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千景と付き合ってから一年が経った。バーが無い日には自宅に帰って来ると千景が帰って来るのをルナと待っている。
「ルナ、千景もうすぐ帰って来るからねー。」
「ニャー」
ガチャ
「ただいまー!」
「お帰りなさい。」
一年経った今も千景は僕の事が大好きみたいだ。まさかこんなに誰かに愛してもらえる日が僕の人生に訪れるなんて思ってもみなかった。幸せ過ぎて怖くなってしまう。
千景とは殆ど毎日エッチをしている。僕は体力的にはまぁ自信はあるんだけど、千景の体力には本当に驚いてしまう。歳の差なのかな…。
「はぁはぁはぁ、もうイッたから、ちかげぇ…これで終わりにしてぇ…。」
「まだ一回しかしてない!」
「うー、僕、もうとっくに限界なんだよ〜。」
「じゃあ、次はゆっくりするから。」
「いや、ちがっ、挿入ないでっ、あっ、あんっ、んーっっ!」
「あーきもちぃ。都希、大好き。」
「うー…僕も、好きだよ。」
こんな調子で大好きな千景に求められて、快楽尽くしな生活を送っている。
お互いの中指にはお揃いの指輪が光っている。これも付き合ってすぐに千景が「俺の都希に悪い虫が付かない様に!!」と、言って聞かないので一緒に買いに行った。ペアリングなんて初めてだったから、すごく嬉しくて今では自分の手を見るのが癖になってしまった。
・・・・
ある日、実家に帰ると相変わらず楽天家な母親が、『お義父さんと結婚式の写真を撮りたいのー!』と言い出した。お母さんも再婚したお義父さんと上手くいっている様だ。
「お母さん、もう良い歳なんだから…。」
「都希とも撮りたいの!人生最期のワガママに付き合ってよ〜。」と、断固として僕の意見は聞いてくれなかった。お母さんの気持ちは尊重したいけど、ウエディングドレスって…。
「お義父さん、お母さんがあんな事言ってますけど…。」
「まぁ、一枚くらいは記念に良いんじゃないかな?俺も都希くんと一緒に写りたいし。息子と写真が撮れるなんて幸せだよ。大袈裟な家族写真って事で。」
そう、この通りお義父さんはとても大らかな人で、お母さんを本当に大切にしてくれいる。初めて挨拶した時も「お母さんは俺が守るから、都希くんも安心してね。」と、言葉や雰囲気からも優しさが溢れていた。この人なら…と、安心した。
「う〜ん…。お義父さんがそう言うなら…。」
何でも許してしまうのはどうかと思うけど、お義父さんの頼み事は断らない様にしている。
「都希にも来て欲しいのよ〜!」
お母さん…。相変わらず過ぎてもう怒りすら湧かないよ。僕にもこの人の血が流れていると思うとゾッとするけど、僕が千景にワガママを言ったところで、それすら千景が大喜びする姿しか思い付かない。
「分かったよ…。」
渋々了承すると、年甲斐も無くはしゃいでいる母親の後ろでお義父さんまで拍手をしていた。
帰宅して、ご飯を作りながら千景に事の一部始終を話した。
「お母さん相変わらずだなー。でも、お義父さんもベタ惚れだから良いんじゃないか?」
「う、うん。でも、親のイチャイチャはちょっとキツイ。」
「確かに…。」
「僕たちも気を付けないと。」
「それとこれとは別だろ!!」
「へ?」
コンロの火をカチッと止められて、持っていたおたまも取り上げられた。
「どうしたの?!」
「まずは都希を食べる事にした。」
「はぁ!?今出来たのに冷めちゃうじゃん!」
「無自覚に可愛いお前が悪い。」
「意味わからない!ちょっと話し聞いてる?!」
「後でゆっくり聞くよ。」
「んっ!キスで誤魔化さないでよ。」
「都希、おいで。」
「…仕方ないな。一回だけだからね。」
「わかった。約束は出来ないけど。」
「・・・。」
抵抗はすぐに諦めて、千景に担がれそのままベッドへ連れて行かれた。愛し合った回数はご想像にお任せします。とりあえず、お行儀は悪いけど、作った夕食は千景がベッドまで持って来てくれた。
「もうっ!一回で止まってよ!あ、美味しく出来てる。…何笑ってんのっ?!」
こんな事は日常的にある事で、僕らの生活もなかなか爛れている。
・・・・
撮影日の当時になった。
