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5話目です!
諸々注意です!
ではスタート!!
前回のあらすじ
タソガレドキ領地から6年生と共に帰ってきた長嶺は土井先生には別途でこってり搾られ、それからは行動を改めることに務めた
『で、なんで僕らはここにいるんだよ伊作』
「え、だって雑渡さんの誕生日近くて誕生日会をやるからっていう招待を受けたんだよ」
『お前だけでいいだろ』
「怜治もって書いてあるもん」
『もんって…それがタソガレドキからじゃなかったらどうするんだよ!』
「そこはご安心していただきたい」
『ぎゃああぁ!!』
「驚きすぎだよ怜治」
「これは失敬失敬…気配を隠すのが基本になっております故学生は少しびっくりされまするな」
『…いや〜さすがにびっくりしましたよ〜!』
「はは、組頭からご案内するよう仰せつかっております」
『そうなんですね』
「プレゼントなどはお持ちですか?今ここでお受け取り致します」
「あ、…えっとそれが……」
『何がいいか分からなかったので手ぶらです』
「おや」
『お金も権力もあるお方ですから…学生の僕たちからというのも難しいものでして』
「…ふむ…分かりました…では案内します」
『はい、よろしくお願いします』
押都に案内された2人は会場に着き、なぜ手ぶらなのかという説明をし終わったと同時に雑渡にあることを告げられる
「それじゃあ手合わせしよっか」
『「…はい?」』
トントン拍子で話が進んでいき、雑渡と手合わせし交互にやり雑渡から1本取るということだ
「まず1本目先にどちらがやる?」
『…』(僕の実力を知っているのに手合わせをするとなると僕と…というよりメインは伊作の方かな…)
「怜治、先」
『僕はいいや、伊作先でいいよ』
「えっ!」
『なんで驚くのさ、お前なら大丈夫だ』
「えぇ〜…」
『ほら、上着脱げ』
「うん…」
伊作は長嶺に促されるまま上を脱ぎノースリーブの状態になった
『…』
「珍しいですね、貴方なら先にやりたいと言うかと思っていましたが」
『はは、確かにやりたいですけど…この前押都さんと山本さんとしました。
それを盗み見ていたので僕ではなく本命は伊作の方を見たいのかと思いました』
「!」(この子は本当に…勘が鋭いのか…昆の意図をわかっている…)
『あと押都さん、怒車の術をかけなくとも僕は少なくとも本気でやりますよとお伝えください』
「…はは、忍たまと言えどさすが6年生だ」
『はは!あの術のかけ方はわかり易すぎますよ』
「随分楽しそうだね怜治くん」
『雑渡さん!…?』
「どうかした?」
『いえ、伊作とやるんでしょう?さっさとやってくださいよ』
「怜治〜!!そんな事言わないでよ!」
『なんでよ!ほぼ最強と謳われる方とやれるんだぞ〜?そんな滅多なことねぇって』
「そうだけど!」
「ふふ、大丈夫だよ
殺しはしないから」
『…こんなに近くで殺気に近いものを出さないでください♡
興奮してきます』
「ふふ、」
「興奮するの怜治だけだよ!」
『そんなことないよ〜…で?なぜ着替えてらっしゃるんですか?雑渡さん』
「ん?何故って…これで”見た目は同じ”だろ?」
『「!」』
「怒車の術をかけなくとも本気で挑ませていただきます」
「はは!!すまないね…あ、そうそう
ここ(道場)にあるものならなんでも使っていいよ
君の戦い方は乱定剣でしょ?」
「『!』」
『…』(伊作の戦い方がバレてる…!?)
