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🌩️🦒×🤝

第1話 - 🌩️🦒×🤝

223

2025年11月02日

#にじさんじBL

#rttt

#月食バース

#ご本人様には関係ありません

あうるさん｡

【あてんしょーん】
・nmmn

・BL､R表現を含む二次創作

・吐血､嘔吐､死亡表現有

・mb出る(善良)

・地雷さん回れ右

今回はrtttで月食バース書いていきます

詳しいことは某P支部で説明されているのですが､私の方でも軽く説明させて頂こうと思います｡(詳しいかつわかりやすい説明をお求めの方は支部見に行ってからこちらへ戻ってきていただけると幸いです)

【概要】

人が生きるために必要なエネルギーを生み出す場所､核(コア)｡形は丸い｡

核が全て機能しているのが望ましいが､半分だけや一割だけしか機能していない人も存在する｡

人種(核の機能段階)は4つ｡

①満月型

その名の通り､機能している部分が満月のように丸く､(全て機能している)健康体な人のことを指す｡

②半月型

丸い核の半分しか機能していなく､機能していない方が黒く見えるのが半月のようだという理由でこの名前に｡体にあまり影響しない機能不全だけなので､ほぼ健康体

③三日月型

核が2割〜3割ほどしか機能していない｡その為病弱｡成人を迎えられるのは三日月形のおよそ半数｡

④欠け月型

核が1割弱しか機能していない｡その為とても病弱､成人を迎えることがほぼ不可能｡

③と④の死を防ぐには､パートナー契約をする必要がある｡

《パートナー契約とは？》

欠けている部分を補って､核の機能不全の場所を稼働させる｡核が欠けている側の薬指を噛むと成立し､①や②との死別､一方的な解除がない限りは契約が続く｡解除(死別)が起きた場合､③と④は死ぬ｡

型によって結ばれることの出来る相手が変わってくる｡

半月型×半月型 or 満月型×三日月型 or 満月型(2人必要)×欠け月型の3パターン｡

また型だけでなく､カラータイプも重要になってくる｡これが近しくないと③と④がショック死してしまう｡(タイプが近しいまたは同色の場合契約可｡全く同じカラータイプの人と出会う確率は１億分の１｡)

ちなみにパートナー契約をしたからといって不調や発作が無くなる訳ではなく､軽減されるだけである｡

パートナー契約を交わしたら､③と④は性別問わず妊娠が可能になる｡

だいたいこんな感じでしょうか｡長くなってしまい申し訳ないです｡

【メイン】

rt⇒満月型｡とても元気｡友達が多い｡一応ttと同じ学校｡

tt⇒三日月型｡三日月型の中でも重症なので､幼い頃から入院生活を過ごしている｡学校には一度も行ったことがない｡(名前だけ名簿にある感じ｡たまに担任から授業で使った教材が送られてくる｡)だが､院内教育のおかげで同年代の子並みの知識はある｡

【他のつえーメンバー】

(出てくる人のみ)

mn⇒満月型｡めっちゃ元気｡rtの友達で､riの幼なじみ｡

ri⇒三日月型｡三日月型の中でも症状がとても軽い｡(のため入院はたまにする程度｡)男性の看護師さんと仲がいい｡mnの幼なじみ｡

wn⇒満月型｡今回登場する満月型の中では一番健康体｡もしかしたら2人分を1人で補えるかもしれない｡近所に住んでいたkgのお見舞いでよく病院に来る｡

kg⇒欠け月型｡お兄ちゃん的存在のwnが来てくれるのをいつも楽しみにしている｡だが､パートナーが見つからないため(そもそも病院に居ると人に会わない)､死期が近づいている｡

メイン rttt

その他要素⇒ wnkg

ここから伏字ないです｡それでもいい方はいってらっしゃい👋

────────────

🤝side

僕は昔から身体が弱かった｡一人で外に出たこともないし､病院食以外食べたことがない｡両親は忙しい人だったから､会えるのは土日の少しの時間だけ｡だから多分看護師さんとかお医者の先生の方が仲良し｡

僕はたまに倒れちゃうときがある｡そのときは決まっていつも点滴がご飯｡点滴って美味しいのかな｡僕は食べてる感覚がないからよく分からない｡でも体は喜んでいるのか､次の日はいつもより少しだけ調子がいい｡お医者の先生によると僕は､欠け月型に近い三日月型らしい｡

そんな僕は学校にも行けないまま大人にもなれないで､真っ白の病室と少ししか知らない外の景色だけ見て死ぬ｡

今までずっとそうやって生きていくと思っていたし､ちょっと怖いけどいつでも死ぬ覚悟は出来ていた｡どうせいつか死んじゃうし｡

でも､隣の部屋に知らない子が来てから､僕の運命が変わった気がした｡

────────────

mb１: お前なにやってんだよ〜！笑

mb２: 鉄棒から落ちたんだよ！

mb３: にしても痛そうだな…この足つんつんしていい？

mb２: ふざけんな笑

隣の病室がうるさい｡仲良しの看護師さんによると､鉄棒から落ちて足を骨折した男の子が入ってきたらしい｡三日月病棟が丁度空いていたので少しの間だけここに居るんだとか｡