「お母さん、お義父さん、おめでとうございます。2人とも素敵です。…って、何で僕まで…。スーツで良かったのに…。」
「何言ってんの!お洒落しなきゃ!わぁ都希似合うわねー。」
お母さんは白いウエディングのワンピース。
「都希くん素敵だよ。」
お父さんは黒のタキシード。
「ねぇ、僕は何で白のタキシードなの?」
「あなた黒い洋服ばっか着るけど、白も似合うからよ。」
「はぁ…そうなのね。わかった…。」
今日のこの日をお母さんもお義父さんもとても楽しみにしている様だったから、以前の僕なら一ミリも気に留めなかった『親孝行』もかねて本日も言いなりになっている。母親が僕を置いて出て行った悲しい過去は変わり様は無い。だけど、千景から聞いたお母さんの話しで少しは歩み寄る事はして行こうと思える様になった。いつまでも過去に囚われない為に。
・・・・
「お母さんは、後はサッとヘアメイクしてもらうだけだから、都希は先に会場に行っててね。」
「うん、わかった。」
「とっても素敵な場所だから正面から入ってみて〜。」
「うん。」
控室を出ると式場の方に案内されて会場入り口の前まで来た。
結婚式には行った事が無かった。それに身内枠で式場に来る事になるとは思っても居なかったから、全てが物珍しい。愛を誓う場所。相手が僕じゃ無かったら千景だって…。少し心が痛んだ。
「こちらからどうぞ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
案内係の方に促されチャペルの扉を開いた。ゆっくり中に入ると、視線の先に同じく白タキシード姿の千景が立っていた。
「え?何?何でいるの?!」
「ははっ、驚いた?都希、隣まで来て。」
急な出来事に頭が混乱していると千景が歩いて来て、僕の手を掴んで歩き出した。
「え?千景も写真撮影に呼ばれてたの?」
「いや、呼ばれて無い。俺がお母さんとお義父さんを呼んでたんだよ。」
「???」
「今日は俺たちの結婚式だから。」
チャペルに入る直前に思った罪悪感が一気に何処かへ行ってしまった。
「けっ、こんしき?僕たちの?」
千景と向かい合って立つ。その手には向日葵の花束が抱えられていた。
「はい、都希、この花束受け取って。この向日葵は11本あって、花言葉は『最愛』これが俺の今の気持ちと、これからの気持ち。」
驚き過ぎて言葉が出ない。言われるまま花束を受け取ると千景がクスクス笑っている。
「鳩が豆鉄砲食らった顔の見本みたいになってるぞ。でもここからが本題だから。」
「へ?」
そう言うと、千景が僕の目の前に片膝をついた。
「東都希さん、俺と結婚して下さい。」
これは夢なのかな?何が起きたんだろ?
膝をついて指輪を差し出す千景の笑顔が涙でぼやけた。
「返事は?もしかしてダメだったのか?」
「違う…ダメなわけないじゃ無い。嬉しい。…はい。もちろん。」
返事と同時に、花束ごと立ち上がった千景に抱きしめられた。
中指のペアリングはそのまま、新しいお揃いは薬指に付けた。僕の薬指に指輪を付ける間、千景は泣き過ぎて、空いている僕の右手で何度も涙を拭いてあげた。やっぱり千景は泣き虫だ。
お互いの指輪を付け終わり、気付くと泣いているお母さんと、笑顔のお義父さんも、式場のスタッフの方達と並んで祝福してくれていた。
千景のサプライズは大成功だった。
・・・・
自宅へ帰り、並んで温かい飲み物を飲みながら今日の写真を一緒に眺めた。
「素敵な写真が撮れて良かったな。」
「うん、僕、顔ブスじゃない?泣き過ぎたし。」
「そんな事無いよ!俺もめちゃくちゃ泣いたし!」
「楽しかったね。」
「そうだな。」
「これからもずっと一緒に居ようね。」
「当たり前だろ。」
ドラマや物語の中で言うところの、世間的に当たり前な日常が昔の僕にはものすごく非現実的で、空想の中のお話しみたいだった。過去を振り返って辛い気持ちになったりもする。でもそれってきっと僕にとっては必要な事で、醜い自分も全部自分だから。醜い自分ごと少しずつ大切にして行ける気がする。
僕の隣には千景がいるからもう寂しくないよ。これからは君の隣で、僕と千景の左手の薬指に光るこの指輪と一緒に、過去の時間ごと抱きしめて生きていきたい。そう、心から思う。
おわり