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とある曲に影響を受けました
曲パロです
付き合ってないけどお互い重い感情がある🤍🩷
※プリ小説にも同じものをあげています
「じゅうたろ、朝だよ」
ね、起きて。と上から聞き慣れた声が降ってくる。
まだ重い瞼を開ければ、おはようとはやちゃんが笑った。
昨日は何をしていたっけ、
頭がぼやけて鼻が詰まるような感覚がする。
息ができないみたいに苦しかった。
「はやちゃん何時に起きたの」
「んー、今日は仕事だと思って起きたから結構早起き。3時間前とか?」
「えぇ、俺のこと起こしてくれればよかったのに」
「気持ちよさそうに寝てたんだから起こしにくいだろ」
そう言うと俺の横にごろんと寝転がった。
ふわ、と欠伸をするんだから、早起きでまだ眠いんだろう。
寝たら?と聞いたら柔太朗と話したいからいい。と断られた。
はやちゃんって俺のこと好きだよな、なんて自惚れたことを思う。
もちろん他のメンバーのことも好きだと思うけど。俺はメンバーに向ける感情を向けられてる気がしない。
最近はやけに俺に構いに来る。
親鳥を見つけた雛鳥のようについて回って、何か言おうと口を開いてはなんでもない、とへらへら笑って誤魔化す。
昨日も俺の家で飯食わない?なんて言って俺を誘った。
どうしたんだろう、前まではこんなことなかったのに。異常に俺と一緒にいようとしてくるんだ。
聞きたいけど、聞いてしまったら何かが終わってしまうような気がして、口が動かなくなる。
鳥肌が立って、全てが怖くなる。
「………でさぁ、…?聞いてる?」
「ぁ、ごめん。ぼーっとしてた。寝起きだからかな」
「顔洗ってきたら?目覚めるよ」
もう、と呆れたような顔をして笑うはやちゃんはどこか安心してるように見えた。
今日は久しぶりに俺もオフだったのではやちゃんの家でしばらくゆっくりすることにした。
週末に休みなんてラッキーだな、と思う。あんまりいつが休みだったらいいとかは関係ないけど。
トースターを借りてパンを二枚焼く。
少し焦げたけど、その特有の匂いも美味しそうに感じた。
バターを塗って、はやちゃんのところに行けば、スマホを持ちながらぼんやりとテレビに視線を向けていた。
「パン焼けたよ」
「…ありがと」
「………?」
口は動いたけど、視線は向こうを向いている。そんなに何を見ているんだ、と思ってテレビを見る。
映っていたのは、風で荒れた海。
そういえば明日は強風って昨日誰かが言ってた気がする。
こんなに強い風だと帰るの大変かもなぁ。と他人事のように考えた。
でも、そんなに真剣に見るような内容なのかな。
はやちゃんは多分1日中家にいるだろうし。
「風強いね。波すごい」
「……うん……………ねぇ、変なこと言ってもいい?」
「ん?なに?」
やっと目が合う。笑ってるつもりなのかな。
少し顔が引きつっている。
いつもは希望に溢れてキラキラと輝いているきれいな瞳も、なぜな諦めたような目をしていた。
どくり、と心臓が大きく動く。
それはふとした時に、誰も見ていないようなときにする顔で。
「俺ね、柔太朗と死にたい」
カチリと音がして、時計が12を差した。
がたん、と線路の継ぎ目を通る度に電車が揺れる。
すよすよと俺の肩で眠るはやちゃん。
嫌な予感が的中してしまって、心がぐちゃぐちゃだ。終わるんだ。はやちゃんも俺も。
でも、言われたとき、相手が俺で良かったなぁって頭の隅で思った。
死ぬなんてことは人生で一度しかない。それを一緒にする相手に俺を選んでくれたんだ。
なんておかしいな。俺もはやちゃんに仲間としての感情を向けれてなかったのかも。
はやちゃんの顔には隈があって、袖から覗く大きな手は前よりも骨張っていた。
お腹も肋浮いてんのかな。ずっと頑張ってくれてたもんね。疲れたよね。
また、おおきく電車が揺れて止まる。
人がどんどん減っていく。こんな季節に、こんな天気に海に行く人なんて俺たちぐらいだ。終点は俺たちだけかな。
「ん゙ー………、ついた…?」
「まだだよ。あと3駅ぐらい。もうちょい寝たら?」
「や、起きる。もう柔太朗と話すのもさいごだろうしさ」
それなら、じんちゃんたちとも話しとけばよかったのに。と思ったけど喉につっかかって声にはならなかった。
俺たちいなくなったらあいつらに申し訳ないなぁって悲しそうな顔をしていた。
そうだよ、はやちゃん。今からでもまだ間に合うよ。
でも、はやちゃんはそんな軽い理由でこの選択を選んだわけじゃないから。
止めてどうにかなるようなことじゃない。
膝を抱えている手に触れたら、目を見開いたけど、すぐに細めて笑った。
「じゅう、俺ら悪い子だね」
「俺を悪い子にしたのははやちゃんでしょ」
