テラーノベル
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rm view___________
あたたかい、あたたかいものが、俺を包んでいる
手を伸ばして,明るいところから、俺を引っ張って、連れ出して
“……怖かったろ”
ううん、ただ寒いの、暗いの
…怖い、なんて、ないはずだから
だから大丈夫、何もないからね、俺は平気だからね
だから放っておいて、
“帰ろう、りもこん”
…ううん、…帰ったって何もない、俺には
“りもこん”
いいよ、いいの、もういいの、
だからもう、やめてね、怖いから
ねえ、綺麗な手、俺大好きだよ、お前らのこと
でもね、でもね、俺はお前らと違うの、だからね、
“大丈夫。……もういい。大丈夫だから”
………赤いよ、青黒くて、汚いの
痛みで涙がでるし、反動で胃の中のものが溢れるの
何も大丈夫じゃないんだよ、汚いの
“もう、無理しなくていい。……お前がここにいるだけで十分だよ”
…ねえ、お前らはあったかいね、
ねえ、
どうしたら綺麗なままで、お前らと一緒にいられたかな
2度目の覚醒、世界はまだ静かで暗い。
rm(…ふうはやのいえ)
カーテンの隙間から、街灯の淡いオレンジが差し込んでいる。
小さな呼吸の音がして振り向く。
rm(……かざね)
怠惰なふうはやがベッドに行かなくても寝れるようにと買った、2人分は眠ることのできそうなベッド兼ソファ。
そのソファの端っこで毛布を半分かぶって、器用に丸まって寝ている。
髪の毛が顔にかかってて、薄いピンクの色が、暗がりでもやわらかく光っていた。
rm「……かざね?」
小さく、名前を呼んでみる。
けど、返事はない。
やっぱり、寝てる。
そのことに安心したのか自分でもわからない。
ただ、そっと息を吐いた。
rm(……何時だろ)
時間を確認しようと思ったけど、スマホを探す気にもなれなかった。
代わりに、窓の外の闇の深さだけで、なんとなく察する。
……たぶん、深夜、でもそれだけ。
rm「……」
静かな時間。
ゆっくりと上体を起こして、寝ているかざねの近くに歩み寄った。
かざねの髪の毛が、ほのかに揺れる。
その色が、夜の空気の中で小さく灯のように見えた。
そっとその髪に手を伸ばそうとして、止める。
いけない、今こんな俺が彼に触れたら。
汚いまま、彼に触れてしまったら。
rm「……ありがとね、かざね」
誰にも聞こえないくらいの声で。
ほんの少しだけ笑って、お茶でも飲もうかと振り返る。
ふっと、手首を掴まれた。
rm「……っ、え?」
ぞくり、と冷たいものが身体中を走った。
触れられたのは長袖の端、それでも、もう少しで素手が届く場所。
かざねの手が、俺の手をしっかり掴んでいた。
その瞳が薄く開いて、ぼんやりとこちらを見る。
ほんの数秒の沈黙。
それから、かざねはゆっくりと目を細めて、寝起き特有の掠れた声で言った。
kz「……また、いなくなるかと思った」
rm「ぇ、?な、なん、」
kz「なんでもない」
kz「……おはよう、りもこん」
rm「……おは、ょう…ごめん、起こしちゃった」
kz「ううん」
かざねは、ゆるく首を振って笑う。
まだ眠たそうなのに、ちゃんと優しい顔をしていた。
掴まれた手をそっと外して、ほんの少しだけ、気づかれないように距離を取る。
かざねは少しだけ黙って、体を起こした。
kz「……心配したんだよ、すごく」
rm「……ごめんね」
kz「謝らなくていいよ」
んん、と伸びをして、ピンク色の瞳が己を見据えた。
優しいはずなのに、それでいて何か、獲物を狙うような意志を感じる。
恐怖こそないが、何処か緊張感を抱く。
rm「……でも」
kz「……でも、って言う時の顔、変わってないね」
rm「え?」
kz「昔から。自分のこと責める時、癖があるの。…悩んでる時もそう」
rm「……なにそれ」
kz「教えないよ………隠すの上手くなったら困るし」
かざねは笑った。
でも、やっぱりそれもいつもの笑顔じゃないみたいで、やはり強い緊張感に苛まれる。
…怖い、なんだろう、なんか怖い。
rm「……もう一回、寝たら,?」
kz「りもこんこそ。何,眠くないの?」
rm「……わかんない」
かざねは小さく息をついて、少しだけ考えるように天井を見上げた。
それから、柔らかく言う。
kz「……一緒に寝よっか」
rm「……え?」
kz「眠れない夜はね、あったかい人が隣にいる方が、眠りやすいんだよ」
rm「……でも……ぃや、…こんな、俺が」
言葉が、喉の奥で小さく震える。
自己否定がまだ抜けきらない声。
かざねは、そんな俺を見て、じっと見つめている。
立ち上がって、目線が同じ高さに揃った。
どうしよう、腕を伸ばせば届く距離。
彼に手を伸ばされたら?
