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ー『甘ちゃん、お花畑がみたいな。』琥珀が言った。
お花畑か…
予想はなんとなくできるけど、よくわからないな。
『どこにあるのかわかるのか?』
『わかんないけど、みたいの。』
琥珀は、即答で言った。
『じゃ、探すしかないな。』
倉庫を出て、歩く。
琥珀が、横に並ぶ。
今は、夏休みだ。
そこら辺を歩いていれば、見つかるだろう。
そう思っていた。
『これならどう?』
畑ではないけど、
クローバーとたんぽぽの花がたくさん咲いている…
『これは、お花畑じゃないよぉ…』
思っていたより、見つけられなかった。
『お花畑ってなんだよ。俺は知らないぞ?』
やっぱり、お花畑とやらは知らない。
『前に、テレビで見たの。お花さんが、たっくさん咲いてたの。』
テレビって…
『本当に、ここら辺にあるのかそれ?』
『わかんない…』
『おい!』
本当に、見つけられるだろうか…
なんか嫌な予感がする…
『……ゃん』
暑いよ…
帰りたい…
『…ちゃん!』
誰かが名前を呼んでいる。
『甘ちゃん、ボーッとしてるの?』
琥珀が顔を覗かせている。
『いや、大丈夫…』
『見て、ねこちゃん!』
琥珀が指を差す方に猫がいる。
真っ白な毛に、黄色い目をした猫だった。
『かわいい!』
琥珀が猫の方へ走る。
琥珀は元気そうだな…
猫は草むらに逃げ込む。
『あ、行っちゃった…』
落ち込んでいる。
『猫は警戒心が強いからな、』
俺が言う。
そんなことはいいから、早く行こうよ…
『甘ちゃんは触らせてくれるのにな…』
さらっと恥ずかしいことを言う。
『別に!触らせてないぞ!』
俺は琥珀にデコピンをお見舞いする。
『ひぎゃっ、』
琥珀は目をぎゅっと閉じて、おでこを抑えてう〜と唸っている。
・・・
『行くぞ、』
琥珀の手を握り、引っ張る。
そして歩く。
と、
遠くに人影が見える。
浴衣を着た女がいる。
こっちには行かない方がいいだろう。
俺は別の場所に琥珀を引っ張ろうとする。
だが、琥珀は動かない。
『いいな、浴衣…祭りに行ってみたい…』
小さな声で言う。
無理だろう。
行っても追い出されて嫌な思いをするだけ。
『祭りなんて、人が多いだけで楽しくなんてない。花を見てた方が何倍もマシだ。ほらいくぞ!』
琥珀の手を強引に引っ張る。
琥珀さんは残念そうだった。
俺だって、祭りには行きたい。
でも、無理なんだ。
それよりも、今は、
色々探す。
でもお花畑と言える場所はなかなか見つからない。
と、
1つ、古びた建物が見える。
人気はない。
シャッターが閉められており、手前にガチャガチャがある。
機械に水ヨーヨーのようなものが写っている紙が貼られている。
近づいてみる。
中には1つだけ、カプセルがある。
値段は200円。
たけぇ、
俺たちにそんなお金はない。
でも、琥珀さんは目を輝かせて見ている。
『これ何?』
『ガチャガチャだ。中には祭りであるらしい水ヨーヨー型のおもちゃが入っているみたいだな。』
ポケットに、自販機の下で拾った100円玉が2枚ちょうどある。
そういえばそうだったな。
このお金で美味しいものでも買おうと思っていた。
でも、弁当屋で美味しいものが食べられる。
それに、
お店だと、何も買わせてはくれないだろう。
琥珀はまだガチャガチャを見ている。
仕方ない。
俺はガチャガチャの機械にお金を入れる。
『ほら、そこのハンドルを回せば出てくる。』
多分だけど…
俺はハンドルを指差す。
琥珀はこちらを見つめている。
『え?』
琥珀がずっと見つめたまま動かないので、俺は琥珀の手をとり、ハンドルを一緒に回す。
ガラガラと音がした後、下からカプセルが出てくる。
と、同時に売り切れの表示が出てくる。
俺は琥珀の手を掴んだまま下に落ちたカプセルを取る。
琥珀にカプセルを握らせたまま、俺は手を離す。
『開けてみろよ。』
琥珀は呆然とカプセルを見る。
そして、カプセルを開けようとする。
『開かない…』
琥珀は悲しそうだった。
『ったく、貸せ。』
琥珀がカプセルを渡す。
周りのテープを剥がし、カプセルを開ける。
『ほら』
と、琥珀に渡す。
琥珀がカプセルから中に入っていた水ヨーヨー型のおもちゃを取り出す。
赤い金魚などが描かれた黄色いヨーヨー。
『かわいい、』
琥珀はそのヨーヨーを見ている。
『よかったな、』
『うん!』
琥珀は嬉しそうに笑顔を見せる。
そして、また歩く。
ずいぶん遠くまで来た気がする。
まぁ、お花畑とやらがなくても、
こういうのも悪くはない。
と、
『あれは…』
あそこも畑だろう場所に、
ピンクや紫、白などの色をした何かがある。
まさか、
近づいてみる。
『あ…』
そこに、遠くまで広がる花の畑が。
『わぁー、きれい!』
隣で琥珀が花を見ている。
俺も、花を見る。
これが、お花畑…か。
本当にあった。
いろんな色の花が咲いている。
いろんな種類の蝶が飛んでいる。
…とは言っても、まだまだ緑が目立つ。
これから、どんどん咲き始めるってところかな。
琥珀がお花畑に向けて歩く。
俺もついて行こうと、歩こうとした。
『君たちも、人狼…なの?』
『え?』
声が聞こえた。
人狼…
ここにも、人がいたんだな…
あれ?