「なぜそう思われたのですか?」
「消去法だよ
司令塔は立花仙蔵くんと意外にも七松小平太くん
近接戦闘は七松小平太くんと食満留三郎くん
中・近接戦闘は潮江文次郎くん…遠距離特化は中在家長次くん…
そして2人はその場にあるもので戦う臨機応変型の後衛
補佐的存在…特に伊作くんは救護班を務めたりするから前線に出す訳には行かない」
「おっしゃるとおりです」
「そも乱定剣はその場に合わせた武器で戦う急場凌ぎの戦い方…
君は救護をしていて狙われる確率が上がる
そこで怜治くんとセットで動くことで怜治くんの鳥を使って索敵も出来る…とっても理にかなってる戦い方…でも…それじゃあ私は倒せない」
「!そこまで焚き付けなくとも僕ら2人とも本気で挑ませてもらいますよ」
『…』
「ふふ、年甲斐もなくすこし楽しみでね」
「……」(怜治の言う通りだ…最強と謳われる方に教えを乞う……またとない幸運だ…)
「ほう…そう来たか」
『…』(小平太のクナイに留三郎の鉄叟節棍…)
「では審判は私が」
「山本さんよろしくお願いします」
「では…1本目…始め!」
山本の始めの合図で伊作が雑渡の方へ攻める
『…』(伊作も気づいてる…あの園田村の時…あいつも”見てる”…)
「…」(雑渡さんの得意体術は…足蹴り!)
「う”ッ!!」
「!鉄叟節棍を防御に使うのか…面白いねぇ…」
『…やっぱり…』(軸足は左足…園田村の時はあまり見れなかった…だけど利吉さん達の戦いを見てた時は若王寺先輩と桜木先輩には左手しか使ってなかった…利吉さんには右手も使っていた…だが…初手で足蹴りを食らわす…狙いがいいのか…
それにあの人は丈寸がある…あの巨体から出てくる足蹴りはムチのようにしなるってくるから更に重みが増す……それにあの人伊作と戦ってるのに足音が全然しない…あんだけん踏み込んでんのに……踏み込んで足音がしない奴なんて今まで雑渡さんしか知らない……
それにどんな凄腕の忍びでも戦いになれば多少なりとも足音は聞こえる…なのにこんなに近くにいても足音がない…凄い…なんでだ…経験の差なのか…??)
「そこまで!!」
『!…伊作!!』
「いった〜…」
『お前大丈夫かよ』
「うん、このくらい大丈夫だよ」
『あれ、本当だ意外と大丈夫そう』
「言ってるでしょう」
『…はは…そうだね』
「じゃあ次怜治くん…行こうか」
『僕もやらないといけないんですね』
「まぁね、伊作くんだけじゃあ伊作くん疲れちゃうでしょう?」
『はいはい…服は?このままでもよろしいですか?』
「脱いでくれるとありがたいなぁ〜」
『ハァ……分かりました…』
長嶺は上を脱ぐとノースリーブ姿になるがそこにはやはりサラシで潰されていた胸が少し浮き出ていた
「怜治…!」
『…大丈夫だよ、伊作』
「ふふ、服脱ぐとすごい分かりやすいよね」
『何がですか?』
「体格が
男みたいに筋肉隆々でもない…でも女人のように線が細い訳でもない」
『へぇ〜その割には気付かれましたけどね』
「ふふ、こう長年やってるとね〜ある程度女人か男かわかるもんだよ
君は迷ったよ…忍たまって男しかいない状況だったから先入観がどうも邪魔してね
あれを言ったのもカマかけ」
『ふふ、まんまとカマかけに引っかかりました
なのでそれから貴方のこと信用しないようにしています』
「えっ」
『当然でしょう?