…それを拒む勇気もないくせに、触れられる自信もない。
kz「……」
ゆっくり、かざねが手を伸ばした。
………ぁぁ、
……ぁ、ゃばい、だめだ、
rm「……だめだよ」
声は震えていた。
伸ばされたかざねの手が、指先で空気を撫でただけで、俺は一歩、後ろに下がる。
rm「汚れるよ……俺、きたない、から」
その一言が、精一杯の抵抗だった。
彼の手を叩くことのない、彼のために放つ、お守りの言葉。
でも、それを聞いたかざねは俯いて大きくため息をつく。
前髪を掻き上げて、
………多分、こちらを睨んだ。
kz「……ほんと、」
kz「まだ言うんだ?」
rm「…………」
低い声。
怒鳴ってるわけじゃない。
でも、夜の空気よりずっと冷たくて、痛かった。
rm「……っ」
kz「俺さ、ずっと知らなかったよ」
kz「俺らの知らないところで、りもこんが傷つけられて」
kz「まともに笑えなくなって、それでもちゃんと“ごめん”って言うの?」
kz「……おかしいでしょ」
ねえ?と響く冷たい声。
優しさも混じるはずなのに、真冬のような冷たさを体が帯びて、鳥肌が立つのを感じた。
いやだ、いやだこんなの、こんなのいやだ
彼らに殴られるより痛い、彼らに笑われるより、汚いって言われるより、これは、
これは、ずっと、ずっとずっと、痛い
kz「なんでさ。なんで自分のこと“汚い”って言うの?」
rm「……だって、俺、」
kz「違う」
かざねの声が、かすかに重なる。
遮られた言葉が喉の奥で消える。
kz「お前の汚いところなんか、俺一度も見たことない」
静寂。
雨の音が遠くで鳴っている。
kz「痛くても、泣いてても、誰がやったのかも教えてくれない」
kz「俺が悪い、俺のせい、俺が俺が俺がって」
kz「まともに人のこと嫌いになれないくせに。それのどこが“汚い”の」
rm「……だ、だって、」
kz「“だって”じゃないよ」
かざねの声が、少しだけ強くなる。
足がわずかに震える……床が冷たい。
彼が一歩踏み出して、本当に半分意識的に、後ろに下がってしまった。
まずい、そう思ったのは、理性的な自分の方。
kz「…俺には触れられないようにしてるくせに、ふうはやには平気なんだ」
rm「…っ、」
kz「……ふうはやは、特別?」
rm「ちが……そういう、んじゃ、」
息が上がる、声量も大きくしてしまった自覚はあった。
でも、だからと言って抑えられるほど理性は保てていない、今更。
kz「じゃあ何。ふうはやも汚いから触れるの?」
rm「っちがう!!」
kz「違わないでしょ」
勢いよく腕を伸ばされて引っ張られる。
気がついたら彼の顔が目に前にある。
心拍数が上がる、不味い、不味い、不味い
触れてる、直接、手と手が触れている。
すぐに離せないように指を絡めて、至近距離に彼がいる。
…抱きしめられている。
rm「やッッ、かざね!」
kz「汚せよ俺のことも、そうしたら触ったって問題ないだろ」
kz「お前が汚いなら、それで俺も汚してくれよ!」
怒鳴るというに等しい声量、だけど、そこには悲痛も混じる。
kz「教えてよ、どうやったら俺も汚くなれる?お前と同じになりたい」
kz「ちゃんとりもこんのそばにいたい。りもこんにそれを許して欲しい」
kz「何処まで触れば汚くなれんだよ、言えよ」
rm「……やめて、かざね……っ」
声が震える。
泣きそうになるのを堪えるように、喉の奥が焼ける。
rm「やめてよ、そんなこと言わないでよ」
rm「汚くなんて、なっちゃだめだよ、そんなの……!」
kz「なんで?汚せよ俺のこと。お前の世界に俺も入れてよ」
kz「それ以外何してもお前に触れない。なあどうしたらいいの?」
kz「部外者じゃなきゃ許されないの?俺は」
かざねの腕に力が入る。
頭を撫でられるように、それでも彼の体へ引き寄せられる。
逃げようとしても、彼の方へと押し付けられる。
肩の骨が当たって、苦しい。
でもそれ以上に、心臓の音がうるさい。
視界に赤色がちらつく。本当は存在しないのに、赤が見えて頭がおかしくなりそうだ。
彼が汚れていく感覚。いけない、彼が、かざねが、
写真に映るかざね、楽しそうに白い歯を見せて、優しく微笑んでいるかざね。
そう、俺はそれを見た、俺の赤色で染まる彼の笑顔を見た。
そんなの、許されることじゃなかった。
rm「や、やだ……やだ、やだ、かざね、やだっ」
