テラーノベル
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いつのことだったろうか。
思い出せない…いや、思い出したくないのだろう
俺には幼馴染がいた。
白石 紗月と言う名前だったな。
俺の初恋の人。
とは言ってもいつも一緒にいるのに、決定的な言葉だけがない関係だったからほぼ結ばれていたのだけど。
夏祭りのポスター、毎年の恒例行事。
「花火ってさ、終わるって分かってるから、ちゃんと見ようって思えるんだよね」
「まあそう言うもんだろうな」
「面白くない〜だから彼女できないんだよ」
「うっ…うるさいなぁ」
「ねえねえ、今年の花火も一緒に行く?」
「行くに決まってるだろ」
毎年の恒例行事だったから聞いてくるのが不思議だった。
今日、あいつは学校を休んだ。
もう一週間になる。
電話をしても、反応はない。
あいつのことだから元気だろう、とは思う。
でもなぜだろう。胸騒ぎがするのは。
いつもと変わらない日々。
なのになぜなのだろうか
祖母が入院をしているのでお見舞いに来た。
なのになんであいつがいる…?
「なんでお前がいるんだよ」
「牡蠣食ってあたっちゃったから」
はぐらかされた
絶対何かあるのに
「本当のこと言えよ」
「本当だって」
その時俺の目に入ったのは机の上に置いてある「心臓の病気のすすめ」という冊子だった
「お前…これ…」
「あーバレちゃったか」
「実は、余命宣告受けちゃったの」
「え…」
当たり前が崩れる感覚。
それまで信じていた「明日」が、音もなく消える。
そんなものを、俺は初めて知った。
今まで関係が崩れるのが怖くて告白しなかったことを後悔した。
その後の話は覚えていない。
ただ一つ、花火大会にだけは絶対行きたい、ということだけが耳に残った
花火大会の日、彼女はとても可愛かった
花火が上がる直前
俺は意外と冷静だった
「好きだ。
ずっと前から。
それだけは、消えないから」
彼女は少し困ったように笑って、こう返す。
「知ってたよ。
私もだから」
花火が打ち上がる。
二人は手を繋ぐが、キスも約束もない。
一瞬でいい、永遠みたいな時間。
何年が経ったのだろう
俺は一人で、同じ場所の花火大会に来ている。
周囲は恋人や家族ばかり。
俺だけが立ち止まり、夜空を見上げる。
彼女は未来はくれなかったが、今の大切さを教えてくれた、
最後の一発の花火が消え、暗闇が戻る。
まだ心には花火の残像が残っているようだ
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