突然服を脱いで見せろとか…突然求婚されましたね?』
「えぇ、…雑渡さん…まさか…」
「え、まさか伊作くん?そっちの流れに持ってくの?!」
『ふふ…ですからあれの求婚のお話は動揺を誘うものだと思っています』
「違うよ
それは断じて」
『…あ、じゃあ…カマかけで脱いで見せろと言うのはただ見たかっただけですか?』
「それも違う」
『ふふ…もちろん簪も嬉しかったです…でもまだ私は遊んでいたいんです
求婚されましても私は了承を出せる身分ではありませんので…一応保護者の方がいらっしゃるのでそちらを通してもらわなければ困りますわ』
「え、いるの?」
『もちろん、いますよ…なんなら婚約者も一時期はいました』
「今は?」
『いません』
「ふ〜ん…教えてって言ったら教えてくれるのかい?」
『ふふ、そう簡単に教えませんよ
そうですね…この手合わせ僕に勝ったら教えてあげます』
「れ、怜治!!?何言ってるの!!?」
『…』(おそらく雑渡さんは伊作の本気が見たいんだろう…なら先に僕が本気を出してみよう)
「いいの?それで」
『はい、雑渡さんがよろしいなら』
「利吉くんの時は手加減してたよ?」
『えぇ知ってます、本気の雑渡さんにどこまでやれるのか僕自身試してみたいんです…山本さん、この手合わせの具体的なルールは?』
「あ、…どちらかが参ったと降参の意思を示した時、相手が意識はあれど継続ができそうではない時、私がクソな試合だと思った時に止めます」
『分かりました』
「…ふふ、いいだね?」
『ええ、ですがハンデは下さい』
「それはもちろん…若者をいじめる趣味は無い」
『はは、それは良かったですよ…!この道場にあるものならどれでもいいんですよね?』
「嗚呼、どれでもいいよ
伊作くんみたいに2つ使ってもいい」
『……なら自分の手甲鉤使ってもいいですか』
「なっ!」
「…」
「ダメに決まっているだろ!!」
『なぜ?ここにある物ならよろしいんでしょう?』
「!」
『僕自身、ここへ入っています
それにこれは実践用ではなく手合わせ用で筋トレで持っていただけなので肉は切れません』
「…ふふ面白いね」
「認めます」
「小頭!」
『ふふ、そう言ってくれると思ってました…』
長嶺は筋トレ用の手甲鉤を付け、アキレス腱や肩胛骨などを解し始めた
「あれ随分本気だね?」
『はは雑渡さんだけ1本目とその前に準備運動されるのは少し割に合わないので』
「あれ、バレてた?」
『ええ、なんなら伊作もそのくらいなら気付いてるはずです…僕よりよっぽど人体の構造に詳しい
僕は雑渡さんの衣服の乱れで察してカマをかけました
伊作はそれ以外のところで気付いてたんじゃないのか?』
「あ、うん
火傷のあとは動くとなると引っ付いて体が固くなるからそれを解していたってのと服の乱れ、あと汗はかいていないものの皮膚に熱を持っていました…包帯も少し緩まってましたのでさっき厠へ行ったときに準備運動をついでにしてきたのかなっと思ってました」
「流石、忍たまと言っても6年生だ」
『はは!お褒め頂き光栄です…よっ、し…伊作!』
「何?」
『何かあったらこの笛を吹いてくれ』
そう言った長嶺は伊作へ1個の小さな笛を投げる
「わっ、と……これ、紅とクロの笛じゃないの?」
『見た目は似てるけどそれは僕のお守りだ…』
「…わかった」
『…ん』
「では、…2本目始め!」
山本の声と同時に2人はさっきまで居た位置にはもうおらず真ん中でぶつかっていた
『ぐっ……ぅっ、…ふふ…!♡』
「最初の初手を凌いだのはすごいね」
『はは!どうも!!!』(防いだ腕がクソ痺れてる…!やっぱ最強の名は伊達じゃない…!)
2人は防いで攻撃し、離れる…その攻防を繰り返していた
『ふっふっハァッハァッ…!!』
先に息切れしたのは長嶺だった
「大丈夫?肩で息してるし降参?」
『ははははは!!!♡何を言ってる…?辞める?そっちこそ…降参しなくてもいいんですか…?♡』
「?」
『これは肉は切れないと言いましただけど…それ以外なら切れるんですよ…』
ヒラッと雑渡のノースリーブの布が床に落ちる
「「「「!!?」」」」
その場にいた全員は驚いた
最強と謳われている雑渡昆奈門の服に気付かれることなく傷をつけたのだから
