テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
⚠多分ネクロニカリプレイ
⚠グロ
⚠可哀想
⚠友人に書いてもらった神作(嫉妬)
悪夢を見ているかのような心地悪さの中で目を覚ます。ひどい耳鳴りと頭痛が思考を覆って、なにも考える気になれない。唯一覚えているのは……爆発の光でぴかぴかと光る砲弾、そして何度も何度も隠れていた暗く狭い部屋。でも、記憶の中にある光は、今はどこにもない。気付けば目の前がひらいて、見慣れないけれど扱い方がなんとなくわかる……ふたつの銃が立てかけてあった。
がんがんと頭は痛み、まともに周囲の声が聞こえないくらいに耳鳴りがしていたが、「そいつら」を見つけると、少しだけ収まった。他の人間……いや、人間ではない。うねうねと轟く触手だとか、まるで獣のような尻尾だとか、そういうのを「そいつら」は持っていた。ああ、俺も同じなんだろうか。嘘だ、俺は人間、俺は人間だよな、違う、違うのか……?誰だ、誰だ、誰だ……。
「ねえねえ、そこの……むらさきのこのなまえはなーに?」
「ああ、確かに聞いてなかったな。」
危なかった。耳に飛び込んできた明るい声とギザギザした声で正気に戻る。
「あぁ……俺はリル。なんだよ。」
本当は正気に戻してくれたことに感謝もしていたけれど、今お礼を言うのは変な感じもしたから、ぶっきらぼうに答えた。しっかり数えると……4人。人かどうかはこの際どうでもいい。彼らは俺ときっと同じなのだ。こんな状況に置かれている以上、こいつらを頼るしかない。
「ね、ねえ、そこの人……無事?」
「はあ……足手まといにはならないでくれよ。」
巨大で異形の身体に対して優しくか弱い声を出すやつと、美形で見惚れてしまうような少女らしき顔に似つかわしくない棘のある言葉を持つやつ。
「あ!ベロニカおねえちゃん、ハイドレンジアおねえちゃん!このこはね、リルっていうんだって!へへ、よろしくね!」
「おい、シャルル……まあいいや。俺はレイ。その、お前、かなり覚えやすい名前だな。」
小さくうねうねと触手で動く身体から明るい声を発するやつと、橙色の綺麗な髪を靡かせて……なんだか俺と似ているような、そんな印象的なやつ。
順に、ベロニカ、ハイドレンジア、シャルル、レイと言うらしい。2人は興味深そうに、異形の身体を蠢かせこちらを熱心に見てくる。もう2人は印象的かつ美形な顔で、なんだか厳格な試験官みたいな目つきで見てくる。不思議と悪い心地はしなかった。ベロニカとシャルルのことはこちらとしてももっと知りたいし、ハイドレンジアとレイには、なんだか親近感をおぼえた。
「それでね、それでね!ハイドレンジアおねえちゃんも、ベロニカおねえちゃんもすごいんだよ!ネクロマンサーの注意をハイドレンジアおねえちゃんが引いて、すかさずベロニカおねえちゃんが攻撃して!かっこよかったなあ……!ねっ、覚えてるよね?」
「あはは……ちょっと、リル……さん?も混乱してるんじゃないかなあ、ね?」
「はあ?誰だ、あんた。あんたみたいな能天気で生意気なやつ、知らないんだが。」
「えっ……ハイドレンジアおねえちゃん?うそだ……みんなで!ネクロマンサーを倒したじゃん!うそ…にせもの?ニセモノだっていうの?」
「その……落ち着いて、ね?」
ネクロマンサー?こいつら、既に何か関係があるのか?それに、よく見るとベロニカには、頭がふたつついている……喧嘩などしないのだろうか。頭痛がひいてきたのはいいが、過去について考える気にもなれず、今の状況への疑問がぐるぐると脳内を駆け巡っている。
「なあ……ネクロマンサーってなんだ?」
やっとの思いで捻り出した言葉だった。
「知らんな……おい、そこの、何か知ってるか?」
「お前、どんな立場で物を言って……あ?なんだ、俺は知らないぞ?まあ、死者蘇生技術……ってのが確かあったな。なんとなくそれだけ覚えてはいるが。」
レイとハイドレンジアはさっきから変わらず不機嫌そうだが、なんだかんだこういうのに答えてくれる優しさはあるみたいだ。俺と同じで、感情を表すのが苦手なだけ?「ありがとう……」なんとかお礼を言うと、割り込むようにシャルルが飛びついてきた。
「ネクロマンサーはね、シャルルたちをこんなからだにした、すっごくわるいひとなの!でもねでもね、シャルルたちが倒したはずなんだけど……なんで、こんなところにいるんだろ?」
掴みづらい情報だが……まとめると、「死者蘇生技術」なるものが存在し、おそらく死体となった俺たちを「ネクロマンサー」なるものが改造して、こんな身体にしたんだろう。でも、倒された……?なら確かにおかしい。俺はなぜ、こんなところで、記憶の一部だけを残して目覚めたのか。「ネクロマンサー」は複数いる?またもや謎が増え、ぐるぐると思考を巡らせているなか、どこか魂の抜けた、冷徹な音が響いた。
「目覚めたようだな。」
軍帽を被り、軍服を着た、虚ろな目をした少女。……俺たちにそっくりだ。なぜか、そう思ってしまった。