も?
俺は、振り返った。
と、
銀色の髪に、青い目をした女の子がいた。
⁉︎
人狼…
『君は…』
俺とそれほど年齢は変わらないだろう子、もしかしたら同じかもしれない。
『私には、名前はないの。』
『・・・』
また、人狼と出会うとは思わなかった。
『俺は、今は銅.甘って名乗ってる。この名前は、あの子がつけたんだ。』
琥珀の方を指差す。
『あの子がつけたの?なら、銅さんはあの子に名前をつけたの?』
っ…
『ち、違う…』
『銅.琥珀だよ。甘ちゃんがつけてくれたんだよ?』
『な!』
すぐ後ろに琥珀がいた。
『ふふふ、2人は家族なんだね。羨ましいなぁ。』
『違うぞ。』
苗字を一緒にしたら家族だと思うよな…
でも違う。
『友達だ。』
『2人は仲良しさんなんだ。』
仲は、いいのだろうか。
『2人は、お友達なの?』
琥珀が訊いてきた。
『いいえ、さっき初めて会ったばかりだよ?』
女の子が言った。
『ならお友達、なろ?』
『いいの?』
『うん!』
2人が、友達になったようだ。
『甘さんも、友達?』
『…なってもいいけど、そんなに会えるわけじゃないんじゃないか?』
この女の子は、別の学校に通っているはず。
まぁ、そこまで言うほどは遠くないけど。
『それほど会えなくても、友達は多い方がいいと思うの。まぁ、友達は初めてだけど。』
そうか、
この女の子も、複数の傷があった。
でも、1人なんだ。
人狼は、それほど多くない。
だから、友達ができるだけでも嬉しいのだろう。
『ここのお花畑、綺麗でしょ?私、ここがお気に入りなの。』
お花畑は、確かに綺麗だ。
『凄くきれい!お花かわいい!』
琥珀は、嬉しそうだ。
『11月ごろくらいまで見れると思うよ。』
そうか、
お花畑を見る。
本当に、綺麗だな。
『この花は、なんだろう。』
わからない。
初めて見た気がする。
『この花は、コスモスだよ。他にも、オレンジ色のコスモスもあるんだよ。』
こすもす…
どこかで聞いたような…
これが、コスモスなのか。
植物。
見ているだけでも、癒される。
コスモスを、しばらく見ていた。
『私、あっちも見てくる!』
琥珀が、向こうまで走って行った。
『気をつけろよ!』
危なっかしいやつだからな。
『いいなぁ、琥珀ちゃんばっかり、』
?
『何がだ?』
『私にも、名前をつけてくれないかな…』
女の子が言った。
『名前、そんな簡単にはつけられないよ。』
琥珀と同様に、時間が欲しい。
『なんでもいいの、コスモスでも…』
『・・・』
今、考えるべきだろうか。
思いつくものなんて…
『瑠璃[ルリ]?』
確か、テレビで出ていたような…
琥珀と一緒に、あの番組で出てきていた。
『瑠璃?』
『ラピスラズリ?って言う青い宝石の、和名?』
よくわかっていないけど、確かそんな感じだった気がする。
『宝石…私に、似合うかな?』
実物はよくわからないけど、確か青かった。
女の子の目のように。
あ、
『似合ってるとは思う。でも、その目が嫌いならやめといた方がいいか。』
つい、自分の悪いところが出てしまった。
この女の子が、琥珀の時みたいに気に入るとは限らない。
でも、
『瑠璃がいいな。私の名前は瑠璃。名前をつけてくれてありがとう。』
瑠璃でいいのか。
瑠璃は、笑顔だった。
その後はコスモスを見て、
『また会おうね。』
瑠璃と別れて帰る。
『お友達、増えたね。』
『あぁ、そうだな。』
友達。
また、友達ができるとは思わなかった。
親が亡くなってからずっと、1人だと思っていた。
友達なんて、できないと思っていた。
でも、2人もできた。
と、
あ、あれは…
オレンジ色の、コスモスだ。
行きは気にしてなかったけど、こんなところにあったんだ。
オレンジ色のコスモスも綺麗だ。
色々見ながら、倉庫に帰る。ー
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