「そうだね、俺が柔太朗のこと変えちゃった。えへ、ごめんな」
悪びれもなさそうに言うけど、その声は震えていた。
電車から降りて、改札を通る。
ここからは徒歩で行けるらしい。
風がベタついて少し気持ち悪い。
横を歩くはやちゃんの髪があがって、顔がよく見える。
少し暗い顔をしていたけど、俺の視線に気づいたのか、ぱっと顔を明るくした。
ふと、手が触れ合う。なんだろう、と手を見ると。指を絡められた。
所謂恋人繋ぎ。
「え。なに、してるの」
「なんだろね。恋人ごっこ?」
「なんで、そんなこと、」
「さいごぐらい一番好きな人といたいでしょ?ちょっとだけふざけちゃおうよ」
でもその繋いでいた手はすぐに離されてしまった。
気づかぬうちに海についていた。テレビ越しとは全く比べものにならないほど酷い津波。
でも、そんな光景とは見合わず不自然なほどに晴れた空に奇妙だと思った。
目の前を歩くはやちゃんの背中がどんどん遠くなっていく。
家を出てからどれぐらい経ったのだろうか。太陽は半分海に浸かっていた。
二人きりの俺たちを見ている。
さいごぐらい誰にも見られたくなかった。太陽が聞いていても意味のないことを思った。
ぴたり、と足が止まった。顔だけ振り返って、俺をまっすぐ見る。
きれいでまっくろな瞳には間抜けな顔をした俺が映っている。
「みんな、今何してるかな?」
「…ぇ、撮影とか、ご飯食べたりとかしてるんじゃない」
「……柔太朗も、みんなと一緒にご飯食べたら。みんな、待ってるよ。柔太朗のこと」
なんだ。急に。何が言いたいの?
はやちゃんのことも待ってるでしょ。ここまで引っ張ってきてくれたのははやちゃんなんだから。
ぐるぐるもいろんな言葉が出てくるけど、なんて言えばいいかわからない。こんなところで俺の悪いところがでてしまう。
「お前は死ななくていいよ。俺のわがままに付き合ってくれてありがとね」
なに。なんで。柔太朗と一緒に死にたいって言ったのははやちゃんでしょ。
なんでそんな悲しそうな顔するの。やめてよ。
電車の中で言った言葉と同じとは思えないほど掠れた声でごめんな、と謝った。
靴を脱いで、靴下を脱いで。裸足になった足で海へと行くその体が、もう、届かなくなりそうになる。
急いでその手を掴む。
「はやちゃん……なんで置いてくの。一緒に終わらせよう?」
「お前こんなときに優しい性格なの発揮しなくていいって……柔太朗はもう帰りな」
「ねえ、俺本気だよ?俺たち恋人なんでしょ。恋人同士で心中はテンプレだよね?」
そう言い、俺も靴と靴下を脱いだ。
海に攫わられそうになるその手を強く握って離れないようにした。
「……まだ恋人ごっこ続いてんの?」
「は、はやちゃんが先に言ったんでしょ?」
「へへ、そうだね。俺、いい彼氏もったかも」
じゃあ、一緒にいいしゅうまつにしよっか。ってはにかみながらはやちゃんは言った。
ざぶ、とオレンジと青が混ざった液体に足を入れる。小さい波が俺たちを追い出そうとしてくる。
ふと、はやちゃんがまえ話していたことを思い出した。
神様なんていないって。
中二病みたいなことを言い出すからびっくりしたけど、多分そんなふざけたことじゃなかったんだな。あぁ、俺は気づくのが遅すぎた。いつもはすぐに気づけてたはずなのに。
腰まで水に浸かった。足が重くなり、うまく動かせない。
「結構歩いたかな。柔太朗ちょっと横来て」
「うん、わかった」
手を握られた。
なんだか、結婚式みたいだ。二人だけの結婚式なんてなかなかないと思うけど。
嘘の結婚式。太陽だけが俺らを見て、海が包んでいる。
でも、来週には葬式に変わっちゃうかな?
そう聞けば、そうじゃないかなぁって楽しそうに言われた。
「俺たちの葬式に意味なんてあるかな、悪い奴と、それに賛同した奴に。」
「どうだろ、でも天国に行けたらいいね」
「………うん、そうだね。天国、あるといいね」
天国があるかもわからないのに、こんなこと言って。死んでも幸せになろうとしてるんだよ。そんなやつは天国じゃなくて地獄行きだろうね。
馬鹿みたいな考えしか頭に浮かばないし、口もうまくまわらない。
海が思ったよりも冷たいせいで、溺死じゃなくて凍死しそうだ。
はやちゃんも顔色が悪い。俺も同じ顔色なのだろうか。
ゆっくり近付いてその冷たい体を抱きしめる。
「なぁに、じゅう。また恋人ごっこ?」
「んーん。恋人同士で心中、しかも水死体で見つかるんだなーって思って」
「ぎゅーする理由になってねーよ」
背中を強めに叩かれる。ちょっと、と怒るとけらけらと嬉しそうに笑った。
さいごなのにね。
「でもさ、なんか映画みたいでしょ。恋人で心中」
「んー、誰か見てくれるかな?」
「みんな途中で飽きてさいごまで見てくれないよ」
さいごなんて誰も知らなくていいよ。
太陽が沈んで、暗い闇が俺たちを包んだ。