「お前、誰だよ。」
レイが彼女に近づく。その声には、少し殺意が籠もっていた。加勢しようかと思ったが……その必要はなさそうだ。ハイドレンジアもまた、進み出た。
「あんた、気に入らない眼をしてるな。俺があんたの性根を叩き直してやろうか?」
「……私はプロトネメシス。お前たちの試験官だ。ゆえに、お前たちに指図される義理はない。」
「ちっ……どうせ雑魚だ。おい、あんたら!こいつを押さえろ!」
彼は振り向いてそう言った。一応、銃を構えた。何が起きるかわからない、武装しておいて損はない。ベロニカとレイも一応、戦闘態勢に入ったが、レイは命令されたのが気に食わないようで、背負った荷物の中から火炎瓶を1つ取り出し、それを窮屈そうな目で見ている。シャルルにいたっては、ハイドレンジアが「ニセモノ」であることを信じて疑わず、完全に無視してベロニカの後ろに隠れていた。
「良い心意気だな。今回は存分に楽しめそうだ。」
「今回は」……?前にもこのようなことがあったのか?少し引っかかったが、そんな俺に構うはずもなく彼女は続ける。
「さあ、戦ってもらおうか。」
彼女がそう言って指を鳴らすと、大量の……ゾンビ?と言うのが正しいか。腐敗したような死体に、戦車、そして……俺達と同じような、だがさらに虚ろな目をした少女が1人、現れた。こんな身体でも、こんな記憶でも、何故かこんなにも言葉を扱える。思考もできる。それは、俺達を苦しめるためだと、理解できたのは、すぐだった。
飛び交う銃弾、攻撃をしかけてくる肉の群れ。射撃が得意だから……後ろに下がってさえいれば安全だと、思い込んでいたというのに。
「ぐっ……」何故か、俺の知っている身体と違って……この身体は、部位のひとつふたつ飛び散っても、それがたとえのうみそでも、絶えることがない。それが余計に辛かった。
「リル!」弱々しさのなかに力強さを感じる声。ベロニカが俺のことを庇おうとしたけど……もう遅かった。次の瞬間には、はらわたが飛び散り、嫌な気分になった。それでも痛みは感じない。バランスを崩して転ける瞬間、きらっと何かが光った。それは銃弾でも、刃物でもなく……さかな、いや、たい……たいやき!の形をしたペンダント。それを見ると、少し元気が湧いてきた。湧いてきたのに。
「あんたら、なにやってるんだ!この、俺が、あんたらの攻撃がちゃんと当たるようにしてやってるのに……。」
いや、成果はあった。現にゾンビは何体かばたばたと倒れて、俺が放った銃弾が、いくつかこいつらを仕留めたこともあったが……きりがないのだ。こっちが攻撃する以上に、あっちが攻撃してくるから。
四方八方に飛び散った俺の部位……感覚はあった。それがとても気持ち悪くて、吐き出しそうにもなったけれど、何故かこの身体はそれを許さなかった。吐き出そうとした頭を、顎を、砕かれる。痛みはない。でも……動きにくくなった。なんにもできない自分が情けなくなって、辛くて、その気持ちをあいつらにぶつけるようにした。シャルルだけは平気みたいだけど、他はみんな、そういう様子だった。
それでも敵の攻撃は止まない。他のやつらも同様だったが、頭を撃ち抜かれ、はらわたを抉られ、腕を切断され、ああ、何ができるというんだ。射撃だけは自慢だったのに、もうその銃もない。何もできない。
「この火炎瓶を投げつければ……」レイが言うと同時に、「えへへ、手伝ってあげる!」「……仕方ないな。ちゃんと当てろよ。」と、戦況に似つかわしくない、賑やかな声がまた聞こえた。それすらも、俺が何もできないということへの辱めになった。隣にいるベロニカも同じ気持ちだろう。彼女もまた……敵の遠くにいるはずなのに、痛めつけられている。這うことすらできないほどに。
「くすくすっ」……気持ち悪い声が聞こえた。幻聴?頭が吹っ飛んでいるから、感覚がよくわからない。気持ち悪くて、気持ち悪くて、気持ち悪くて……耐えて、耐えて、耐えて、何もわからない、自分のことすらわからない、名前と、かすかな記憶だけ残されている。ああ、何ができるんだ?何ができる?
残された部位で殴ろうとしたけど、そんなの微々たる影響しか与えられない。いよいよ、立っているのすら難しくなった。何故まだ戦えてしまうんだ。バランスを崩さないようにぐっと力をこめる。残された、たったひとつ残された足に、力を込める。何ができる、何ができるんだ……。何も見えない、吹っ飛んだ目玉で見えるのは、飛び散る血と汚れた天井だけ。
「リル……死んでしまうの?」隣にいたベロニカが言った。「そんな……私のせいで、私がもっと庇えていたら……。」
彼女の言葉はそれきりだった。もしかしたら、独り言だったかもしれない。ただ飛び散った耳がそこにあったから聞こえただけで、ああ……。
ぷしゅっと、足が粉々に砕け散る音が聞こえた。ついに、俺は、何もできなくなってしまった。ただ響くのは絶望の音だけ。何もできないと悟ったから、何もしなくていいと分かってしまったから……意識をシャットアウトした。
コメント
5件
ちなみにこれ書いたの誰?