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もうこんなんさぁ、、、青春の限界突破ですょ、、、
あぁぁ....青春だ〜😭
ありがとうございます最高すぎて悶えた…知ってましたけどやっぱり文章書く天才ですね…
ふわぐさ学パロ、こんな青春したいですね。
クソ長いです、6300文字。
「あっっぢぃ……、、」
黒いアスファルトに、真夏の太陽がジリジリと照りつける。
ちら、と目を移せば、左手には木造の家屋が建ち並び、右手には絵の具をぶちまけたみたいに碧い海が光っている。絵に描いたような田舎の風景。
高校2年生の夏、嘘みたいに暑い帰り道をひとりで歩く。
眩しすぎる光に目を細め、青い青い、空を見上げた。
「……うざいなぁ、、」
嫌味なくらいに降り注ぐ陽光は、翳した指の隙間からサラサラと零れ落ちるようだった。
「あきなーーーっっ!!!」
しばらく歩いた頃だろうか、聴き慣れた朗らかな声が耳に届いた。
熱すぎる太陽を遮るためにブレザーを頭に被せていたせいで、どちらから声がしたのか一瞬分からなかった。
が、次の瞬間……、
「どーーーんっ!」
バカ丸出しのセルフ効果音と共に、背中に何かが直撃した。ある程度加減されているから、痛くはないけれど……、
「……ふわっち、いつも飛びついてくんなって言ってんでしょ……、、」
「あっ、やっぱりあきなだった!」
ブレザーの隙間から、文字通り、太陽みたいに眩しい笑顔が覗いた。
よく目立つ銀色の髪、紫と、そこに映えるネオンピンクのメッシュ。
そして、整った顔立ちから鮮やかに発される関西弁。
同じクラスの、不破湊。
「やっぱり……って、俺じゃなかったらどうするつもりだったの。」
「ん〜?そんときはそんときやろ、!」
そんときはそんとき、まさにその言葉を体現するような男だ。
彼は俺が中学2年生の時に、こちらに引っ越してきた。転校初日から学ランは着崩し、派手な髪の隙間からはちらりと見えるピアス。おまけにあの関西弁。
田舎の中坊どもを湧かせるには、もってこいの問題児だった。
……いや、中坊どころか町中の特ダネ。色んな人に色んなことを好き勝手騒がれてた。
俺の隣の家のおばさんには、不良とは付き合うなってよく言われたっけ。
でも、それはさほど問題にならなかった。
困っている人がいれば助け、町の人に会えば明るい笑顔で挨拶する。
裏表のない彼の態度に、みんな『不良』なんてレッテルは忘れ、比喩ではなく、今は町中に可愛がられている。
そんな彼が、何故俺の隣を歩いているのか。それは転校してきて間も無くのこと……、
「ねー、大阪ってどんな感じ?」
「やっぱりでっかいビルとかあるの?」
「え、ピアス自分で開けたの!?勇気あるね……、」
またやってる……。
不破湊、が転校してきて1週間。初めはみんな近寄り難そうにしていたけど、時間が経てばそんな感情も忘れる。男も女も寄ってたかって大盛り上がり。
さすが大阪出身、と言ったところか。話も面白いし弁が立つ。外交的な性格だし、なにより……、
誰であろうと、きっと二度見してしまうほど綺麗な顔。イケメン、というよりは美人。
気を抜くと思わず見惚れてしまいそうになる。かく言う俺も、初見の感想はそれしかなかった。
「んは、そんなに痛くないで、やってあげよっか?」
「やだ、怖いよ、!」
田舎の中学校にそんな奴が突然現れたら、そりゃあみんな話したくもなるよな。別にそれは結構。だけどさ、
「……どいて、そこ俺の席。」
なんで俺の隣なわけ?
「あぇ、ごめんな間違えたわ!」
「……。」
申し訳なさそうに笑う君とは目も合わせず、退かれた席に静かに座った。
転校生に靡かない。そんな俺の態度に、少しだけ周りの奴らの反感を買っていたことは、自覚していた。
「は、?ちょっと、言い方キツくない?」
「転校生なんだからもっと優しくしてあげなよ。」
いくらでも言えミーハーども、間違える方が悪い。
何も返さない俺を見て、取り巻き達は呆れた様子でコソコソと愚痴を吐いている。
「なにあれ、自分はお前らとは違うんだよ、的な?」
「馴れ合わない気なのかな、感じ悪。」
聞こえてる……というかわざと聞こえるように言われている。やることが幼稚だ。
そうこうしているうちに始業のチャイムがなり、囲っていた奴らはワラワラと散っていった。
(だる……、)
1限は言語文化、既に逃げ出したい気分だ。理解できない古文が頭に入っては流れていく、つくづく無駄な時間。
窓側の、いちばん後ろ。アニメみたいな理想の席だけど、隣があの転校生くんじゃテンションも上がらない。
(どうせなら可愛い女の子が良かったな……。)
なんて、窓の外を眺めながらぼーっと考えていた。その時、
トントン
肩を、叩かれた。
先生によそ見しているのがバレたのかと、ギョッとして後ろを振り向くと……、
「なぁ、今何行目ぇ?」
面白いくらいにわかりやすく右側だけが乱れた髪の毛と、溶けかけたような目の隣人。
(こいつ、寝てたな……、)
やっぱ不良だ、問題児だ。なんでこんな奴が隣なんだまったく。
……それでも、流石にこの状況で教えないわけにはいかない。
気づかれないくらいの小さなため息をついて、渋々自分の教科書を指差して言った。
「ここ、16行目。」
「あ、ありがとぉ、」
にへ、と、お礼と一緒に緩んだ笑顔を向けられた。
なるほど、確かにこれはあざとい。
だけど俺は、こういうタイプはきら……、
「じゃあ次、不破くん。ここ訳してくれる?」
「っえ!!??……ッスーー、わかりません。」
(……ふ、聞いてきたくせに分かんないのかよ。)
悪びれもせずに堂々と言う彼に、クラスのみんながくすくすと笑う。
その中で、俺も無意識に笑みが溢れた。
………は、?
