零が人工地震の装置を止めたあとも、揺れは収まらなかった。むしろ、その揺れの中に微妙な違和感が混じり始めていた。
「零さん…何をしたんですか。」
ルナが呆れた表情で零を見つめる。
「いやいや、俺のせいじゃないって! ほら、見てみなよ。」
零が指さした先には、装置の奥から現れた奇妙な影があった。人間のようだが、異様に長い四肢と、頭から伸びる無数の触手を持っていた。
「なんだ、あれ…」
ルナの声が震える。
「おいおい、ルナちゃん、そんなビビってどうするの?」
零は飄々とした口調で言いながらも、目だけは真剣にその影を捉えていた。
影が完全に姿を現すと、それは巨大な異形の怪物だった。しかし、その怪物の口から、はっきりとした人間の声が発せられた。
「…神域の零か。」
零はその声に少し驚いたような顔をした。
「俺の名前、知ってるんだ?」
「お前は神域の者だろう? 神域は…狩り手にとっての天敵だ。」
「天敵? そんな大層なもんじゃないって。俺たちはただの『掃除屋』みたいなもんだよ。」
怪物は零の言葉を無視し、低い笑い声をあげた。
「狩り手の名を汚す神域の存在。だが、貴様らがどれほど強かろうと、ここで終わりだ。」
怪物が咆哮を上げると同時に、零が動き出した。
「おー、なんか久しぶりに面白そうじゃん!」
零の身体から放たれる異能の波動が周囲の空間を揺らす。それは地震とは異なる、まるで敵の存在そのものを抑えつけるような力だった。
「ルナ、ガイア、少し下がっててくれる?」
「勝手なことを――」
ガイアが言いかけるも、零の眼差しを見て言葉を飲み込む。
「分かった。でも、死ぬなよ。」
「おっと、心配ありがとね。でも、俺は最強だからさ。」
怪物が襲いかかるが、零は軽々と攻撃をかわしていく。そして、指先で軽く空をなぞるような動きで、怪物の触手を次々と切り落としていった。
「やっぱ、あんたたち狩り手ってのは派手な見た目してるよな。でも、見た目だけじゃダメなんだぜ?」
怪物は怒りの咆哮を上げ、さらに巨大化していく。だが、零はその様子を見ても動じることなく、ニヤリと笑った。
「さあ、本気を見せてくれよ、狩り手さん。俺も少しだけ楽しませてもらうからさ。」
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