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送られて到着した元の家には誰も住んでいなかった。
「|お母さん《あの女》も逃げ出したのね」
和香那はまた、クスクスと笑う。
「本田さん?家、ないの」
空き部屋になったマンションのドアの前で
ここまで送ってきた湯島に声をかけられ
「ね、困ったわ。そうみたいなの」
「な、なら!僕の家に住めばいいよ。部屋ひとつ空けるから」
必死な湯島の提案を和香那はまた素直に受け入れた。
湯島は、本田和香那に心酔していた。
それは、彼女にインタビューを行った時だった。
その清らかで美しい外側の笑みに惹かれていた。
だけど、彼女が長年つきあってきた友人を地獄に落としたきっかけをインタビューの中で知り、彼女の深い執念と欲望が
子供の頃の些細な怒りから生まれたものだと知った。
その歪みが、湯島にとっては魅惑的だった。
彼はあらゆる人間をインタビューして
記事を書き上げてきたが
犯罪者には『そうしてしまった』出来事で納得してしまうそれなりの理由がある。
深い恨み。妬み。自身の崩壊。家庭環境。
和香那はそういったものが特になく、理由が酷く薄っぺらい。
それは、彼女自身に備わった
ただの承認欲求という純粋な欲望なだけ。
純粋な欲望は、いつも渇いている。
なかなか満たされない。
ならば、俺が満たしてやりたい。
湯島の描く理想は
かつて、雅弥が和香那に与えたものだと
彼は知らなかった。