「テツくんと同じ学校らしいよ」とか言われたけど学校に行けない僕からすれば赤の他人｡きっと一緒に騒いでいるのはクラスメイトになるかもしれなかった奴らだろう｡

仮に僕が健康体で学校に行けていたとしても､仲良く出来る気がしない｡

早く帰ってくれないかな､なんて考えながら､看護師さんのコレクションであるらしい漫画を読む｡

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗｯ🚪

🤝 : うわっ……！？

🌩️🦒 : あれ､､､病室間違えた、？

急にドアを開けた派手な髪色の男の子と目が合う｡そして少し訪れる沈黙｡

🌩️🦒 : …しｯ､失礼しましたぁぁぁ！！

🤝 : あ､待って…！

患者さん以外と絡むチャンスだ､と思って､出ていこうとする彼を引き留める｡そうすると戻ってきてくれた｡

🤝 : だ､誰…？

だがいざ喋るとなっても小さい声しか出ない｡めっちゃ緊張してる｡顔とか声とか変じゃないかな。

🌩️🦒 : 俺…？俺はリトっていうんだけど…君は？

🤝 : んぇ､僕？僕は､イッテツっていうんだけど…

🌩️🦒 : え！お前……

彼はそう言いかけると､一旦入口から廊下を覗いて戻ってきた｡

🌩️🦒 : やっぱり！！お前もしかして､学年名簿に名前はあるけど学校に来なくてほぼ都市伝説化してるっていう幻の同級生の､佐伯イッテツ…？

🤝 : え､なんで僕の名前知って…って､えぇ、！？何それ！

僕が知らないところで僕じゃなくなってる！都市伝説じゃなくてちゃんと存在してるんだってば！！

🌩️🦒 : お前だったんだー！俺一応お前と同じクラスな｡

🤝 : そ､うなんだ…？

🌩️🦒 : 同級生かつクラスメイト…？だったら名前で呼んだ方がいいよな〜､普通に呼び捨てでいい？

🤝 : え！？全然いいけど……

最近の小6怖い｡いや世間の小6知らないけど｡人ってこんなにグイグイ来るものなの？

🌩️🦒 : 俺がイッテツのこと名前で呼ぶんだし､イッテツも俺のこと名前で呼んで！

🤝 : わ､分かったぁ… り､リト､､くん？

🌩️🦒 : なんで疑問形なんだよ笑笑面白いから別にいいけど笑

そこからしばらく話して､だいぶリトくんと打ち解けることが出来た｡

隣のうるさい奴らはリトくんのクラスメイト…つまり僕と同じクラスの人らしい｡”なるかもしれない”が本当になっていたとは……

🤝 : リトくんはみんなの方行かなくていいの、？

🌩️🦒 : えー全然いいよ｡あいつら俺居なくても盛り上がるし｡

🤝 : そうなんだ …

そんな話をしていると､隣から「リト遅くね〜？」という声が聞こえる｡

🌩️🦒 : …行かなきゃかな

🤝 : あの子たちはリトくんを待ってるから行ってあげたら？

🌩️🦒 : ……分かった、

🌩️🦒 : 学校終わってからになるけど…明日も来てもいい？

🤝 : …ｯ✨もちろんっ！！

🌩️🦒 : んじゃ､約束な〜

それだけ言って､リトくんは僕の病室をあとにし､数秒後にまた隣が騒がしくなった｡

ずっと静かな病院だったから騒がしいのには慣れていないけれど､リト君のおかげで僕は明日が来るのが楽しみになっていた｡

──────────────────

3年後

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗｯ🚪

🌩️🦒 : 元気〜？

🤝 : この病室は僕しか居ないからいいけど､せめてノックはしてよね

🌩️🦒 : おうおう､テツのくせに生意気発動か〜？

🤝 : そのセリフ某ネコ型ロボットのアニメで聞いたことあるよ…

🌩️🦒 : まぁまぁいいじゃん！んで､本題ね｡

2人で笑いあっていたが､急にリトくんが真剣な顔になる｡

🌩️🦒 : 検査､どうだった？

🤝 : あー ……

今日僕は毎月行われる検査を受けた｡

出会ったときはお互い小学生だったけれどこの春からは高校生｡

おめでたいことだけど､僕で考えれば死期が近づいている｡

それをずっとリトくんは心配してくれている｡

🤝 : …ちょこっとだけね？ほんとちょっとだけ…コアが欠けて無くなってた｡

🌩️🦒 : やっぱ進んでんのか…

🤝 : いやでもｯ！僕今いつもと変わらないでしょ？だから大丈夫だって！

🤝 : ていうかリトくんこそ大丈夫なの？世の中はその…お受験シーズンとか言うじゃん｡

🌩️🦒 : 俺推薦合格したからもうあと学校行くだけなんだよね〜

🤝 : え､なにそれ聞いてない！！

🌩️🦒 : だって言ってねぇもん｡聞かれるまで言わないつもりだったし､自分から言うことでもないだろ

🤝 : リトくんにとってはそうかもしれないけどさ…！でも､おめでとう！

🌩️🦒 : はいはい､ありがとな〜

🤝 : 全然嬉しそうじゃない！！

🌩️🦒 : 嬉しいって笑笑

🤝 : じゃあなんでそんな感じなの！

🌩️🦒 : だって俺が今思ってること言ったらお前しょんぼりするもん

🤝 : いいから！なんでも受け止める！

🌩️🦒 : …後悔すんなよ？

🌩️🦒 : …小中一緒のお前と高校生活過ごせたらどんだけ楽しかったかなって考えてた｡

🤝 : あ〜…

🌩️🦒 : ほら

🤝 : いやそれは仕方ないよ｡僕も自分の運命呪うもん

🌩️🦒 : 俺お前といろんなところ行きたいよ

🤝 : 例えば？

🌩️🦒 : 海とか水族館とか｡あとお前これで数年前とかのしか見たこと無さそうだから映画館で最近の映画見たい

リトくんがこれ､と指さすのは部屋に備え付けの小さいテレビ｡

そういえば最近これで初めてサマーウォーズを見た気がする｡

🤝 : 楽しそう！…ってそれ､デートみたいじゃんっ

🤝 : 僕たちパートナーでもないのに、

僕がそう笑って言うと､リトくんは一瞬少し悲しそうな顔になり､笑って｢確かに､｣と呟いた｡

🌩️🦒 : んじゃ､俺はそろそろ帰ろうかな〜

🤝 : え､今日なんか短くない？

🌩️🦒 : 勉強とか卒業諸々で､俺忙しいんでね〜

🌩️🦒 : じゃ､おやすみ〜

僕の言葉も聞かずに帰ってしまった｡

僕なんかまずいこと言ったかな｡

そう一人でしょんぼりしていると､コンコンっとドアがノックされた｡リトくん忘れ物かな､と思いながら｢はーい｣と返事をする｡

入ってきたのは白髪の幼い男の子｡

🥷🔫 : 佐伯､来たぞ

僕を苗字で呼び捨てにする男の子｡幼そうに見えるが俺の一つ下｡欠け月型のカゲツくん｡

🤝 : カゲツくん！久しいねぇ

🥷🔫 : だってあれから病棟出ちゃだめ言われたんやもん…

あれ､というのは､前カゲツくんが盛大に体調を崩したときのこと｡

