テラーノベル
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貴方が死んで
世界中の人の記憶から貴方が消えて
私だけが貴方を覚えていて
私が死んだら貴方も消える
幸せだ
なんて幸せなんだ
こんな幸せ
あってはいけないんだ
「日森さん、この資料のコピーお願い」
転職したばかりで慣れない作業が多い中、常に人手不足なので次から次えと仕事が入ってくる。
ひとつを覚える前にふたつ入ってくる
「お疲れ様ー、うわっ、酷い顔!最近寝てるー?」
「いや、残業ばかりでろくに」
「ランチ行こ!たまには息抜きも大切でしょ!」
「ランチくらいしか息抜きがない私たちって、なんて悲しいんでしょう」
2024年、6月9日先輩の斉藤さんとランチをしに少し栄えた街を歩いていた。
私が住んでいる場所は都会から離れた港町で、待ちと言っても、飲食店が4店舗と、ユニクロと百均、古いスナックが2件と公民館があるだけだ。でもこっちの方ではいちばん栄えてる。でも、空気が澄んでいて緑が多いいい場所だ。
「お腹すいたぁどこにする?」
「いつもの場所でいいんじゃない?」
街のいちばん端にある、食事処中山。店主の兄が漁業をやっているらしく、仕入れられた魚はどれも新鮮で、脂が乗っていて美味しい。
「日森ちゃん、斉藤さん、いらっしゃーい!いつものでいいかな?」
「あ、あたしはアジフライ定食!」
よく行く店なのでもういつも食べてるランチも覚えられてる。まあ、狭い島なのでどこもそんな感じだけど。生暖かいお手拭きで手を吹いていると、店の扉が開いた。
「こんにちはー、お、ひもっちゃん!さいちゃん!こんちゃーす!ほれ、竜二も挨拶せんかい!」
元気よく、変なあだ名を呼んできたのは漁師の下澤さん。下澤さんと、その後ろにいるのはお弟子さんの羽賀竜二くん。
「一緒に食べましょうよー!下澤さん、お隣どうぞっ!」斉藤さんの声が急に高くなる。斉藤さんは下澤さんに好意があるらしい。下澤さんはバツイチで、今恋人等はいない。
海がこれの恋人だ!と抜かしている変な人だ。
「日森さん、隣、いいですか?」
「いいですよ。」
下を向きながら話しかけてきた羽賀くんに許可を出し、隣に座る。
頼りなさそうに見える彼だが、身長は180ありかなり大きい、優しい顔に反して体つきはがっちりしており、筋肉がすごい。
「日森さんは、何にしましたか?」
「私は刺身盛りです」
「じゃ、じゃあ僕も同じのにしようかな」
彼が私に好意があることはずっと前に下澤さんから聞いている。だけど、私が彼と付き合うことは無いだろう。
私には忘れられない人がいる。
私の人生を変えた
私自身を変えた
あの人がいる
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