『はは♡♡見えませんでしたよね!!?見えませんよね!!?ですよね!!?ふふ♡♡僕の手甲鉤はこれが得意なんです♡♡相手が切られていないと思っている中でわざわさ切れていることを教えることが…♡♡』
「…その口ぶり…殺してる数1人や2人じゃないだろ」
『ふふ…♡♡そこも…秘密です…あなたが勝ったら教えます♡♡』
「…なら本格的に勝たなくちゃね」
『ふふ♡♡』
「はは…!」
2人とも笑っていたがすぐに静まり返り、また攻防が始まった
雑渡の攻撃を長嶺がいなす…長嶺の右手の手甲鉤を腕で止め、止めた手を返し長嶺を引き寄せ右膝を入れようとするが左手で止められる
『ッ…っはははははは♡♡ここまで楽しいのは久々だよ!!ねぇ…昆さん♡♡』
「そうだねぇ?」
雑渡は長嶺の腕を持ったまま膝を下ろし長嶺も着地する…
そこで両者硬直状態になってしまった
「……」
『………』
「……」
「……」
先に動いたのは雑渡だった
「ふっ!」
『!』
長嶺の腕を離したかと思えば得意な体術である回し右足蹴りを長嶺に食らわす…
人間突然掴まれていた腕が離されると体は伸びきって体を丸くして防御の体勢を取れない
それを思い雑渡は回し足蹴りを食らわしたのだから
「そこ、」
『…ふふっ……はは…』
長嶺は笑いながらゆっくりと立ち上がった
「!」
「……君すごいね」
雑渡1人だけが気付いていた。長嶺は雑渡の回し足蹴りを食らう直前、体を丸くし肋を守るように右から来る衝撃に備えていた…
それだけではなく左足は丸くせず足蹴りが当たるのと同時に後ろへ飛んで威力を軽減させた
『はは♡♡失敗すると、相手に手応えが無さすぎて逆にバレちゃうからあまりやらないんですけど…今のは結構上手だったと思ったんですが……やっぱり昆さんの蹴りは痛いですね♡♡
あれを直接いなさず受けていたら肋何本か逝ってましたよ…♡』
「はははは!!流石に驚いた!確かに手応えはあった…だが転がり方的に…ね」
『まっそうですね…場数が違いますからこう蹴ったらこう吹っ飛ぶなんて知ってますよね…♡』
「ふふ、君本当にタソガレドキで働かないかい?伊作くんや保健委員さんたちと一緒に」
「え、」
『お断りします♡伊作だけにしてください』
「ちょと怜治!!?」
『あれは少し焦りましたよ…♡少し焦ったおかげで腕にヒビが入ったかもしれませんが…まぁ異常ないので続きやりましょうか…♡』
「さすがにこれ以上は…!」
「いいよ陣内」
「組頭!?」
「6年生にここまでの実力を見せつけられてうちの子達もいい刺激でしょ」
「…次は絶対に止めますからね…それでいいですね!」
『「嗚呼/はい♡」』
「大人気ないけど勝ちに行きたいからね…押都」
『…』
「はっ、これですね」
「まさか、…学生相手にそれを使うのか!?」
「嗚呼」
『…それを使われるのは少し丈寸的に僕が不利ですね〜…?』
「ふふ追い込まれてからが君の本領発揮だろ?」
『!…あはは!!!』
「違ったかい?」
『いいえ?合ってます…ですがそれを使うくらいなら2対1でどうです?』
「?」
『雑渡さんと押都さん対僕で』
「「「!!?」」」
「怜治!さすがにそれは!」
「そうだぞ!流石に貴様それは舐めている!組頭だけでも手一杯ではないか!!?」
『でもこの前手加減されていたとはいえ2人がかりで捕まえれなかったのは事実でしょう』
「!」
『でしょう?押都長烈さんに山本陣内さん』
長嶺はにっこりと笑みを浮かべた
「…これはまた…」
「……」
『…僕はあまり棒を使って欲しくないんです
距離を縮めるってもありますが…長物はどうも苦手なので
出来れば対人がありがたいです。対人ならどこまで怪我をさせていいのかも分かりますので』
「…仕方ないね、じゃあ押都
久々に共闘しようか」
「御意に」
『あはは…♡最っ高だよ…雑渡さん…♡大好き…♡』
長嶺は両手を頬に当て、にっこりと…しかしどこかうっとりとしていた…
その表情に山本は戸惑いながらも再開の声をかけた
いい終わったのと同時に大人2人は長嶺へ攻撃しに行った
「あいつら…!」
だがそれを長嶺は止めた…
『はは…!やっぱ!雑渡さん!あんたの足蹴りは痺れるね〜…!♡それに押都さんもあと少しで顔面当たるところでしたよ!!♡♡顔面は警戒してませんでした!