あのときは周りに人が居たりしてなんとか助かったが､僕だけだったら完全にカゲツくんは死んじゃってたかもしれない｡

前のことがあるからか僕の部屋の前には看護師さんが2人居る｡

🥷🔫 : 最近そっちはどうや？

🤝 : んー､特に何もないかなぁ…

🤝 : ちょこっとコアが欠けてたぐらい

🥷🔫 : それお前ぼくみたいになるんやない？まぁぼくはまだ残ってる一割のうちのさらに6割ぐらいしか機能しとらんけど

🤝 : うわっ……そっちもかなり進んでんじゃん

🥷🔫 : 年越せるか不安なってきたわ

🥷🔫 : 少なくともぼくがもう歳をとることは…

🥷🔫 : 今の佐伯の歳には追いつけんままになるんやろうな､笑

そう言うと悲しそうに笑う｡まるであちらの世界へ行ってしまうという事実を受け入れようとしているように見える｡

🤝 : …っ､

🥷🔫 : まぁそれまでにパートナー見つけれたらちょっと話違うかもやけどな

🤝 : あの赤髪の人は？

🥷🔫 : 赤城？あの人は忙しいし､なにより…僕よりええ人見つかるよ

🥷🔫 : 満月型みたいに元気な人の方がええやろうし

🤝 : せめて死ぬまでに思ってること言ってみればいいじゃん､

🥷🔫 : …言う覚悟が出来ればよかったんやけどな､

🥷🔫 : 死ぬってことは分かってたから覚悟出来てたけど…嫌われに行く覚悟は出来んわ、

🥷🔫 : 病院外で唯一話してくれる､大事な人やから…失いたくないんよ

🤝 : ……そっか､

🥷🔫 : ごめんな､こういう雰囲気にしてしまって｡

🥷🔫 : 検査結果聞きたかっただけやから

🤝 : …うん､全然大丈夫｡

🥷🔫 : じゃ､また会えたら

そう言って､看護師さんたちと一緒に戻って行く｡

🤝 : ………死ぬ､か…

──────────────────

1ヶ月後

早朝｡外が騒がしい｡外というか､病院全体…？

そこで､予想外な声が聞こえてくる｡

看① : カゲツくんの容態が急変しました…！！

看② : 点滴用意！主治医の先生呼んできて！！

カゲツくんが危ない｡そう聞こえて､ふらつく足で廊下に出てみる｡

ガラガラという音をたてて運ばれていく姿と､赤髪の人の後ろ姿が見えた｡

🍱🦖 : カゲツきゅん､！頑張って生きて…！

そういう声も聞こえてくる｡本当にギリギリなのだと思う｡

今すぐにでもカゲツくんのそばに行きたかったが､僕は看護師さんやお医者さんに言わなきゃ病室から出られない｡

仕方なく病室に居るしかなかった｡

──────────────────

🥷🔫side

熱を出して寝込んでいたが､いつもの感じで体が火照ってきた｡

息が苦しくなってきてナースコールを押すのもやっと｡なんとか押して､看護師さんを呼んだ｡夜中なのに呼び出してしまって申し訳ない｡

看 :カゲツくん！大丈夫！？

🥷🔫 : あぅ…んﾞ…ｹﾞﾎｯｹﾞﾎｯ苦しｯ…泣

看 : と､とりあえずお医者さん呼ぶね！！

そう言って看護師さんが応援を頼んでいる間も咳が出て苦しい｡苦しんでいる間にも浮かぶのは大好きなあの人のこと｡

忙しい人だけど最期ぐらいは会いたいと思っていた人｡もしかしたらその時が来たのかもしれない｡

🥷🔫 : かんごし､さ…､赤城､よべる、？

看 : 分かった！ウェンくん呼んでもらうようにも頼んどくね！

🥷🔫 : ありがと、、ｹﾞﾎｯかひゅっ

そこからぼくは記憶がない｡

──────────────────

次目覚めると､ぼくは担架で運ばれていた｡方向的に集中治療室｡いっぱい管に繋がれて､たくさん薬を使うところ｡

🍱🦖 : カゲツきゅん､！

🥷🔫 : あかぎ…？

来てくれたんだ｡忙しいはずなのに｡こんな朝早くからぼくのために｡そのことを知れただけで嬉しい｡

🍱🦖 : 今は生きることだけ考えて…！

🥷🔫 : わかっ…ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯた､､

多分ぼくは今日でみんなとさよならしちゃう｡生まれてからずっと病院で､友達って言える人も多分佐伯ひとりだけ｡学校にも行けないでずっと寝たりゲームしたりの日々｡

他の人からしたらつまらないかもしれないけれど､ぼくだけの14年とちょっと｡楽しかったなぁ｡

きっとぼくは助からない｡自分でもそうわかってしまう｡だから看護師さんとお医者さんをなんとか説得して廊下に出てもらい､最期の時間を過ごさせてもらうことにした｡

めちゃくちゃ反対してくれてたけど､最期のお願いと言うと､渋々受け入れてくれた｡

ぼくの命と気持ち､どちらも大切にしてくれる人にずっと見てもらえてよかったな｡そして今治療をしないでいてくれているのも有難い。

きっと今のぼくに薬や点滴をあげると､他の人の命を救うものをドブに捨てるようなものになってしまうから｡

🥷🔫 : …あかぎ､

🍱🦖 : なに、？

🥷🔫 : 多分ぼく…しんじゃうわ

🍱🦖 : え…？やだよ､居なくならないで、

🥷🔫 : ぼくもずっと赤城と居たかった

🥷🔫 : だけどそれは､叶わんただの夢やったみたい、笑

🍱🦖 : そんな悲しいこと言わないでよ｡絶対助か､､

🥷🔫 : あかぎ

🥷🔫 : 物事には､かならず終わりがある｡

🥷🔫 : いつか来る予定やったぼくの終わりが､たまたま今日やっただけや

🍱🦖 : それでも､！僕まだカゲツきゅんとやりたいこと沢山あるのに…！

🥷🔫 : ぼくは､赤城と居れて楽しかった

🥷🔫 : それで十分や

🍱🦖 : ………っ､

🥷🔫 : ぼくは赤城のことがずっと好きやった｡

🍱🦖 : 、！

🍱🦖 : なんで今なの……

🥷🔫 : お別れの前に伝えとこうと思って

🥷🔫 : で､赤城の気持ち聞いて旅立とうかなって

🍱🦖 : …僕もカゲツきゅんのこと昔から…赤ちゃんの頃から大好きだよ

🥷🔫 : んふ､嬉しい

🍱🦖 : もう少し早く知ってれば…こんな苦しい思いする前に僕が噛んでパートナーになれたのに､今だって､

🍱🦖 : なんで言ってくれなかったの

🥷🔫 : ぼくらやったら無理やからや

🍱🦖 : 僕は満月型2人分の元気がある｡人数補えてるから…

🥷🔫 : カラータイプ､

そうぼくが言ったところで､赤城の顔がハッとなる｡

🥷🔫 : 赤城は赤っぽいやろ？ぼくのは青っぽいの

🥷🔫 : 神様はどんだけぼくらを虐めたら気が済むんやろうね

🍱🦖 : そんなｯ…

🥷🔫 : いくら両想いだからってタイプが違ったら意味ない｡

🥷🔫 : あかぎのカラータイプ知ってからギリギリまで伝えんとこ､って思ったんよ

🥷🔫 : ……っ､

ｹﾞﾎｯｹﾞﾎｯ､ｺﾞﾌｯｶﾋｭｯ

びちゃびちゃっ