手を押しても、指が震えるばかりで力にならない。
ゆっくり、ゆっくりとかざねの力が弱くなって、優しく撫でられる。
kz「……ねえお願い、怖がんないで、りもこん」
kz「俺、汚くなれた?あ、もしかして汚すぎて俺に触りたくない?」
rm「ち…が、…ちが、っ、」
kz「…ねえりもこん、俺を見て」
頰を両手で挟まれて、彼の顔が視界に映る。
悲しそうでいて優しげに笑うかざねの表情に、ほんのり胸が痛んだ。
kz「俺、汚い?」
rm「……」
わからない、わからないよ
かざねは綺麗だ、俺と違って、でも俺が汚してしまったかもしれない。
でも彼の体は汚いように見えない、でも、でも、でも
rm「……わ、かん…なぃ、」
kz「……正解」
kz「…ごめんね、酷くして」
その声が、甘く、痛く、胸を裂いた。
心臓の鼓動が喉まで上がってくる。
kz「りもこんは自分のこと言うけど、俺らにもわかんない。お前が汚いなんて」
kz「全然汚くない。…お前が、俺の汚さを判別できないのと同じ」
言葉が喉で詰まる。
泣きたくないのに、涙が勝手に溢れて止まらない。
腕を引かれる。
かざねがさっきまで寝ていたソファまで引っ張られて、抱きしめられて寝転んだ。
rm「ぁ、や、…っ、」
kz「……ほんと、ばかだなぁ、りもこんは」
優しく頭を撫でられる。彼の顔は見えない。
怖くて、見ることもできなくて、ただぐっと目を瞑る。
それでも、深く響くかざねの声だけが、体全体に馴染んで入り込んでくる。
kz「本当に俺らを拒絶するならさ、嫌われるなり引っ越すなりなんなりすればいいんだよ」
rm「……」
kz「そうしないのは、そうまでして俺らと一緒にいたかったんでしょ」
kz「今後一生、一切触れられずに過ごそうと思ってたわけ?」
rm「……」
kz「…ばかだなぁ」
かざねの腕の中で、息をするたび胸が詰まった。
もう泣きたくないのに、涙が勝手に溢れて、頬を濡らす。
喉が焼けるみたいで、声にならない。
rm「……なんで、そんなこと言うの」
kz「……ごめんね」
かざねの声は、さっきよりずっと静かで、やわらかかった。
怒りも悲しみも全部沈んで、ただ、残ったのは熱だけ。
その熱が、ゆっくりと体の奥に沈み込んでいく。
rm「……かざね、おれ、おれね、」
kz「うん」
rm「……俺、ほんとは、怖いんだ」
kz「うん」
rm「何回も、いわれるの、汚ないって、おれが、」
かざねは何も言わなかった。
ただ、俺の背中をゆっくりと撫でた。
その手が、やさしすぎて、余計に泣きそうになった。
rm「……お腹、さ、殴られるとさ、痛くてね、」
rm「変な、変なところだったら、吐きそうになる」
kz「……」
rm「上手く吐けなくても、吐いても、もう、もうダメで、」
rm「汚いって、触るなって、俺、が、汚いから」
少しだけ、かざねの抱きしめる力が強くなる。
rm「汚れるから、臭いから、だから、俺は、触ったら、ダメで、」
rm「ふうはやも、かざね、も、しゅうとも、」
rm「触ったら、おれ、汚いから、だから、」
kz「…うん」
rm「…だから、」
kz「うん、大丈夫。俺らのことも汚して、りもこん」
kz「お前のそばにいさせてよ。」
kz「りもこんのこと、置いていかないから、俺らのことも置いていかないで」
一瞬の躊躇。
でも、心のどこかが「もう逃げなくていい」って、囁いた。
rm「……汚しても、いいの?」
kz「……うん」
その一言で、体がほどけるように軽くなった。
ゆっくりと、かざねの背中に手を伸ばす。
初めて、自分の意思で、誰かに触れた気がした。
rm「……あったかい」
kz「りもこんも、ちゃんとあったかいよ」
rm「……ほんと?」
kz「うん。ちゃんと、生きてる」
静寂の中で、時計の針がひとつ進む音がした。
外では、雨が小降りになっていた。
少しずつ夜が薄れて、窓の外が、ほんのりと灰色に染まっていく。
かざねの胸の奥に耳を当てる。
どく、どく、と心臓の音がする。
規則的で、まっすぐで、俺のよりもずっと強い。
その音を聞いているうちに、少しずつ呼吸が整っていった。
rm「……まだ、汚く、なるかも」
kz「…どうしたら、汚くなるの?」
rm「…殴られ、たら、?…蹴られたら、」
rm「わかん、ない、……耐えられなくて、吐きそうに、なったら、」
rm「血が、流れたら,」
rm「そしたら、…きた、ない、?」
kz「……そっか」