なんせ急所が少ないので』
「「!」」
『!』
雑渡は長嶺の腕を掴み投げ飛ばす
『ッ…と、…!急に投げないでくださ…!』
長嶺の目の前に広がる景色…雑渡さんのかかと落とし、押都の腹への回し蹴り…後ろには壁で防がれて逃げ場がない
『…あ、』(これ、避けれ…)
「「!!」」
雑渡と押都の攻撃が当たる前に山本の制する声が響き雑渡と押都は長嶺から距離を取った
「勝負はついています、子供相手に本気になると言っても殺す前まで行くな!可能性を潰してどうする!」
「え、これ私が怒られるの?」
「はは、でしょうな」
「押都どのもです!!」
「えっ」
『ッ………』
「長嶺くん、怪我はありません、…か…って!長嶺くん!鼻血!」
「えっ」
『…え、…ほんとだ…』
「怜治、大丈夫?どこか当たったの?今何か布…」
『いいよ、どうせすぐ止まる…ふっ!』
長嶺は雑に片鼻を抑えて鼻をかむ要領で奥にいた血の塊を服に出した
「ぎゃあぁぁ!!駄目だよ!!それ!!ちゃんと処置の方法あるんだから!!!鼻血は啜らず鼻を摘んで顔を下に向けるんだよ!!」
『すぐ止まる…興奮して鼻血出ただけだから』
「え、ぶつけたとかじゃなくて?」
『うん、興奮して口で息せずに鼻呼吸になってたから少し鼻呼吸だけじゃ無理だったんだろうね
それにこんだけん動いてるから血流が良くなりすぎた…だからすぐ治まる』
「長嶺くん…?大丈夫…?も、申し訳ない
よく言っておくよ」
『いえ、雑渡さんと押都さんは悪くありません
煽ったのはこちらの方なので大丈夫です』
「どっかほんと折れたとかない?大丈夫??」
雑渡がしょぽんとしたような声で長嶺に聞いた
『大丈夫ですってこの鼻血は興奮しすぎたんですって雑渡さんや押都さんの攻撃が当たったわけじゃありませんので』
「でも…」
『本当に大丈夫です。今日は雑渡さんのお誕生日なんです
もっと傍若無人に振舞っていいと思いますよ』
「昆はいつも傍若無人だ」
『ぷは!はは!それもそうですね!』
「酷いなぁ〜」
「失礼だよ!怜治…!」
『ふふ、』
「とりあえずまぁ満足かな」
『あれ、伊作とはいいんですか?』
「やりたいよ〜?でも君の体調の方が心配そうで伊作くんが集中できないなら意味が無いからね」
「…バレてましたか」
「そりゃあね、さっきから怜治くんの方に体を向けてるし目線もこっちを見ているようで怜治くんを見てる
変化がないか確認してるんだね」
「…はは、鼻血出してるのを見たのは初めてなので…他の人よりも心配になっちゃって…」
『僕は大丈夫だよ…伊作…』
「とりあえず、今日はここへ泊まってく?泊まってくなら準備させる」
『いやいやいや、さすがにね?』
「…そうですね、怜治の体調も気になるので1晩様子見させてください」
『い、伊作!!?』
「ふふ、ご厚意に甘えさせてもらお」
『……』
「じゃ、宴の料理増やすね」
『僕はいらないです。伊作の分だけでいいです』
「怜治ぃ〜…」
「なんで食べないの?」
『夜はいつも食べてないだけです』
「…ふん、…お風呂は入るの?」
『え、』
「ふふ、怜治お風呂いつも夜遅くにみんなが寝静まった後に入っててお湯冷たいもんね」
『は!?伊作知ってたの!!?』
「夜起きた時怜治部屋にいなくて少し探したら湯殿から出てきたから」
『…人影は感じてたけど目悪くて誰かわかんなかったから放置してたけどあれ伊作かよ…』
「ふふ、そっかじゃあここので悪いけど私たちがご飯食べてる間ゆっくりお風呂入っておいで」
『そんな!皆さんを差し置いて僕が先に入るなんて…!』
「いいよ、ね?みんな」
雑渡がタソガレドキ忍軍へ問うと満場一致で賛同の意思を示した
「ほら、こういってる事だし」
『ですが…』
「あ、もしかして男しかいなくて不安なら私の妻を呼びますよ
2人で入れば」
『だ、大丈夫です!1人で入れます!!』
「ふふ!あ、けど準備は手伝ってね」
『「もちろんです!」』
『あ、じゃあ僕忍術学園へ文を飛ばします。