🍱🦖 : カゲツきゅん､血……！

🥷🔫 : 大丈夫｡どうせもう死ぬし

🥷🔫 : 死ぬ前に…ぼくがおらんなる前に言わせて、

🥷🔫 : こんなぼくと…ずっと居てくれてありがと､

🥷🔫 : 赤城はぼくより､ええ人見つけて､幸せになってな｡

🥷🔫 : 大好きやったで

涙がつうっと頬をなぞり､やがて溢れる｡次第に身体の力が抜けてきた｡そろそろお迎えが来るのだろう｡

ねぇ神様､もしまだぼくにチャンスがあるのなら

🥷🔫 : 次は､元気に生まれて､学校に､行ったりして､ずっと赤城と幸せになりたいっ…

目を閉じて､この叢雲カゲツというひとりの人間の命が消えるまで､ぼくは祈り続けた｡

──────────────────

🍱🦖side

🥷🔫 : 次は､元気に生まれて､学校に､行ったりして､ずっと赤城と幸せになりたいっ…

その呟きを聞いた直後､目の前から生命の気配が消えた｡

…確か亡くなった人の耳ってしばらくは聞こえるんだよね、

🍱🦖 : …ねぇカゲツきゅん､聞こえる？

🍱🦖 : 僕ね､さっきカゲツきゅんが死んじゃうかもって聞いたとき､一緒に死んじゃおっかなって思ってたんだ｡それぐらい君のことが大好きなの

🍱🦖 : でもそんなこと言われたら生きるしかないじゃん｡

🍱🦖 : 君の分まで幸せに生きてやるから､先にそっちで見守っててね

静かな水面のような病室に一滴の独り言を零し､もう居ない想い人の名前を呼びながら､僕は一人でしばらく泣いていた｡

─────

ある程度おさまってきたところで､ちらっとカゲツきゅんを見る｡

人形のように綺麗な顔で眠っているのは､穢れという言葉とは無縁で､本来なら今は使わないはずの白い翼を背負って空へと羽ばたいてしまった悲しき天使｡

そんな彼に別れのキスをしようか悩んだが､やめた｡

カゲツきゅんの目が覚めてるときにしなきゃ､意味無いもんね｡

──────────────────

🤝side

カゲツくんが亡くなったのを知らされたのはその日の夕方｡リトくんと話していたときだった｡

目の前にリトくんが居るのにも関わらず､涙をぼろぼろ零して泣いてしまった｡その間リトくんはずっと優しく背中をさすってくれていた｡

そんな泣いていた気持ちも身体も落ち着いてきた頃｡

🤝 : …カゲツくん居なくなっちゃったのか、

🌩️🦒 : 仲良かったの？

🤝 : 病院で唯一話せる同年代の友達

🌩️🦒 : そっか…

🌩️🦒 : カラータイプねぇ…テツはどんな感じなん？

🤝 : 僕は赤っぽい感じ

🌩️🦒 : なんかぽいかも

🤝 : そう？

🤝 : そんなこと聞くリトくんはどんな感じ？

🌩️🦒 : 俺は赤強めなオレンジって感じ

🤝 : へ〜…結構近いんだね

🌩️🦒 : 俺もびっくり

──────────────────

数時間後

🤝 : ねぇリトくん

🌩️🦒 : ん？

🤝 : 頼みがあるんだけどさ

🤝 : 僕高校に行ってみたい

🌩️🦒 : え？

🤝 : 一日でいいから､学校っていうのに行ってみたくて…だめかな？

🌩️🦒 : 俺は全然いいんだけど校長とかに聞かなきゃ無理かな…

🤝 : そっか…

🌩️🦒 : そんなしょんぼりしなくても！聞いてくるから大丈夫だって

🤝 : ん､ありがと

──────────────────

数日後

🤝 : リトくん俺感激だよぉぉ…

🌩️🦒 : 大袈裟すぎだろ笑

僕がずっと病院の窓からしか見れなかった学校が目の前にある｡

ちなみに看護師さんは居ない｡

なんとリトくんの高校の校長先生が欠け月型の人のパートナーだったらしく､体が弱い人の願いは今のうちに叶えておかなければいけないと考える人で､今回快くOKしてくれたらしい｡

🌩️🦒 : …さ､どうする？

🤝 : どうするって何？

🌩️🦒 : 制服｡テツのサイズだったら俺の従兄弟のあるけど着る？

🤝 : 着る！

🌩️🦒 : 声でか笑笑よし､決まりな！

─────────────────────

一通り校内を見回って､最後はリトくんの教室に着く｡僕はここで今日一日を過ごすらしい｡

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗｯ🚪

mb A : リトじゃん！おはよ〜

🌩️🦒 : おはよ

mb B : って､後ろのやつ誰？

その声でクラスの半分ぐらいの視線が僕に注がれる｡怖い・・・

🌩️🦒 : こいつ？佐伯イッテツっていうんだけど

mb A : え！？佐伯ってこいつなの、！？

🤝: なんで僕のこと知ってるの！？

mb A : あぁ…俺ら同じ小学校だったんだよ｡

🌩️🦒: お前が都市伝説化してたのはこいつらも知ってんだよ

🤝 : へ､へぇ〜・・・

🐝🤣 : んわ､リトが遅刻しとらん！！大雨でも降るんかなぁ？

💡 : マナ､それは言い過ぎじゃない？笑

と､仲良さげな会話をしながら登場したのは､金髪水色メッシュのかっこいい男の子と､黄緑メッシュと白色メッシュが入ったちょっと長髪の男の子｡

看護師さんのコレクションのなかにあった少女漫画とかに出てくるモテ系男子のポジなのか､教室内外から黄色い声が聞こえる｡

🐝🤣 : …って､お前がイッテツ？

🤝 : え？あぁ､えっと……

💡 : なんで知ってるんだ､って思ったでしょ？

💡 : こいつがいつも話してくんの｡「昨日テツがさ〜」って笑笑

🌩️🦒 : なっ………

🤝 : リトくんそんなに僕の話してくれてるの？笑

🌩️🦒 : うっせぇ……てか昨日絶対話すなよって言ったよな！？

💡 : えぇ〜？オレよくわかんないかも〜笑笑

そう煽ってはリトくんから逃げる体制をとる｡

一度瞬きをすると､2人がいくつかの机の周りを追いかけっこしていて､それを見たクラスの人たちが笑っていた｡

🐝🤣 : あいつらは毎日あんな感じなんや｡許したってな｡

🤝 : へぇ…リトくんいっつもあんな感じなんだ､

🐝🤣 : あ､自己紹介しとらんかった！俺は緋八マナいうねん！気軽にマナでええからな！

🤝 : マナくんっていうんだ…僕は佐伯イッテツっていうんだけど、

🐝🤣 : イッテツ！よろしゅうな〜！！

🐝🤣 : んで､いっつもリトと言葉でプロレスしとるあいつが伊波ライっていうんやで〜

🤝: あの人がライくん……ね､覚えた、！！

そこから学校のことや僕の知らないリトくんのこと(成績はいいのに､たまに居眠りしちゃってるとか､体育ガチ勢だとか､身長が高いせいで後ろの席のマナくんが板書しづらく､たまにリトくんのノートを見せて貰ってることも)を教えてもらったりして､まだ朝なのに楽しい会話を沢山した｡

