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凛玲🍃🎐
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その後のことを少しだけ話そう。
封印された転性魔法で、本当に女になってしまったリオン。
そしてそのリオンから告白をされてしまった俺。
そんな俺たちの関係は……
これまでと変わらず、よき友人関係を続けていた。
いや変わらないわけじゃない。
リオンは自分の気持ちをハッキリと俺に伝え、俺はその気持ちを受け取った。
そして、リオンは女になってしまったわけだから……。
あとは俺の気持ち次第で、恋人になれてしまう。
だけど、それをキッパリと拒否したのは、リオンだった。
あの告白の夜、リオンは俺に告げた。
「僕はアシュレイくんを出し抜きたいわけじゃない。ただスタートラインに立ちたかったんだ」
「アシュレイくんも僕の大切な友達だから」
「これまでどおり友達として、三人で仲良くしたい」
「そのうえで、勝手かもしれないけど、僕のことを、女の子として見てくれると、嬉しい」
リオンの優しさは、痛いくらいにまっすぐ伝わってきた。
俺はその想いを、しっかりと受け止める。
「……まったく、リオンらしいな。わかったよ」
思わず肩の力が抜けて、俺は苦笑を漏らした。
「でも、どうするんだ? 突然女になっちゃって…」
「とりあえず、しばらくの間は、アシュレイくんみたいに男装して過ごそうと思う」
「そのあとは……家族にはどう説明するんだよ」
「なんにも考えてない」
「お前なぁ…」
俺は思わず額に手を当てて、ため息をついた。
ほんと、こいつの楽観ぶりに半分あきれてしまう。
そんな俺に、リオンは笑顔を向ける。
「大丈夫、いざというときは転性魔法をもう一度使えばいいわけだし」
「え? だって魔符は今使っちゃっただろ?」
「うん、でもなんか一回使ったら感覚を覚えちゃったったいうか……たぶん僕、フツーに使えると思うんだよね」
「マジか…!?」
まさに主人公補正。
その魔法センス、底なしってレベルじゃない。
純粋に驚いていた俺だったが、ふとリオンが意味ありげな笑みを浮かべた。
「だからリオンくんが、アシュレイくんとのベストエンドを迎えたくなったら……僕がいつでも転性魔法を使ってあげるからね」
「いやいやいやふざけんな! そんなことしたらリオンとは絶交だぞ! もう口聞いてやんないからな!?」
「あは、わかってるよ。でも、BLに興味がわいたらいつでも僕が教えてあげるから。いつでも言ってね」
「わくかアホ! どんだけこの世界に馴染んでも、BLだけは絶対に受け入れねーぞ俺は」
「えーでも、グレイくんみたいにBLを否定してる主人公が、段々とその魅力に堕ちていくシチュってわりとメジャーな……」
「腐女子の妄想に俺を巻き込むんじゃねえ!」
とにかく、そんな感じで。
女の子になってしまったリオンとの仲は、今までどおりだ。
***
一方のアシュレイはというと。
相変わらず、俺を避けていた。
いや、避けてるというか……バレバレの視線はしっかり感じるんだけど、こっちと目が合った瞬間にフリーズしてしまう。
目をそらして顔を真っ赤にして、まるで逃げ出してしまうのだ。
……これはこれで可愛いんだけど、そろそろ放っておけない。
いい加減、ちゃんと向き合わないといけない。
そう決めた俺は、ある日の放課後、アシュレイと二人きりで話をつけることにした。
放課後、逃げようとするアシュレイの手を引いて、有無を言わさず連れ込む。
そうして連れ出した場所は、図書館のそばの人気のない書庫整理室だ。
薄暗い図書整理室は、基本的に人の出入りがないせいかほこりっぽい。
西側の壁にひとつだけある窓からは、傾きかけた夕日が差し込んでいる。
その光が本棚の隙間から伸び、床に細長い影を落としていた。
本棚を背に、アシュレイはうろたえた様子で落ち着かず、何度も目を泳がせながら俺を見上げていた。
「ど、どうしたグレイ……こんなところまで連れてきて」
「アシュレイ、お前俺のこと避けてんだろ」
俺は逃げ場を与えないように、まっすぐにアシュレイの瞳を捉えて言った。
「か、勘違いだ! そ、そんなことは……」
アシュレイはあたふたと挙動不審になって、やがて俯いてこぼす。
「ある、かもしれない」
意外と素直に認めたアシュレイ。
「自分でも、よく分からないんだ。君の顔を見ると……胸がぎゅって締めつけられるようで、顔が熱くなって、なんだか苦しくて……そのまま消えてしまいそうになる。こんなの、初めてで……どうしたらいいのか、わからないんだ」
いやそれって、バリバリ俺のこと好きじゃねーか。
今すぐ抱きしめて唇を奪いたくなる衝動をぐっと飲み込み、代わりに俺は言った。
「アシュレイ、俺の目を見ろ」
「え?」
「いいから」
「……ゃだ」
アシュレイはもじもじしながら、俺の目を見ようとしてはすぐ視線を外してを繰り返す。そのうち瞳は潤み、頬が真っ赤に染まっていった。
ここが攻めどきだ!
——ドン!
