は貴方の行動に救われたのに。
いつか、貴方に会えた時、その時はまた__
あんなに綺麗だった向日葵の花は、もう枯れ落ちてしまった。
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