まさかリトくん以外に病院外でこんなに僕と接してくれる人がいるとは思わなかったなぁ､なんて｡

世間でいう予鈴というものが鳴り､わらわらとみんなが席につくのに続く…つもりだったが､まさかのみんなの前で自己紹介がある､と言われてしょんぼりする｡

担任の先生がだいたい言ってくれたのでギリ緊張で死ぬことはなかったが､病院以外で人に会わない僕からすればだいぶ高度なミッションだった｡

そこからは他のみんなみたいに授業を受けたり､担任の先生の優しさで普段は入れない屋上に行ったり｡

今まで一番楽しかったけど少し引っかかることがあるといえば､リトくんがクラスメイトに向ける視線が少し怖いときがあったことだろうか｡

まぁ僕が言うことじゃないし､と思いながら看護師さんが用意してくれたお弁当を食べる｡

勿論リトくんとだけど､マナくんとライくんも僕と話したいって言って着いてこようとしたけど､リトくんが少しお話をしたら笑いながらどこかへ行った｡

🤝 : マナくんたちは僕らと同じ小学校とかじゃないの？

🌩️🦒 : 俺らが居た中学って市内のいくつかの小学校から人が来るから結構人数多めなのは知ってるっけ

🤝 : うん

🌩️🦒 : だからライとは小学校は違うけど中学からは一緒だった

🤝 : へー……

🌩️🦒 : マナはライと小学校は一緒だけど中学はお受験してちょっと遠い私立の方行ってたって聞いたわ

🌩️🦒 : あまりにも勉強すぎたのと女子がしつこかったからそこの高校行かずにこっち戻ってきたらしい

🤝 : ふむふむ・・・

🤝 : リトくん詳しいんだね

🌩️🦒 : まぁな〜

あの二人についてよく知っていることを羨ましいな､と思う一方で僕の心は少しモヤモヤしていた｡年数でいえば二人より僕の方がリトくんと長く居るのに｡

でも僕が死んじゃったらそんな年数なんて二人が追い抜かしていくんだろうな､とも考えてしまってせっかくのご飯中なのにしょんぼりしてしまう｡

🌩️🦒 : …お前今なんか暗いこと考えてた？

🤝 : えぇ！？

🤝 : なんで分かるの！？

🌩️🦒 : 何年一緒にいると思ってんだよ

🌩️🦒 : お前のことなんて誰よりも分かってるっての｡

🤝 : リトくぅん………泣

🌩️🦒 : なんでそんなにしんみりすんの？笑笑

🤝 : なんか安心しちゃって…

僕が勝手に不安になってただけでやっぱりリトくんは僕のことちゃんと見てくれてるんだ､と嬉しくなってさっきのモヤモヤが一旦消えてくれた｡

そこからまた授業を受けて､いろんな部活を見て周り､僕の最初で最後の学校生活は幕を閉じた｡

🤝 : リトくん今日はありがと〜！！

🌩️🦒 : 全然いいよ

🌩️🦒 : またどっか行こうな〜

そう言ってリトくんが病室から出ていく｡こうやって一人になるとやっぱりいつもの病室が広く感じる｡僕しか居ないし､今日は沢山の人と一緒だったからいつもの何倍も寂しい｡

ぼーっとしていると､こんこん､と扉をノックされる｡

リトくんが忘れ物したのかな､と思い､｢どうぞー｣と返事をする｡

そこに立っていたのはリトくんでも看護師さんでもなくて､いつもカゲツくんが嬉しそうに話していた赤髪のお兄さんだった｡

よくよく考えたらあのリトくんがノックなんてするわけないか｡

🤝 : えっと・・・

🍱🦖 : あ､僕はカゲツきゅんのお見舞いに来てた赤城ウェンっていうんだけど、

ウェンさんはそう言って自分のカバンの中身を探る｡

｢これ、｣と言って僕に差し出したのは1冊のノート｡

🍱🦖 : 預かり物…というか｡名前書いてないから｢誰の？｣ってなったかもしれないけど､これはカゲツきゅんが毎日つけてた日記だよ

｢毎日同じような文だからあまり変わったことは書いてないけど、｣と付け加える｡

🍱🦖 : カゲツきゅんの病室のものとかを整理してるときに見つかってね､

🍱🦖 : 3冊ぐらいあったんだけど､君に渡したそれには君のことが沢山書かれてて

🍱🦖 : よかったら読んでくれないかな｡

そう言われてノートを開くと､僕と初めて会った時のことが書かれていた｡

漢字を覚えたての頃だったからか所々誤字ってたりしたけれど､ページをめくる度にカゲツくんとの思い出が沢山よみがえってきた｡

2XXX年 12月1日㈰天気ゆき

今年初めてのゆきがふった｡そして今日はさいきのたん生日。

あかぎにおねがいしてプレゼントを買ってきてもらった。

思ったよりよろこんでくれたから､らい年もわたしたい。

書きながらもうすぐあかぎのたん生日って気ずいたけどあかぎのはだれにたのもうかな

この日は確か夕方ぐらいにカゲツくんが病室に来て､僕にマグカップだけ渡して帰っていった日だ｡まさかこんな裏話があったとは｡そんな風に驚いていると､端っこに小さく文字が書かれていて､鉛筆でぐしゃぐしゃに消した跡があった｡

そこを頑張って読んでみると､

｢ぼくもさいきも元気やったら外でゆきあそびとかできたんかな、｣

その文字を見て､僕らは話すことはあったけど遊んだことはなかったな､と思い出す｡そしてそれは今願ってももう叶わないものなんだ､と嫌でも感じさせられる｡

そこから10ページぐらい読むと､文が途中のまま終わっていた｡

🍱🦖 : それ持っててくれる？

🍱🦖 : きっと僕が持っておくより君に持っててもらった方が､多分カゲツきゅんも喜んでくれるからさ

🤝 : 分かりました、

そう言って､今まで僕の周りにあった何よりも大切に持っておこうと誓った｡

🍱🦖 : じゃ､僕はこれで

🍱🦖 : どうかカゲツきゅんのことは忘れないであげてね

🍱🦖 : 人は忘れられたときが本当に死んだとき､って言うし､

そう言い残してウェンさんは僕の病室から出ていった｡

また一人になってから受け取ったノートを見ると､あの日たくさん泣いたはずなのにまた涙が溢れてきて､しばらく止まることはなかった｡

──────────────────

🤝side

時は経ち､リトくんと出会ってから7回目の冬が来た｡窓から見える木は葉っぱを無くして少し寒そう｡

🤝 : リトくぅん

🌩️🦒 : んー？

🤝 : 君今日講義あるって言ってなかったっけ？

🌩️🦒 : なんのことでしょうか

🤝 : はぁ………

大学に入って忙しいはず(実際愚痴とかも聞く)なのになんだかんだ毎日病室に来てくれているリトくんに嬉しさを感じつつ､近づいてきた己の最終点のことを考えては暗い気持ちになる｡

