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少女レイ(みきとP)
レイと僕は、ずっと一緒だった。
小学校の頃からクラスは同じで、
休み時間も帰り道も、いつも二人だった。
休日には遊園地にも行った。
お揃いのキーホルダーを見つけて、二人で割り勘して買ったこともある。
レイはそれを鞄につけて、笑いながら言った。
レイ「これで、ずーっと一緒だね。」
僕も同じものをつけた。
それが当たり前みたいに思えた。
僕には友達があまりいなかった。
でも、レイがいればそれでよかった。
…レイも同じだと思っていた。
変わったのは、九月の初めだった。
レイに新しい友達ができた。
最初は一人。
それが三人になって、五人になって、気づけばレイの周りにはいつも誰かがいた。
教室でも、廊下でも、帰り道でも。
僕の隣は、少しずつ空いていった。
胸の奥がざわざわした。
嫉妬していたわけじゃない。
レイのことを嫌いになったわけでもない。
ただ──
レイに近づくやつらが、嫌だった。
どうして僕のレイに触れるんだ。
どうして僕より先に笑わせるんだ。
だったら。
レイが僕を必要とする状況を作ればいい。
きっかけはとても簡単だった。
朝の教室。
僕は誰もいないうちに、レイの机の上に花瓶を置いた。
生徒「ねえ見て、あの子…」
そんな冗談みたいな笑い声が、すぐに広がる。
僕は少し離れた席でそれを見ていた。
胸の奥で、静かに思う。
──さあ。早く。
そう君は友達
僕の手を掴めよ
そう君は独りさ
居場所なんて無いだろ
怖がって、泣いて、
誰にも頼れなくなって。
最後に僕のところに来ればいい。
「大丈夫だよ」
そう言って、僕が助けてあげるから。
二人きりこの儘愛し合えるさ
でも、現実は少し違った。
レイは、ただ黙っていた。
机の上の花瓶を見て、
教室の空気を見て、
何も言わずに席についた。
周りの笑い声はだんだん強くなった。
ある日、誰かがレイの机を蹴った。
夏の終わりの教室。
静かな空気を引き裂くような悲鳴が響いた。
窓の外には、青すぎる空。
蝉の声が、うるさいほど鳴いていた。
なのに。
季節は何事もないみたいに進んでいく。
レイは、ただ耐えていた。
僕はその横で言った。
僕「大丈夫?」
レイは小さく笑って、言った。
レイ「君は友達だよね。」
その言葉が、胸に刺さった。
数日後。
夏の終わりの帰り道。
僕とレイは、いつもの踏切の前に立っていた。
蝉の声が、まだ少し残っていた。
レイはしばらく黙っていた。
それから、静かに言った。
レイ「……ねえ。」
僕は顔を上げた。
レイは僕を見ていた。
とても静かな目だった。
まるで、全部知っているみたいな。
警報機が鳴り始める。
カン、カン、カン。
電車の音が近づいてくる。
そのとき。
レイは、線路へ一歩踏み出した。
僕「──待って!」
声が出たのに、体は動かなかった。
ただ、手だけが伸びた。
レイが踏み切りへと飛び出して、鞄についていたキーホルダーが揺れた。
僕とお揃いのやつ。
そして──千切れた。
そして、砕けた。
小さな破片が宙に散って、
光の中に消えた。
まるで二人の繋がりが永遠に断ち切られたみたいに。
レイ「──────」
次の瞬間。
轟音と衝撃。
夏のぬるい風が吹き荒れる。
足元には、どこまでも暗い真紅が広がっていた。
それから、
僕は何度もあの踏切に来てしまう。
立つたびに思い出すあの瞬間。
繰り返すフラッシュバック
蝉の声
二度とは帰らぬ君
永遠に千切れてくお揃いのキーホルダー
あの日の光景が、いつまでも蘇る。
あの日の君の顔が、あの日の君の声が。
君は友達、僕の手を掴めよ
君が居なくちゃ居場所なんて無いんだよ
…透き通った世界で愛し合えたら──
ある日、踏切に立ったとき。
僕は見た。
線路の向こうに、
レイが立っていた。
夏の光の中で、景色に透けている君。
レイは何も言わなかった。
ただゆっくりと、僕を指さした。
蝉の声が、遠くで鳴いていた。
そして僕は、レイの前で立ち尽くしていた。
夏が消し去った白い肌の少女に
哀しいほど、とり憑かれて仕舞いたい