「——ッ!?」
俺は勢いよく片手を壁につき、いわゆる壁ドン体勢になる。
そして、空いたもう片方の手でそっと彼女の顎に触れ、やさしくこちらへ向けさせた。
「ぐ、グレイ……!?」
距離は数センチ。
アシュレイと、目が合う。
吸い込まれそうな大きな瞳が、揺れていた。
「……お、お願い……わたし……」
「苦しいか?」
「ドキドキして、心臓がはじけそう……」
「嫌なら言え。すぐやめる」
短い沈黙のあと、アシュレイはかすかに首を横に振った。
「いや……じゃない、と思う。なんだ、この感じは……この気持ちは……わたし……」
俺はふっと笑って、そっとアシュレイの顎から手を離した。
自由になったアシュレイは、それでも名残惜しそうに、上目遣いでじっと俺の顔を見つめていた。
「グレイ……私は……やっぱり変だ。どうしてしまったんだろう。私は……」
「その答えは、俺と一緒にいれば、すぐわかるだろうさ」
そう言って俺は壁についていた手を離して、アシュレイに差し出す。
「だから、これまでどおり、仲良くしようぜ。とりあえず、良き友達として」
「グレイ……」
アシュレイは差し出された俺の手をじっと見つめていた。
揺れるまつ毛の奥で何かを決めたように、その瞳が静かにこちらを捉える。
それから、ぎこちない、だけど真っ直ぐな動きで、俺の手を取った。
「わかった。すまない、取り乱してしまって。これからも、よろしく頼む——」
「ああ!」
俺達は固く握手を交わす。
こうして、セルヴィスとの決闘後、長くギクシャクしてしまっていたアシュレイとの関係も、その後少しずつ元通りになっていた。
***
そしてある日の夜。
誰もいない礼拝堂に、俺は一人で足を運んでいた。
ここは入学式の日、組分けの儀を行った場所だ。
部屋の最奥には、片手に剣を、右手に天秤を携えた、女神ユースティティア像が、あの日と変わらぬ姿で佇んでいた。
礼拝堂の中は夜の帳に包まれ、周囲は静まり返っている。
わずかに開いた窓から差し込む月明かりだけが、薄暗がりの中で女神像を淡く照らしていた。
俺はその光に浮かび上がる像の前に立ち、その顔を見上げる。
「ユースティティア——俺の勝ちだな」
ぽつりと独り言ち、ニヤリと笑う俺。
そう。俺がここに来たのは勝利報告のためだった。
なんに対する勝利か?
そもそも俺は一体誰と戦っていたのか。
無論。
それは、BLに対する勝利にほかならない。
俺は邪神が与えし腐った運命に全力で抗い、そして勝利したのである。
「くっくっくっ……」
こみ上げる笑いを抑えきれず、思わず声が漏れた。
額に手を当てながら、大げさに肩を震わせる。
「ふふ、ふはは……はーっはっはっはっはっ!!」
気づけば、まんま悪役みたいな高笑いをあげていた。
「俺はアンタに勝った! このクソみたいなBL世界に勝ったぞ! アシュレイは俺にぞっこんだ! そのうえダークホース、リオンまで、女性化してしまった始末!! これが勝利といわずして何が勝利だ!? ふはははは! ふははははははははっ!」
こみ上げる笑いをぶちまけたあと、俺はふうと息をついた。笑いすぎて涙が出てくるなんて、いつぶりだろうか。
だが、胸の奥に湧き上がる高揚感はまだ冷めていなかった。
俺は勢いよく腕を突き出し、女神像をびしっと指差す。
「俺の野望はここで止まらない。止まるわけがねえ! 次なる目標は勝利を超えた、完全なる勝利! このBL世界での……ハーレムの達成だッ!!」
そう、次なる俺の野望。
それは異世界転生系主人公よろしく、女の子とのハーレムを達成すること。
その条件はすでに半分達成したようなものだ。
リオンもアシュレイも、俺に対する好感度はストップ高。
あとは俺のアクション次第で、簡単にお友だちから、男女のア~ンな関係にステップアップできる。
あえて俺がすぐにそれをしなかったのはなぜか。
それはひとえにハーレムのためだ。
俺の大き過ぎる愛情を、平等に注ぐためである。
アシュレイとリオン。
どっちかを負けヒロインにするのは心苦しい。
ならば俺がすべきは、二人に等しく大きな愛情を注ぐこと。
これまでどおりの仲良し三人組の関係を保ちつつ、恋のトライアングルも形成。
そうだな、ノアもハーレムメンバーに加えてもいいかもな。
男の娘キャラは、単品だとBLの腐敗臭を放ちすぎるが、ラブコメハーレムの一メンバーとして加われば、発酵香として俄然立ち上がってくる。
ニチャア。
俺は爽やかな笑顔を残して、女神像に背を向けた。
「とにかく、そういうわけだから。ユースティティアさんよ。アンタが作ったこのクソみたいな世界、おかげさまでだいぶ好きになってきたぜ」
そして、この場所を後にしようと足を一歩踏み出した——その瞬間だった。
——安心してくださいまし。このままで済ますわけがありませんわ♡
ぞわっ。
一気に背筋に寒気が走り、俺の肌は粟立った。
俺はばっと振り返る。
もちろん誰もいるわけがない。静まり返った礼拝堂に立っているのは俺ただ一人。
あとはユースティティア像が佇むのみだ。
「き、気のせいか……」
俺は肩をすくめて、苦笑いを浮かべたまま女神像に背を向けた。
だけど、どういうわけか背中がぞわぞわする。
嫌な予感を振り払うように、俺は歩調を速めた。
……大丈夫だよね?
もう、BLの心配はないんだよね?
おかげさまで、この世界のことは好きになれたよ。
でも、BLのことは全然好きになれてないからね。
コメント
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あああ第53話読み終わったよ〜〜!!😭💕 リオン、めっちゃいいやつじゃん!「スタートラインに立ちたかった」って…切なすぎる…!でもアシュレイとの壁ドンシーン、グレイの攻め方がプロすぎてこっちまでドキドキしたよ…! ラストの女神像前での高笑い、完全にラスボス感あって笑ったw でも最後の不穏な空気…まさかまだBLフラグ折れてないの!?続きが気になりすぎる!!