🌩️🦒 : だって90分訳わかんねぇ話聞くんだぜ？

🌩️🦒 : そんなことに時間取られるんなら同じ時間でテツに会いに来るっての

🤝 : それは嬉しいんだけど…ｹﾞﾎｯｹﾞﾎｯ

🌩️🦒 : 大丈夫か？ここ最近ずっと体調悪そうだけど

🤝 : うﾞ､ん……

心配される度に､自分はもう長くないんだと感じている｡リトくんが気づいているのかは知らないけれど､いつも伝えようとして喉元で止まる｡

リトくんとのお別れを意識したくないからかな｡

欲を言えば僕が死ぬならリトくんとがいいし､ずうっとリトくんの隣で生きて､リトくんが辛いときも傍に居たい｡

我儘だって分かってるし見方を変えれば僕が死ぬときにリトくんも死んでほしいっていうような､大切な人の死を願う最低な奴になるってことは分かってる｡

だけど､どうしても願ってしまうんだ｡

ひとりは嫌だから｡

🌩️🦒 : …テツ？

🤝 : ､？

🤝 : なぁにリトくん

🌩️🦒 : やっぱお前今日は寝てた方がいいんじゃね？

🌩️🦒 : 一回の問いかけで気づかねぇし

🤝 : え､ごめんね…

🌩️🦒 : 俺は全然いいんだけど…って､いやテツの体のこと考えたらよくないんだけどさ､

正直今僕がいつ死ぬのか分からない｡もしかしたらこれがリトくんとの最後になっちゃうかもしれない｡

🤝 : 寝てもずっと隣に居てくれる､？

🌩️🦒 : 居るから

🤝 : 分かった

これで今死んでも寂しくなることは無いし､最後までリトくんに会えたんだから幸せだ､と考え､僕は眠りについた｡

──────────────────

🌩️🦒side

結構難しめで読むのも嫌になるような本を秒で閉じ､隣のテツを見る｡

こうして見ていると､こいつも大きくなったよな､と親戚のような視点で見てしまう｡

きっかけは勘違いだったけれど､こいつを初めて見たとき､俺の身体に電流が走った気がした｡勿論本当に電気がビビビッてなった訳では無いが､そんなふうに錯覚するほど衝撃的な出来事だった｡

そこからだんだん惹かれていって､気づけばテツのことを独占したくなっていた｡

本当は学校に行かせるのもちょっと嫌だったし｡でもあいつの人生はもう長いものではないと言われているから､と自分に言い聞かせた｡

俺はあいつに生きててほしいけど俺じゃない誰かとのパートナー契約はしてほしくない｡

俺が気持ちを伝えたって叶わないことは分かっているし､残り少ない人生を台無しにしてしまうかもしれない｡

だから気持ちは伝えない｡友達のまま一緒に長く過ごす｡

そう決めて､隣に立っているのだ｡

🤝 : んん……

🌩️🦒 : あれ､起きた？

🤝 : うん………

🤝 : 僕どれぐらい寝てた？

🌩️🦒 : 30分ぐらいかな

🤝 : そっかぁ〜……

返事をしながら伸びをする｡どれだけ横着なんだこいつは｡

そう思ってふと時計を見ると､講義の時間が近づいていることがわかった｡単位的に次は取らなければいけない､と､前々から思って予定に入れていた時間だった｡

🌩️🦒 : わりぃ､もう大学行かなきゃだ

🤝 : えぇ､､今日は行っちゃう日なの？

🌩️🦒 : 今日の分取らなきゃやばくてさ…

🤝 : そっか…頑張ってね

🌩️🦒 : おう､じゃあまた

──────────────────

🤝side

リトくんが大学に行ってしまい､急に真っ白な病室が広く感じる｡

次はいつ来てくれるのかな｡もしかしたら今のが最後かもしれない｡だったらもっと話しておけばよかったな｡

これ以上考えても暗い方向に行くだけなので､少し前にこの病室に寄ってくれた看護師さんが置いていってくれた漫画から読みたいものを漁る｡

最近は電子コミックとかが主流だと聞くが､僕は紙で読みたいのだ｡借りた漫画ってちょっと特別なことしてるみたいだし｡

小さかった僕に漫画の面白さを教えてくれた看護師さんは既に別病棟に移っていったが､今でもたまに会いに来てくれる｡

最近話したことでいちばんびっくりしたのは､僕が一番最初に好きになった漫画が次に出る単行本で完結するということだろうか｡あれは本当にびっくりした｡

看護師さんもあれはお気に入りの一つだったらしく､推しキャラの名前を口にしては完結を嘆いていた｡そのキャラが戦って亡くなったときの次にショックらしい｡

今僕が読んでいるのはそれとは別のヒーロー漫画｡11人のヒーローがいろんなところで人々の日常を壊そうとしている敵を倒す話だ｡

🤝 : 僕もこんなふうになれたらよかったのになぁ…

傍から見れば成人したばかりの男が漫画を読んで戯言を言っているようにしか聞こえないだろうが本心である｡僕はこの漫画の世界しか知らないし｡

しばらくして今読んでいたものを読み終わり､次の巻を取ろうと手を伸ばしたときだった｡急に目眩がしてベッドに逆戻りする｡

｢またいつものか｣と思ったがどうやら今回は違うようだった｡いつもよりぐるぐるして気持ち悪い｡吐いちゃいそう｡これってもしかしなくても ──

頭上にあるナースコールのボタンを押せたのかは分からない｡でも誰かが助けてくれるのを願いながら僕の意識は暗闇に溶けていった｡

───────────────

🌩️🦒side

“ 佐伯さんが集中治療室に入られました “

講義が終わってスマホを開いたのと同時に病院からの着信｡嫌な予感はしたが一番先に飛び込んできたのはそんな一言だった｡

聞けば俺が講義に行って1時間も経たないうちに倒れ､テツの病室に用があった看護師に発見されたらしい｡受付にナースコールが届いた形跡はなかった｡

病院に着くと､集中治療室に通された｡

本来なら10分しか面会出来ないのだが今回は特別らしい｡

ぴっ､ぴっ､と無機質な電子音が鳴り響く｡それはまるで終わりへのカウントダウンのようで少し怖かった｡

🌩️🦒 : ……テツ〜？聞こえるか？

目を瞑ったままで反応は無い｡たくさんの管に繋がれて酸素マスクをつけている｡

聞こえているかは分からないが､俺はテツに言葉をかけ続けた｡

───────────────

🤝side

あれ､僕何してたんだろう｡確かあのとき病室で倒れて……

思い出そうとしていると､ふと自分の身体が軽いことに気づく｡なにも苦しくない｡

🥷🔫 : 佐伯〜

声がした方を見ると､カゲツくんが立っていた｡カゲツくんが亡くなったのは数年前だからか目の前に居るカゲツくんは少し大人びていた｡だけど病院に居た頃とは違ってすごく元気そうだった｡

