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誘拐から、一週間が経過した。
あれから、ジンの仲間らしき存在と会うこともなく、情報機器や現在地のあたりもついていない。
とにかく情報が足らないのだ。
情報をかき集めようにも監視の目があるし、まず部屋の位置が悪すぎる。
ジンに「好き勝手に部屋の外を彷徨くなよ」と釘を刺された以上、目に付く行動などできない。
かと言って、このまま何もせず日々を過ごすなどもってのほかだ。
何か、きっかけでも作れれば。
「よぉ。何か考え事か?」
月光に照らされた銀髪が、しっとりと己の肩に影を落とす。
背後にも充分警戒していたはずだが、どうにも深く思考していると疎かになってしまうらしい。
こんなところで自分の悪癖を見つけても、意味はないが。
「……またか」
「ああ。今夜は月が眩しくてしかたねぇ」
「毎回のくせに」
また。毎回。
自分で言っていて嫌になる、「ジンのちょっとしたお遊び」のことだ。
昼はあまり顔を合わせないくせに、夜になるとかならず部屋に訪問してくる。
しかも、ラフな格好できてくつろぐ気満々なのが分かりやすいときた。
「ハ、そんな顔するなよ…ただの遊びだろ?」
嫌な顔を隠しもせず晒していたからか、ジンがゆっくりとこちらに距離を詰めてくる。
嫌な顔を見て喜ぶ顔が、酷く歪んで見えた。
「ッ……」
有無を言わずに、ベッドに体を縫い付けられる。
ああ。また、始まるのか。
どんなに拒絶しようが、今この場を支配しているのは、紛れもなくジン1人だ。
「…ギムレット…」
普段は冷気を纏ったような鋭い目が、溶けるほどの熱を持って欲をアピールする。
ひやり。死人のような冷え切った手のひらに、肩が揺れた。
「つめてぇのは嫌いか?」
「…生憎、冷え性なんだ」
頬を撫でる手つきが嫌にくすぐったいが、わざわざ反応をよこしてやるつもりはない。
シーツを握りしめると、自分の体が熱を持っていることに気付いた。
手のひらが、やけに熱い。
じれったい手の動きに、釣られるように口が開いた。
「……私の体を撫でても、なんの慰めにもならないだろう」
それを口に出した途端、ジンの口角が見覚えのある形に歪められる。
嫌な予感は、突然ふわりと姿を表す。
「その辺の石でも、撫でてりゃ愛着は湧くかもな」
そう言って手首に唇を落としたジンが、一瞬見惚れるほど綺麗に映ってしまった。
すぐに、理性が追いついてその考えを一蹴する。
「…石程度なら、早く捨てろ」
「それはできねぇ相談だな、ギムレット」
いちいち、割れ物を扱うように「勝手に付けた名前」を呼んでくるのが、酷く不快だ。
下から睨み付けると、目を細めて楽しそうに微笑む顔も、何もかもがチグハグだった。
「今日は終いだ」
ベッドを降りたジンが、こちらに振り返って不敵に笑んだ。
あまりに悪魔的で……あまりに、綺麗だった。
扉が閉まった瞬間、枕に顔を埋める。
こんな思考、敵に対して持っていい感情ではない。
忘れろ。捨てろ。
全ては日本のため…そして、あの人のためだ。
必ずやり遂げてみせろ、風見裕也。