かざねが笑う。
それは、皮肉でも否定でもなくて、ただ包み込むような笑みだった。
kz「今、俺も一緒に汚れたから、もう大丈夫」
rm「……」
kz「二人分の汚れなら、あったかいままだよ」
kz「な、明日ふうはやとしゅうとも汚してやろう」
kz「…そしたら、また4人でさ」
その言葉が、じんわりと胸に滲んでいく。
涙の跡が乾いて、瞼が重たくなる。
世界がゆっくりと白んでいく。
ほんのりとした眠気が、かざねの手によって、一定のリズムでもたらされていく。
kz「……おやすみね、りもこん」
……きっと、この夜だけは、悪夢を見ない気がした。
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りもこんの声は、震えていた。
さっきまで感じていた冷たい感情も消え去って、ただ離したくない一心に抱きしめていた彼が、震えた声で話し出す。
彼の記憶の、ほんの一欠片。
きっと、パズルの1ピースにも満たないような、少ない少ない記憶を辿って。
rm「何回も、いわれるの、汚ないって、おれが、」
rm「……お腹、さ、殴られるとさ、痛くてね、」
rm「変な、変なところだったら、吐きそうになる」
rm「上手く吐けなくても、吐いても、もう、もうダメで、」
rm「汚いって、触るなって、俺、が、汚いから」
rm「汚れるから、臭いから、だから、俺は、触ったら、ダメで、」
何も言わなかった。言えなかったんじゃない。言わなかった。
彼が話す、想像するだけで、胃の底がねじれるような体験を、途切れさせないために。
俺の知らない、この子の体に刻まれてる時間を、多くでも知るために。
消えないまま、そこに居座ってる悪魔と、退治するために。
rm「ふうはやも、かざね、も、しゅうとも、」
rm「触ったら、おれ、汚いから、だから、」
rm「…だから、」
kz「うん、大丈夫。俺らのことも汚して、りもこん」
kz「お前のそばにいさせてよ。」
kz「りもこんのこと、置いていかないから、俺らのことも置いていかないで」
お前の息も、涙も、全部、ちゃんと生きてる匂いなのに。
一瞬の沈黙。
りもこんが、少しだけ顔を上げる。
rm「……汚しても、いいの?」
当たり前だろ、そう言ってるんだから。
泣きそうになる、声を出したらまずいってわかるくらい、涙がそこに用意されている。
kz「……うん」
声が掠れる。頭がおかしくなりそうだ。
kz「…どうしたら、汚くなるの?」
rm「…殴られ、たら、?…蹴られたら、」
rm「わかん、ない、……耐えられなくて、吐きそうに、なったら、」
rm「血が、流れたら,」
rm「そしたら、…きた、ない、?」
kz「……そっか」
そうなんだな、やっぱり、お前の心には、
俺らじゃない、別の誰かが、亀裂を入れてるんだ。
常識も感覚も、時には理性も壊れて、雨の中に消えようとしてしまうくらい、
大きな大きな、深い亀裂を、お前の心に刻んだんだ。
kz「今、俺も一緒に汚れたから、もう大丈夫」
kz「二人分の汚れなら、あったかいままだよ」
kz「な、明日ふうはやとしゅうとも汚してやろう」
kz「…そしたら、また4人でさ」
りもこんが俺を抱きしめる力が、ほんの少し強くなる。
そして数分して、また弱く力が抜けていく。
眠たいんだってすぐにわかる。だって、俺が怖がらせたから。
疲れただろうから、これまでずっと、頑張ってきたんだから。
ねえ、だから、次頑張るならさ、俺らが見えるところでしてよ。
kz「……おやすみね、りもこん」
……りもこんの寝息が響く。
落ち着いた真夜中の時間に、沸々と湧き上がっていた怒りは、確実にその存在を主張し始めていた。
でも抱きしめる力を強くしてはいけない。
彼は、ちゃんと休ませないといけないから。
それでも、
“……お腹、さ、殴られるとさ、痛くてね、”
“汚いって、触るなって、俺、が、汚いから”
“…殴られ、たら、?…蹴られたら、”
“……耐えられなくて、吐きそうに、なったら、”
“血が、流れたら,”
ねえ、誰?誰なの?お前にそんなことをしたのは
俺らにこんな思いをさせてるのは
お前に、深い闇を張らせたのは、誰なの
kz「……許さないからな」
りもこんが怒ってなくたって、俺らは絶対許さない
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