🤝 : カゲツくん！？身体大丈夫なの､､？

🥷🔫 : 相変わらず声でかいなぁ､笑まぁ元気｡

🤝 : よかったぁ……てかここ何なの？カゲツくん居るし死後の世界？

🥷🔫 : えー､､まぁそんな感じ､かも｡

だとしたらまずい｡まだリトくんに何も伝えてないのに｡いや､でも今ここに居るということは僕はあのまま死んだのか？

🤝 : え､僕ってもしかして死……

🥷🔫 : 一旦落ち着け佐伯｡

🥷🔫 : 取り敢えずまだお前は死んどらんから安心せぇ

🤝 : あ､そうなの？でもどうやって戻れば…

🥷🔫 : 簡単や｡あそこにある生と死の境界を越えればええの｡

🤝 : え､じゃあカゲツくんも行こうよ！一緒に帰ろうよ

カゲツくんがここにいるということは一緒に行けば戻れるのではないかと思ったのだ｡だがカゲツくんは悲しそうに首を振った｡

🥷🔫 : ぼくはええよ｡死んでだいぶ経っとるし､今更戻ったって帰る身体がないからな

🥷🔫 : それにここから佐伯とか赤城とかの様子も見れて全然寂しくないからさ｡

そう淡々と言う姿が悲しくて､だけどあまり聞けなかったカゲツくんの本音が聞けたようで少し嬉しくて､もういろいろぐちゃぐちゃだった｡

🥷🔫 : ほら佐伯｡あとちょっとやから｡

いつの間にカゲツくんに誘導されていたのか､気づけば境界はもうすぐそこだった｡

🤝 : …カゲツくんと会えなくなるのは嫌だよ

🥷🔫 : ええから｡ぼくのことは気にせんで

🥷🔫 : 佐伯が目覚めるの待っとる人がおるし｡その人を悲しませんためにすぐ行けばええやん

｢耳すましてみ､｣と言われて周りの音をよく聞くと､リトくんの声が聞こえてきた｡

…リトくん僕の身体の近くに居るのかな｡

🥷🔫 : 別にぼくとはまた死んだら会えるし｡やからって早死にされても困るけどな｡

｢行ってこい｣という言葉と同時にとんっ､と背中を押される｡僕の片足は境界を越え､身体が足元から透けていく｡

🤝 : カゲツく…

🥷🔫 : 佐伯

🥷🔫 : …ぼくの分まで長生きして､また数十年後に会おうな

🥷🔫 : あと赤城には｢もう泣くな｣って伝えといて｡あの人には笑って幸せになってほしいから

僕はもうこの数年のうちに死んじゃうのに｡数十年と言っている彼が不思議でならなかったが､大切な友達との約束はなんとしてても果たさなければいけない｡それが唯一無二の友達との約束なら尚更｡

🤝 : …分かった！

そう答えると彼はふわりと笑って手を振った｡それを見届けると同時に､段々と周りの音が戻ってきた気がした｡

───────────────

🌩️🦒side

大丈夫､絶対治る､また話せる

彼のためにかけていた言葉はいつの間にか自分に言い聞かせるものへと変わっていた｡

もうどれぐらい言ったのか分からない｡そんなときに彼は目を覚ました｡

🤝 : リ､トくん……

🌩️🦒 : テツ！！

テツのために周りに指示をしていた医師､点滴の管理などをしていた看護師もびっくりしていた｡それぐらいテツが目覚めたことは驚くことなのだろう｡

🤝 : ごめんね……心配させちゃった､？

🌩️🦒 : くっそ心配してた｡身体は平気か？

🤝 : まだ吐き気はするけど……さっきよりはだいぶマシ｡

それが聞けて一安心だ｡健康…とは言えないが､身体が楽なことほどいいものは無い｡

そこから病院の人たちと話し､容態が急変する場合もあり､もし最期のときが来てしまって独りでは可哀想だから､という理由で今夜は病院で過ごすことになった｡実質泊まりである｡

🤝 : ごめんねリトくん…僕のせいで

🌩️🦒 : いいって｡テツの身体が一番大切なんだからこれぐらい気にすんな｡

🤝 : ……ありがと

───────────────

🤝side

夜中ふと目が覚め､辺りを見渡すと僕以外にも人が居た｡そういえば今日リトくん泊まりだっけ｡

🤝 : リトく〜ん､､？(小声)

起きる気配は無い｡どうやら深く眠っているらしい｡そういえばこんなに長く一緒に居るのにリトくんの寝顔なんて見たことがなかった｡

いつも元気な彼からは想像できないほどの穏やかな寝顔｡ちょっと可愛いかも､なんて｡

前から気になってたけど､僕が正直に気持ちを伝えたら君はどんな反応をしてくれるのだろう｡僕から離れちゃうのかな｡それとも困った風に笑ってさり気なく躱すだろうか｡もし僕の気持ちに応えてくれることが起きたなら ── ｡

🤝 : ……好きだよ､

ぽろっと出た本心は深く眠っている彼には届かず､静かな病室に溶けていった｡僕からしたら､それだけで充分だった｡

🤝 : …おやすみリトくん

───────────────

翌日

リトくんは大学に行かなかった｡僕の容態が安定するまでは絶対に行かないらしい｡そう思ってくれているのは嬉しいけれど､これ以上僕が苦しくなるのでやめてほしくもあった｡未練を残して死にたくはない｡

