テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
リクエストに答えてくださりありがとうございます😭神すぎる!弟と甥が♡♡♡れた?のに♡♡♡た犯人の方に興味がいくモン帝さん、さすがだぜ👍本当にいつも神作をありがとうございます!これからも頑張ってください応援してます!
innさんからのリクエスト
『死後の魂の行方を御存知ですか?』
『魂というものは、己の身が死してなお輪廻転生を繰り返すのです。』
「それが何だと言いたいんだ。余の殺めた相手が転生して復讐をするから侵攻をやめるべきだ、とでも説きたいのか?」
随分と遠回しな命乞いだな
『いいえ、そんな滅相もない。ただ貴方にも信仰心というものを理解していただきたいのです。』
『先ほど死後輪廻転生の話をしましたね。輪廻においては、今世で徳を積んだ善良な者を、貧乏暮らしの後生に送るような理不尽は通りません。
それには六道というものがあって、それぞれ地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の世界と分けられているのです。
お察しの通り今世でどれだけ徳を積んだのかに応じて輪廻転生の先も決まるのですよ。』
『つまりは生前の業によって選別された6つの世界を繰り返し生まれ変わり続けるのです』
『選別とは裁きが加わるということ。その裁きの最終結論が下されるのは死の四十九日後。
その四十九日の間、生ける身体を失った魂は現世から冥土への旅を歩むのです。』
「死んでもなお、己の行いを裁かれるなど…まるで敗者の慰めのようではないか。神も仏も、勝者の前では跪くのが筋だ。」
そう口にすると、正面に佇む奴はそっと目を開いて。
そして、困ったように小さく眉を寄せながらも、嬉しそうに微笑む。
『貴方はこの世の王として生き、死後もまだ王であり続けようとしているのですね。
ですが魂は、権力や軍勢では導けません。そこに仏はおりませぬ。』
赤子を宥めるような柔らかい口調で、教徒の手本のように説きつづけた。
…だが、どれだけ立派に教えを説こうがこの際行き着く結論は同じではないか
「…つまり、今世でこれだけの国を滅ぼしている余は来世で苦しむ、ということか、
”だから明るい後生を望んでこれ以上の侵攻を止めろ”と?」
やはり趣旨は命乞いなのだろう
そう漏らすと、その相手はくすくす静かに笑い声を立てた。
『…そうですね。上手い言い訳を探そうと足掻きましたが、どうも言葉が詰まって舌が回らない。
我が信仰を命乞いに使うとは、私としたことが大失態です』
何が面白いのか
『でも、貴方にも信仰心というものを知っていただきたいのは事実なんですよ』
『それにしても、自分の行いが不徳だと自覚しているのですね。てっきり、罪悪の念も無く民を殺す悍ましい方かと思っていました。』
「ふざけるな…そのくらい理解している。ただ、余が不徳を積み重ねた大陸支配によって東西の交易が盛んになっている、それが貴様の言う”徳”とやらだろう」
何より輪廻など馬鹿馬鹿しい。今世の罪も徳も今世までだ。
そう話を交わしたのは誰だったろうか。
赤いローブを纏った僧侶
嗚呼、そうだ。チベットだ。
随分と腰が低いわりにはしたたかな奴だった
ヴァジュラヤーナ、法性バルド、転生ラマ…だの聴き馴染みの無い言葉を延々と聞かされたことを思い出す。
自分がチベットの言葉を覚えていることに小さな驚きを感じつつ、ふと足下の雪を覗き込む。
チベット
どうやら貴様の説いた話は、余には当てはまらないようだぞ
懐かしさと嘲笑にそっと目を細める。
この国が滅びて弱9年は過ぎただろうか
だというのに、未だに輪廻は来ない
風のように透けていて体温を持たない、なのに以前と変わらず実態を保っている身体
生身とも死霊とも言えぬこの身体で草原をのうのうと彷徨い続けているのだ
死にきれぬのは、輪廻を拒んだのか、あるいは、誰かの記憶にまだ燻っているせいなのか――。
だが、これはこれで良いのかもしれないな
雪をひしひしと踏みつけながら呟く
この眩しいほど白銀に映る雪景色は、どうにもあのルーシの地を思い出す。
綺麗だと思ったことは無かった。
ただ、このモンゴルの地では感じられないほどに鋭く痛い寒気に苛立つのみだった。
モスクワ
大して回想するほどでもない辺境の一国だったが、この寒冷に時々脳裏をよぎる。
そういえば風の噂で聞いたことがある。
あのモスクワ大公国がビザンツの後継を名乗り、新たな王朝を築いていると。
ロマ….
なんと言っていたか
ロマイフだったか
いや、違う
さほど惹かれる話題でもなかったから名称など忘れてしまった。
只、あの貧弱かつ何を考えているのか分からない童だと思っていたルーシが、皇帝を掲げて勢力を拡大しているという話には少し関心を持ったのだ。
そして何よりも不測だったのは、そのルーシが我が血縁のいくつかを破ったこと。
カザン・ハン国も
ジョチ・ウルスも
だが、悔しいかと問われればなんとも言えないのが実情である。
その知らせを聞いたとき最初に感じたのは、脆弱な国家が列強へと成長することの趣と好奇心だった。
カザン・ハン国とやらは、弟のジョチウルスの息子だから甥に相当するのか
弟や甥が滅びたとの知らせを聞いても、嘆くことなく趣に嗤う自分に些か不謹慎さも感じる。
それと同時に、あのルーシに兵法を指導してやったのは余だ。
余の教えた兵法が後にルーシの国力となって我が血縁を滅ぼした…と考えると、誇りのような皮肉なようなものがある。
そんなことを止め処なくぼんやり考えていると、遠くで鐘の音が響くのを感じた。
「嗚呼そういえば」とあのルーシの正教会の鐘の音を思い出す。
首から下げた十字架を必死に握って、反抗心に目を潤ませながらこちらをじっと睨むモスクワの姿
上っ面に忠誠を口にして濁った瞳を揺らしていた、ように見えていた。
だがあの裏で帝国を見据えていたのだろうか
普段なら考えても思い出すことのない古い記憶がやけに鮮明に蘇ってくる。
”記憶”というのは不思議なものだ。
それにしても、肉親を次々に奪われ支配を受けた少年が覇道を目指すなど、まるで何番煎じという物語のようで、
なんだか笑えてしまう。
その十字架を握るモスクワ大公国の姿は、いつの日にか余に説法する僧侶チベットの姿と重なった。
空気の凍てつく教会で十字架を手に祈りを捧げる
輪廻を信じて仏具を手に経文を唱える
救済を信じて贖罪を積む
このうえなく馬鹿馬鹿しい
余がルーシに求めていたのは、金の朝貢と忠誠を誓う兵
それだけだ。
なのに何故、そんなにも感情の渦巻く目で睨むのか。
理解し難い
…関係の無いことだが。
そう呟き、新たな王朝を築いているという中国-清の土地へと足を向けた。
何も無い空間に雪を踏み締める足音が響く光景は、やがて南へと消え。
ルーシの教会の鐘の音は誰の耳にも届かず虚空へ散る。
風が音を攫い、残されたのは足跡だけ。
雪はやがてそれすらも覆い隠し、鐘の音も、祈りも、誰の記憶にも届かぬものとなる。
モンゴル帝国[Greater Mongolia Ursus/Монгольская империя]-Монголын Хаант Улс
???-■■■[Russian Empire/Оросын Хаант Улс]-Российская империя
解らぬ信仰の行方は