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キーボードを打つ音が、静かにヘッドセット越しに聞こえてくる。たまに排気音が混ざって、一定のリズムを刻む。俺も自分の手元のレポートに集中しながら、彼の作業音が心地よく響くこの静けさに浸っていた。
大学のレポートを書くのは面倒やけど、こうやって誰かと一緒に作業してると、なんとなく気が楽になるもんやな。無言が続いてるけど、それが全然不自然じゃなくて、むしろこのくらいがちょうどいい。
「なあ、お前の方はどんな感じや?」
ふと、声をかけたくなる。特に理由はないけど、話しかけないといけない気もして。
「あともうちょっとで終わりそう。紅茶さんは?」
相変わらず落ち着いた声が返ってくる。あんまり焦ったりもしないで、淡々としてるところが、こいつらしい。
「俺も似たような感じやな。もうちょい詰めたら終わるとこ」
言いながらキーボードを叩き続ける。二人とも黙々とやってるけど、それが何となく安心できる。
しばらくして、またウマヅラハギのキーボードの排気音が聞こえてきて、部屋の雑音と一緒に耳に入ってくる。その音が静けさの中で妙に落ち着くウマヅラハギの排気音がシャットアウトして、再びキーボードのタイプ音だけが通話越しに響く。俺は自分のレポートに目を戻す。テーマはめんどくさいやつやけど、締め切りが迫ってるから手を止めるわけにはいかん。ページに目を走らせながら、ふと頭の中が空っぽになる瞬間があった。
ウマヅラハギも同じように集中してるんやろうけど、たまにカチャカチャと軽くリズムを刻む音だけが耳に入ってくる。それが不思議と落ち着く。この沈黙がなんとも心地いい。無理に会話を続けなくても、お互いの存在を感じられるのがええんやろうか。
「…そっち、結構進んだんか?」
またふと声をかけてみる。少しでもウマヅラハギの進捗を確認するのと、ついでに自分のやる気を保つために。
「うん、あともう少し。書き終わったら見てもらってもいい?」
彼の返事は短いけど、ちゃんと集中してるのが伝わってくる。
「ええで。俺もあとちょいで終わりそうやから、その時に見せて」
そう返して、再びレポートに集中する。ウマヅラハギが何かを求めてくるのは珍しいけど、だからこそ少しでも役に立ちたいと思う。
キーボードの音と時折聞こえる雑音、そしてこの無言の時間がまた戻ってくる。なんてことないやりとりでも、こうやって一緒に作業するだけで、やっぱりちょっとだけ気が楽になる。