🤝 : ねぇリトくん

🌩️🦒 : なに？

🤝 : リトくんはさぁ､好きな人とか居るの？

気づけばそんなことを口走っていた｡

だから必死に誤魔化す｡

🤝 : あ､昨日久々に少女漫画読んじゃってさ…笑

🤝 : だから気になっちゃって

🌩️🦒 : 好きな人？

🌩️🦒 : …居るには居るけど

最悪｡聞かなきゃよかった｡そういう感情より先に湧くのはというかなんてことをポロリしたんだ僕は！という気持ち｡なんかモヤモヤする｡

でも学校に行ったときのリトくんを思い出して｢あれだけ周りに人が居れば納得だな｣と頷いている僕もいる｡もうぐちゃぐちゃだよ｡

🤝 : ……そっかぁ

🌩️🦒 : すごいやらかした雰囲気を感じるんだけど

🤝 : んぇ？気のせいでしょ

🌩️🦒 : そっか

🤝 : ……ｯ､げほっげほっ､げほっげほっ､

いつもと少し違う咳き込みの後､口を抑えた僕の手の隙間から血が流れた｡口の中が鉄臭い匂いばかりで気持ち悪い｡

🌩️🦒 : ……テツ？

🤝 : あ……リトくっ…ごめんﾞっ……げほっ

🌩️🦒 : いや謝るんじゃなくて！早くナースコールしなきゃ！！

すぐにリトくんがナースコールを押してくれて､僕はまた集中治療室に運ばれた｡

───────────────

僕はもう助からないかもしれない｡そんな声がパーテーション越しに聞こえてきた｡

🤝 : ……僕死んじゃうのかな

🌩️🦒 : ………

今は僕をどう治療するかお医者さんどうしで話し合っていて､僕の近くに居るのはリトくんだけ｡

ほんとにいつ死ぬか分からないらしいからリトくんとの最後が次の一瞬かもしれない､と考えては怖くなっていた｡

このままだったらカゲツくんに笑われちゃうかもしれない｡唯一の友達との約束が果たせないかもしれない｡それに未練という最悪な土産がついたら尚更｡

じゃあ今伝えてしまおうか｡

どう転んでもいい｡どうせもう死ぬのだから｡

🤝 : ……リトくん､

🤝 : さっきさ…好きな人の話したでしょ

🤝 : 僕の好きな人ってさ､リトくんなんだよ

🌩️🦒 : ………え？

🤝 : 嘘じゃないよ｡あのとき出会ってからずっと｡リトくんのことが好きだった

🌩️🦒 : ……そっか

返事が素っ気ない｡やっぱり僕当たって砕けたかな｡でもそれでいい｡気持ちは伝えたから未練なんて残らない｡

🤝 : ……ごめんね急に｡死んじゃうってなったらどうしても言いたくてさ

🤝 : 馬鹿らしいよね､笑叶うはずないのにさ ──

🌩️🦒 : ……ｯ､

🌩️🦒 : そんなこと言うなよ

やっぱりそうかも｡ずっと一緒に居た友達の最期が自分への告白なんて嫌だもんね｡もう諦めて眠ってしまおうか｡

🌩️🦒 : 噛めば……なんとかなるかもしれないだろ､

🤝 : …………え？

今度は僕が呆気にとられる番だった｡噛む､？それってもしかしなくてもパートナー契約のことじゃないの｡

🤝 : リ､リトくんいいの､！？リトくんの大切なパートナー契約使っちゃって……

🌩️🦒 : それはお前もだろ

🌩️🦒 : 俺らカラータイプ近い…というか遠くないし｡俺もお前のこと好きだし｡

🌩️🦒 : …もしこれでお前が死んだら俺も死ぬから､あっちで一緒に過ごそう

僕が一番願っていた｢好きな人の隣にずっと居たい｣が叶おうとしていた｡別にこれで死んだって構わない｡元々死期は近かったし､大好きな人に看取られて死ねるなら本望だ｡

🤝 : ………分かった｡

そう答えると､｢薬指出して｣と言われたので無自覚に左手を差し出す｡

こうして僕らは2人きりの状態でパートナー契約を交わした｡

───────────────

１ヶ月後

🌩️🦒 : テツ､どう？

🤝 : リトくん……僕感動だよぉ………

パーテーション区切りで二人きりのときに交わしたパートナー契約のおかげで､なんとか一命を取り留めた｡そこから少しずつ体調が良くなってきて､一昨日ついに退院許可が出たのだ｡

普通は症状の改善に1〜2年程かかるらしいが､僕の場合それが早く始まっているらしい｡と言っても通常と同じように１〜2年はかかるそうで､僕はその変化が少し緩やかになるだけだった｡

漫画を貸し続けてくれていた看護師さんを始め､主治医の先生たちと涙の別れをしたのが15分ほど前｡

今僕はタクシーに乗ってリトくんの家に向かっている｡両親は相変わらず忙しいし､おばあちゃんは老人ホームに行っちゃったし｡何よりパートナーだからという理由でリトくんの家に行かせてもらえることになったのだ｡

🤝 : ……ウェンさん元気そうでよかったね

🌩️🦒 : あの人もいつかしっかり前向けるといいな｡

実はこの1ヵ月の間に一度だけウェンさんが病院に来る機会があり､そのときに僕の病室まで来てもらったのだ｡

そしてあの日聞いたカゲツくんの言葉をそのまま伝えると､ウェンさんは泣いてしまった｡

🦖🍱 : 泣いてばっかじゃだめだよね､笑上ではカゲツきゅんが見てるのに

🦖🍱 : でもそっかぁ｡あの子そんなこと思ってたんだぁ

｢年下の子にそんな心配かけらんないね！｣と元気に言っては僕の方を向いて｢伝えてくれてありがとう｣｢君も幸せになってね｣と言ってから病室をあとにした｡

🤝 : ……大丈夫かな

🌩️🦒 : あの人なら大丈夫だよ｡きっと｡

そんな会話をしているうちにリトくんの家に着いたらしい｡初めて入るリトくんのおうち｡というか人の家に行く､家に入るというのが初めてかもしれない｡

🌩️🦒 : テツ来るからーって片付けたつもりなんだけど……散らかってたらごめん

🤝 : いや､全然大丈夫だよ！

そこからキャリーケースひとつで足りた少ない僕の荷物を家に運び､二人で椅子に座る｡

🤝 : そういえばだけどさ､マナくんとライくん元気？

🌩️🦒 : あー､

🌩️🦒 : マナは高校卒業してからあんま会ってねぇわ

🌩️🦒 : ライは前たまたま寄った店でバイトしててさ､マナもちゃんと元気らしい

🤝 : ならよかった

🌩️🦒 : ……あそこ密かに引っ付きそうだなーとか思ってんだよな

🤝 : ……それは僕も｡

しばらく沈黙が続き､ふと思ったことを提案してみる｡

🤝 : ねぇねぇ､僕定期的に病院に行くことはあっても自由に動いていいんでしょ？

🌩️🦒 : まぁそういうことになるな

🤝 : じゃあ行きたいところあるんだけど……

🌩️🦒 : お､どこ行きたい？

その日は僕がやりたいことを紙に書き出して､やりたいことリストを作った｡これからこれをリトくんと一緒に埋めていくのだと考えると何とも言えない嬉しい気持ちになる｡

僕とリトくんが死んじゃうときには､このリストがチェックマークで埋まっていることを願って｡

𝑭𝒊𝒏.

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4件

月食バースというのを初めて見たんですけど本当に泣いちゃいました😭 初めてがこれでよかったです！

月食バース見るのも聞くのも初めてだったんですけどめっっっちゃ好きでした、😭💗

あうるさん｡

プロフィール

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🌩️🦒×🤝

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