学校でも無愛想な俺が、たったこれだけのくだらない事で、自分でも無意識に笑いが出た。
その事に心底驚いた。
そして、なんか悔しい。
「じゃあ隣の三枝くん。」
「あ、はい、_____…、、」
「はい、そうですね。」
……いや、くだらない事に笑っている場合じゃない。今のは少し危なかったぞ。
(ふーーー、)
気合いを入れ、ペンを持ち直した。
お昼休み、いつもひとりで屋上で食べる。別に友達がいないわけではない。ただひとりの時間が好きなだけ、特にお昼は。
屋上と言っても、人はいない。みんなが使う、西校舎と東校舎のものではないからだ。
南校舎、本校舎とは少し離れているが、唯一、海が綺麗に見える場所。
ここは俺の特等席、誰も邪魔しない。俺みたいな陰キャにはお似合いの場所。
「はぁーーー、早く出たいな、こんな町。」
でかい独り言を言っても、誰にも聞かれない。誰にも……、
「あ、やっと見つけたぁ!」
……誰にも聞こえない、誰もいないはず。なのになんで、
キィ、と錆びれたドアが軋む。
開いた先には、少し汗ばんだシャツの腕を捲ったあの転校生が、息を切らして立っていた。
こんな展開、俺は望んでない。まるで漫画じゃないか。
「……なんでここにいるの。」
そう聞くしかないだろ?
なんでわざわざこんなところに足を運んでいるんだ、こいつは。
「いやぁ、追手巻くの大変だったんよぉ?嬉しいんやけど、ずっと一緒ってのはちょっとなぁ…、」
「質問に答えて、」
「……う〜〜ん、」
わざとらしく考えるポーズをとって、そのまま停止している。めんどくさ……、
しばらくして、ぱっと顔を上げて、ご丁寧に思いついたポーズまで付けてくれた。早く答えろよ。
「……君に逢いたかったから、かな?」
……、
……は?
「は?」
「ええっ!?反応冷たいなぁ、!」
何言ってんだこいつ、揶揄うのも良い加減にしてほしい。
「でも嘘じゃないよ、俺、君と話したかったんよね。」
「クラスのアイドル様が、わざわざ俺なんかと?」
「んは、トゲのある言い方やなぁ、」
全く心のこもっていない、乾いた笑いを返される。なんとなく、頭に残る笑い方。
しばらくの沈黙の後、彼は徐に持っていたメロンパンの袋を俺に差し出してきた。
「これ、あげる。」
「え?いや俺は自分のあるから……、」
「あんま腹減ってなくてさ、あげる!」
半ば強引に持たされた、困ったな……。
どうすれば良いか分からなくなった俺は、仕方なくバリ、と袋を開けて、メロンパンを半分に千切った。
千切るのが下手でパンの屑がパラパラと学ランに落ちる。最悪だ。
「……ん、じゃあ半分だけ貰う、君も少しは食べなよ。」
流石に何も食べないのは良くない、横で食べてるこちらが居た堪れなくなる。
ついたパン屑をはたきながら、ため息混じりに返した。
「ぇ、あ、ありがと。」
「いや、お礼言うのはこっちだけど……、」
これ以上、話すこともない。もらったメロンパンを口に運んだ。
風が気持ちいい、とても涼しかった。遠くには、綺麗な三角形の海が見える。
(あ、意外と美味いなこれ。)
転校生は、返されたパンも食べず、海も見ず。ただ、俺の顔をじっと眺めていた。
変な奴……、
「あ、と。そやそや、君の名前なんてーの?」
「……三枝、」
「下の名前も教えてやぁ。」
「…明那、三枝明那。」
「あきな…な。おけ、覚えた、!」
「これからよろしくな、あきな!」
手を差し伸べてくる、眩しいくらいの笑顔で。
そんな顔、無視できないじゃないか。
「まあ、しばらくの間だけ、な。」
それしか言葉が出てこないなんて、俺も素直じゃないな。
「しばらくじゃなくて、ずっと一緒にいようやぁーー!」
「暑い、離れろ。」
それが、不破湊との出会い。
俺は本気で「しばらく」、半年後のクラス替えまでの仲だと思っていた。クラスが替われば、きっと違う人と一緒にいるようになる、だから「ずっと」なんて無理。
なのにこいつは、3年生になってクラスが離れても懲りずに会いにきた。
階すら違うのに……。
「あきなーーー!お昼食べよーーーー!!」
「声でかいよ、抑えて!」
この男、何もしなくても目立つのに、何かする度に目立つ。ついでに隣の俺まで目立つ。
「ほんと、なんで一緒にいるんだろうな、」
なんて、周りから何度言われたことか。
俺にだって分からない。
昼に限らず、毎時限ごとに会いにくる。朝は家まで迎えにくるし、帰りはわざわざ遠回りしてまでついてくる。他に友達いないのか?
