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会えなかった日から、紙のやり取りが少し減った。無くなったわけじゃない。ただ、前より間が空くようになった。
『最近図書室来てる?』
そう書かれた紙を見て、来てるから今ここにいるんだけど、と思う。
『来てる』
短く返して、本を閉じた。
何かがおかしい、と強く思った訳じゃないただ、気になった。
相手は同じ学校のはずなのに、名前を一度も聞いたことがない。
--いや正確には。
名前だけは、一度聞いたことがあった。
だから調べてみることにした。
図書室の名簿は古いものから新しいものまで並んでいる。その名前を、上から順に追っていった。
どこにもなかった。
見落としたかと思い、もう一度見る。
それでもなかった。
じゃああの紙を書いていたのは誰だったんだろう。そう思って本を開いた。あることに気づいた。
文字が似ている、というより、同じだった
力の入れ方も、はね方も。本を閉じて、息を吐く。
あぁまたか、こういうのたしか
多重人格って言うんだっけ。
その日の帰り道、特別な気分にはならなかった。
怖くもなかったし
驚きもしなかった。
理由がわかっただけだ。
最後の紙が、本に挟まっていた。
『ねぇ』
『君って一人でも平気?』
少し考えてから、書く。
『前よりは』
翌日返事はなかった。それ以来、紙は増えなくなった。本を開いても白いページがあるだけだ。
図書室は、相変わらず静かだった。