テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ついに、カノジョの家に泊まることになった」と、友人に興奮して話した。
『お前のカノジョって、あのお嬢様だよな?』
「ああ」
『……渡したいものがある。カノジョの家に行く前に来い』
夕飯を外でとった後、いよいよカノジョの家でのお泊りとなった。
「電気消すね」
「おう」
消灯された部屋で、緊張で身を固めていると、友人に渡されたものが思い出された。
カバンをゴソゴソと漁り、渡された包みを開く。
果たしてロープだった。
思わず、窓から漏れていた月明かりに掲げてしまう。
「……それ何?」
警戒の色を込めた声で、カノジョが問うてきた。
「ロープ……だね」
「なにする気?」
カノジョが不信がったので、事の顛末を白状することにした。
「あなたの友達は、何を意図してロープを?」
「うーん。まあロープだし、縛るのかな?」
「私を?」
カノジョが、手で体を守る。
「そうしないように、僕の方を縛るのかも知れない」
意味深過ぎる。
抵抗されないようになのか、あるいは性癖的なすすめか?
「言っておくけど、そういう趣味はないからね」
「そうだよね。いざとなったら、首をくくれとか?」
「こんなところで、死なないで」
的確なツッコミだった。
ここじゃなきゃ、いいのかよ。
「僕が死んだら、このロープでかたどって……」
ジョークが過ぎたようで、睨まれた。
あらためて、アイデアを出す。
「……逃走用?」
「私から?」
「いや、ほら。よく旦那や彼氏が帰ってきて、ベランダに隠れるものの、逃げるに逃げられないシチュエーションがあるじゃない。そんな時にこのロープを……」
「そういう相手はいません」
「……はい」
「レクリエーション的な感じとか?」
「……たとえば?」
「なわとび……」
「なわとびなら、専用のものを渡すと思うなあ。そっちの方が安いし。……綱引きとか?」
「……やってみる?」
なぜか綱引きを、やることになった。
「よし、僕の勝ち、……だ」
割とカノジョとは、力が拮抗していた。
男の沽券を、なんとか守れたか。
「……ふう。三回勝負よ」
「……え?」
いつの間にか、二人共汗だくになっていた。
結局後半になるにつれ、カノジョが勝つようになった。
「いい勝負だったわ」
「……ということは、綱引きが正解なのかな?」
「……あ」
「何か思いついた?」
「朝日」
カーテンから、明るい日差しが差し込みだしていた。
……まさか、謎解きで一夜を無駄にする。
大人の男女が、一夜を過ぎてこんなことで汗だくで。
どちらともなく笑い出す。
これが友達の真意だったのだろうか?
後日、友人から真実を聞き出せた。
『僕はヒモじゃない』というツッコミが欲しかったそうだ。
いや、わかりにくいよ。
<了>
コメント
1件
「初めてのお泊り」、面白かったです!友人が渡してきたロープに振り回される展開、笑いました。最初は不穏な空気かと思いきや、綱引きで朝まで汗だくになる二人……そのギャップが絶妙で。最後のオチ「僕はヒモじゃない」にも納得でした。伏線の回収がしっかりしてて、一話完結の読み切りとして気持ちいい構成だなと思いました。また別の話も読んでみたいです!
五來 小真
29
#挑戦
五來 小真
44
#それはそうだけども
五來 小真
36