テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
莉奈 オタク
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
少女レイ(みきとP)
レイと僕は、ずっと一緒だった。
小学校の頃からクラスは同じで、
休み時間も帰り道も、いつも二人だった。
休日には遊園地にも行った。
お揃いのキーホルダーを見つけて、二人で割り勘して買ったこともある。
レイはそれを鞄につけて、笑いながら言った。
レイ「これで、ずーっと一緒だね。」
僕も同じものをつけた。
それが当たり前みたいに思えた。
僕には友達があまりいなかった。
でも、レイがいればそれでよかった。
レイも同じだと思っていた。
変わったのは、九月の初めだった。
レイに新しい友達ができた。
最初は一人。
それが三人になって、五人になって、気づけばレイの周りにはいつも誰かがいた。
教室でも、廊下でも、帰り道でも。
僕の隣は、少しずつ空いていった。
胸の奥がざわざわした。
嫉妬していたわけじゃない。
レイのことを嫌いになったわけでもない。
ただ──
レイに近づくやつらが、嫌だった。
どうして僕のレイに触れるんだ。
どうして僕より先に笑わせるんだ。
だったら。
レイが僕を必要とする状況を作ればいい。
きっかけはとても簡単だった。
朝の教室。
僕は誰もいないうちに、レイの机の上に花瓶を置いた。
生徒「ねえ見て、あの子…」
そんな冗談みたいな笑い声が、すぐに広がる。
僕は少し離れた席でそれを見ていた。
胸の奥で、静かに思う。
──さあ。早く。
そう、君は友達だろ。
僕の手を掴めよ。
怖がって、泣いて、
誰にも頼れなくなって。
最後に僕のところに来ればいい。
「大丈夫だよ」
そう言って、僕が助けてあげるから。
でも、現実は少し違った。
レイは、ただ黙っていた。
机の上の花瓶を見て、
教室の空気を見て、
何も言わずに席についた。
周りの笑い声はだんだん強くなった。
ある日、誰かがレイの机を蹴った。
夏の終わりの教室。
静かな空気を引き裂くような悲鳴が響いた。
窓の外には、青すぎる空。
蝉の声が、うるさいほど鳴いていた。
なのに。
季節は何事もないみたいに進んでいく。
レイは、ただ耐えていた。
僕はその横で言った。
僕「大丈夫?」
レイは小さく笑って、言った。
レイ「君は友達だよね。」
その言葉が、胸に刺さった。
数日後。
夏の終わりの帰り道。
僕とレイは、いつもの踏切の前に立っていた。
蝉の声が、まだ少し残っていた。
レイはしばらく黙っていた。
それから、静かに言った。
レイ「……ねえ。」
僕は顔を上げた。
レイは僕を見ていた。
とても静かな目だった。
まるで、全部知っているみたいな。
警報機が鳴り始める。
カン、カン、カン。
電車の音が近づいてくる。
そのとき。
レイは、線路へ一歩踏み出した。
僕「──待って!」
声が出たのに、体は動かなかった。
レイの鞄についていたキーホルダーが揺れた。
僕とお揃いのやつ。
次の瞬間。
轟音と衝撃。
金属の風が吹き荒れる。
その衝撃で、
キーホルダーのチェーンが弾けた。
千切れた。
そして、砕けた。
小さな破片が宙に散って、
光の中に消えた。
まるで二人の繋がりが
その瞬間に断ち切られたみたいに。
それから、
僕は何度も、あの踏切に来てしまう。
立つたびに思い出すあの瞬間。
頭の中で何度も何度も。
今でも繰り返すフラッシュバック。
蝉の声。
二度とは帰らぬ君。
あの日の光景が、いつまでも蘇る。
ある日、踏切に立ったとき。
僕は見た。
線路の向こうに、
レイが立っていた。
夏の光の中で、少し透けている。
レイは何も言わなかった。
ただゆっくりと、僕を指さした。
蝉の声が、遠くで鳴いていた。
そして僕は、
その意味をまだ理解できずに立ち尽くしていた。