「うまくいった?何の話?」
フロワが眉間に深い闇を作ると、皐月に聞いた。皐月は、淡々と話した。
「あなたはフロワですか?」
「まあ、そうだけど」
フロワは毅然とした態度で答えた。
「じゃあ、Bの幹部ですね。Aの幹部はカルムですか?」
「何の確認?」
皐月はフロワの顰蹙を買った。
「分かってるので答えなくても大丈夫ですよ。俺が気になるのは、Cの幹部についてです」
「ああ。あの男。知ってるわ。仲いいし」
「そうですか。最近、俺の仲間が何人か殺されました。その死んだ仲間のうちの一人が俺にメールを送っていました。途中で切れていましたが、読むと、『Cの幹部はペルペテュエルだ。そしてその部下』。読んだ通り途切れています。ペルペテュエルは、フランス語で不滅という意味。俺なりにしっかり考えましたが、不滅というのは恐らく、不老不死という事」
「ほう」
フロワは手を顎に当てて感心するように皐月を見た。
「何故そんなコードネームが付いているのか、分かりませんが。まあ、それは後で良いでしょう」
皐月はフロワにゆっくり近づいていく。
フロワはそれに合わせるようにゆっくり後退りした。
「四年前。俺が小4で、”成人”したときでした。英才小学校で、何人か諜報員が行方不明になることがありました。
それの多くは現在起きているMI6連続殺人事件で殺された諜報員と当時二人でバディを組んでいた諜報員でした」
「ああ、そうなの」
フロワは何も知らないというように、首を傾げた。
「じゃあ、ここで質問ですが、その行方不明者の中に、虹村澪(にじむられい)という男は居たのを覚えていますか」
「……そんなん誰が覚えてんの?」
フロワの言葉に息がつまりそうになったが、皐月はそれでも言葉を続けた。
「俺の昔のバディです。これの意味が分かります?」
「さあさっぱり」
「あなたにとって俺は、格好の餌じゃないですか」
皐月は一度俯いた後、フロワの方を見た。
「虹村は俺の先輩でした。俺は彼の死体を発見しました。彼は明るい茶髪だったんですが、白色の髪に片目が半分白くなっていて、後に解剖した後、心臓と脳以外の細胞が、不死になっていました。現在は心臓と脳のみを火葬し、残りは研究に使っています。まあそんなことはどうでもいいんですが」
「なーるほどねえ。つまり、君が言いたいのは、私が君を狙ってるってことだよね。まあ、そんなことないんだけど」
「……そうですか。ならもう良いです。確認は終わりました」
皐月が背を向けた後、フロワが口を開いた。
「もう少しさぁ――」
「?」
皐月が振り向いて彼女の方を見る。
「――もう少し苦しめてからがいいんだよね。君は」
「……どういうことですか」
「ま、その内分かるよ。じゃあね」
フロワは皐月に背を向けると、向こう側の階段に向かって歩いて行った。
家庭科室。午前二時。
『皐月。俺だ、唐尾だ。短い間だったが、バディありがと。最後の仕事果たしてくる』
「……」
録音機にイヤホンを直接繋げ、暗い部屋の中で、残されたメッセージを聞いていた。
録音機からイヤホンを取り外すと、録音機の録音開始ボタンを押した。
「虹村。最近、報告です。今日は一人死にました。早歩きはしませんが、早くあなたに会いたいですね」
皐月は録音終了のボタンを押した。
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