戻る予定だったから外泊届出してきてないのであまりよくありませんが…』
「あ、そうだね
紅とクロは?」
『すぐそこにいるから書いて届けてもらお』
「ごめんね」
『いいよ、僕のついでだ』
2人は懐から紙と筆を取りだして外泊の理由を書き、長嶺は笛で2人を呼び寄せる
『よしよし〜……紅、クロお使いだよ〜』
長嶺は2匹の足に着いている小さい筒に2人の外泊届を入れる
『土井か山田、覚えてる?』
長嶺が聞くと答えるようにクロがガァーと返事をする
『よし、クロが覚えてるなら大丈夫だね…さっ行っておいで!』
長嶺はピィっと短い笛を吹くと2匹は長嶺の腕から飛び立ち忍術学園の方角へ飛んで行った
そして日が落ちて月が登ってから少し経った頃だった
宴の料理の準備も終わり、宴が始まって大広間には賑やかな声が外まで聞こえてくる程盛り上がっていた
長嶺は盛り上がりを聞いてから湯殿に向かった
『…』(久々の温かいお風呂…)
長嶺は温かいお湯につかれると思っているととてもウキウキとしていた
長嶺は湯殿に着くと服を脱ぎ、棚の中にあったカゴに衣服を入れ中に入り戸を閉めた
『暖かい……』
入った瞬間、中は湯の湯気で暖かった
長嶺は湯を桶で1掬いし頭からかける
『……』
忍者は基本的に痕跡を何も残さない。足跡はもちろん匂いも残してはいけない
だから忍者は常に清潔でなければいけない。だから忍術学園やここには湯殿が付いている。
なんとも贅沢な話だ。
『…ふぅ…浸かるように言われたけど…流石にそれは甘えすぎだな…出よ』
長嶺は体を洗い終わったのち髪を簪でまとめながら戸へ向かって歩いた…その瞬間戸が開いた
『え、』
「はいはい、ごめんね〜」
『な、なんで入ってきて…!宴はどうなさったんですか!!!てかなんで裸!!?』
「どうせ君のことだから浸からないと見越して一緒に入りに来たんだよ」
『せめて私の了承を得てからにしてください!!不審者が来たかと思って心臓止まりかけましたよ!!』
「それは申し訳ないことをした…でもちゃんと浸かろ…ね?体にあまり良くない」
『ッ…』(この顔…ずるい…!)
「あ、もしかして汚かった?ごめんね、今は許して」
『そういう訳では…』
「じゃあどういうこと?」
『……私の体は綺麗ではありません…ですからどんな病気を持っているか分かりません…だからお湯に使ってこれから入る皆さんに何かあっては…』
「なんだそんなこと気にしてたの?」
『そんなことって!忍者は体が主本です!体を壊されても困ります!』
「だけど君体は売ってたって言ってたけど未遂でしょ?」
『!…そんなことはありません…』
「そこは嘘つかなくていいところだよ」
『ですから嘘では…!』
「まっ、どっちでもいいけどさ…失礼するよ」
『きゃっ、!!』
雑渡は長嶺を抱え湯船の方へ歩いていく
『雑渡さん!離してください…!』
「忍び衣装を脱ぐと急に女の子になるよね美桜は」
『忍び装束を脱ぐと意識的に切り替わっちゃうんですもん…!任務と私生活とでの切り替えが忍び装束を着てるかどうかなんです…!』
「ふふ、そうなんだね…よっ、と」
雑渡は長嶺を湯船へ下ろした
『ちょ、出ます!!』
「駄目」
『駄目じゃ』
「今日私誕生日だよ?誕生日特権使っても良くない?」
『ぐっ、…それを言われては何も言い返せないんですが…』
「まっ、私が洗って浸かるまで待ってて
熱くない?」
『はい、…ちょうどいいです』
「ふふ、良かった」
『あの、宴の方はいいのですか…伊作もあっちにいるし主役がいなくては…』
「元々私たち忍者はお酒とかは飲んだりはしないから宴が終わるの早いんだよ
だから料理食べて少しワチャワチャして終わり」
『そうなんです、ね…』
「まっ料理は食べれるけど量は食べれないし私が気にしてるのを気を使ってくれて大広間から押し出されちゃったんだけどね」
『気にしてるって…一体何を…』
「君のことをだよ」
『え…』