いや、いないわけない。男女問わず超人気だし。じゃあなんで……、
「俺があきなのこと好きだから!」
聞いてもそれしか返ってこない、あっけらかんとした笑顔と一緒に。
だから途中から、聞くのはやめた。
それからまた半年後、もう高校に向けての進路を考える時期。
流石に高校は離れるだろう、とたかを括っていたが……、
「なんか、受かっちゃった。」
じゃねぇよ。
俺はクソ真面目な優等生だったし、そこそこ成績も良かった。だから学力には差があると思ってた。それなのに……、
「ん〜、俺成績は散々やからなぁ…、当日点が良かったんかな?」
勉学までやってのけるのかこの美形は。天は物を与えすぎている。
「……ちなみに、勉強はしたの?」
「してない!入試は鉛筆コロコロで乗り切った!」
神よ、人生は不公平だ。
そんなこんなで、腐れ縁。中2の夏から高2の今まで、3年間ずっと一緒にいる。そのうちの高1と高2は同じクラスだなんて、こっちが吃驚する。
「……ふふ、」
「あれ、あきなご機嫌やなぁ。」
あ、今笑い声出てた、?
この3年で、俺もだいぶ変わった。初めは余所者に対しての警戒心しかなかったけれど、今では馬鹿なことで爆笑できるような、所謂「普通の友達」の関係になれた。
「そ、かな?」
「うん!だっていつもなら、暑いから離れろーーって言ってくんのに、」
確かに。こんなクソ暑い日にひっつかれても、何も思わなかった。
「……そういえばふわっち、なんかひんやりしてない?」
「あゃ、バレちゃったか〜〜、」
「実はな、焼け死にそうになったからそこで涼んでた、!」
そう言って、ふわっちが来た方向を指差した。見ると、ちょっと古ぼけた駄菓子屋。
よく言えばレトロ、悪く言えばボロ屋。奥にはザ・駄菓子屋の店主らしいお婆ちゃんが座っているのが見えた。
「あそこ、めっちゃ冷房効いてたんよー!あきなも涼みに行く?」
「あー、子供の頃はよく行ってたけど、俺らもう高校生だし……w」
「えぇ、俺さっき堂々と入ったんやけどぉ、」
「ふわっちは大丈夫でしょ。」
「なに、俺が子供っぽいって??あきなの方がチビのくせに。」
「喧嘩売ってんなら買いますよ。」
なんの中身もない会話。だけどこの時間が、いちばん楽しい。
「あ、じゃあさ、これ!」
「さっき買ってきたアイス、溶けちゃうから今食べよ、!」
「いいの?マジ助かるわ、ありがとぉ」
「あきなこれこれ!パ○コやる!」
久々に懐かしいものを見た。ふわっちからそれを受け取り、パキ、と半分に割った。
「ほい乾杯、」
「かんぱーい!」
アイスを咥えながら歩き出した。
潮風がそよそよと髪を揺らす。陽が落ちてきて、少し涼しい。
ちら、とふわっちの方を見た。相変わらずの整った横顔。
透き通るような白い肌、日焼けも汗も感じない爽やかな。
長いまつ毛は横からだとより強調されて見えた。
少し暗い、夏の夕焼けのような瞳と、奥に見える空が重なる。
きっと映画ができるような1枚だ。
なんて、しばらく目が離せずにいると……、
パチ
「……ん、なぁにそんなに見て、えっち。」
「えっち、、!!?」
不意に目が合い、そんなことを言われてしまった。確かに、ちょっと見過ぎ……?
でも、それも仕方がないじゃないか。
だってこうして見ていないと、いつか君が隣からいなくなってしまうような気がして。
この町よりも、遥か広い世界を知っている君には、ここは窮屈なんじゃないかと、
いつも遠い目をしている、君の手を掴んで離したくない。ずっと一緒にいたい。
(なーんて、)
真夏の夕暮れ、綺麗な赤と紫の空の境界線がぼんやりと浮かんで見えた。
遠い空の下でふたり、他愛もない会話と共に帰路に着く。そんな夏の日、
END?