「ふふ、好きな子がお風呂入っててあんだけお風呂行くのに楽しそうだったのに浸からないっていうのは想像できたからね〜」
『見られてたなんて………』
「ふふ、とても愛らしいと思ったけどね」
『やめてください!!恥ずかしいです…人様のところではしゃいでしまって…』
「……信用してもらえた?」
『え、』
「君、手合わせの時…”貴方のこと信用しないように”っていってたでしょ」
『あれは売り言葉のようなものです
貴方を戦意喪失させるための嘘です』
「嘘なの?」
『はい、嘘です
まず私信用してない人や好きでもない相手とこんな飄々と話しません』
「え、そうなの?」
『はい、忍び装束を着ているならまだしもこうさらけ出していて警戒しないというのもどうかと思いますがいつものように警戒してないんです』
「そうなのね」
『疑ってらっしゃいます?』
「まぁね、傷ついたは傷ついたから」
『それは申し訳ありませんでした
お誕生日関係なく気分を害してしまって』
「大丈夫、大丈夫だからせめて手ぬぐいで隠して」
『今更ですか?』
「今更です…」
『洗い終わりましたよね?』
「え、うんそうだよ」
『じゃあ出ますね』
「もう少し待ってよ、ほら戻って戻って〜」
雑渡が長嶺の手を握りながら後ろに下がら湯に浸かり膝の間に長嶺を座らせる
『…なかなか恥ずかしいのですが……』
「十(とう)数えたら出ようか」
『はい、…あ、あの最後のお湯でいいのでクロと紅も洗ってもいいですか?』
「いいよ、というか今から出るから桶でこのお湯持ってきな」
『そんな…』
「アイツら少しも気にしないから」
『そういう問題ではなく…』
お湯でそんな会話をしていたときに戸がバーンと開いた
「きっさま!なんで組頭と一緒に入っているんだ!!!」
ものすごい勢いで開けたのは末っ子の諸泉尊奈門だった
「組頭すみません!!!こいつどっからか酒を持ってきて気づいたら飲んでいて!」
「ごめん!怜治!!」
「とりあえず早く部屋へ…」
『ッ…!?』
「え、ちょ、怜治くん?」
長嶺はみるみるとうちに顔や体が赤くなっていき近くにあった桶を尊奈門へ勢いよく投げ、その桶は尊奈門の頭へ直撃しカコーンっといい音が響いた
「ぅううぅ〜……」
頭へ直撃した尊奈門は酔いと相まってその場に倒れ目を回してしまった
「尊奈門ぉー!」
「ははは!なんとも豪快な娘だ!」
『押都さん!笑い事ではありません!!!』
「怜治!とりあえず何か隠して…!さすがに目に悪いよ」
『!ご、ごめん…!』
長嶺は顔赤らめながら前を隠してお湯へ浸かった
「組頭!申し訳ございませんでした…!」
「…謝罪とかはまた後日にしよう
怜治、私は先に出るね
落ち着いたら出ておいで」
『…………』
「ほら、いつまで女人の風呂を覗いてるのさ
さっさと尊奈門を連れて広間戻るよ」
「…」
タソガレドキの高坂、山本、押都、雑渡、ぶっ倒れた諸泉、善法寺は戸を閉め出ていった
『……本当に……さいってい…!』
長嶺は皆が居なくなってから数分後に湯から出て支度を済ませ皆がいると思われる広間へ向かった
「長嶺くん」
『山本さん…!あの、この寝間着…』
「良かった、着れましたか」
『一体誰の…』
「尊奈門の少し前ので申し訳ないんですがね…」
『い、いえ!あるだけありがたいです!!』
「うちの末弟が済まない…まさか酒を飲んで風呂に行くとは思わなかった」
『…あの、私もすみませんでした…動揺していたとはいえお風呂を貸していただいてる身分で投げてしまって…』
「あれは尊奈門が悪いですし、貸しているからという理由で見ていい道理はありません」
『…何かお返ししなければ…ここまで良くしていただいたのに…』
「何もいりませんよ」
『ッ……そんな…』
「とりあえず組頭のところへ案内します」
『…ありがとうございます…』
一旦ここで切ります!
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