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僕は、走った。
何日も、何週間も来ないのは流石におかしい。
何か…何かあったのだろうか。嫌な想像ばかり膨らんでいく。
(確か…いつもこっちから来てた……)
そうして走っていくと、大きな病院が見えた。
こんなところにあったんだ、と思ったけど今の目的はここじゃない。
僕はすぐに視線を外して彼女を探そうとした。
「…あれ、ロシア帝国?」
……その声を聞いた瞬間、僕は声のした方を見ていた。
そこには………今正に探し求めていた相手がいた。
「プ……ロイ、セン…?」
僕がかすれそうな声をなんとか絞り出して言うと、いつものように微笑みながら彼女はこちらにやってきた。
「そうだよ、私。ちょっと会わないうちに何かあったの?」
僕は、久しぶりに彼女に会えた安堵感と同時に彼女が出てきたところを見て頭が真っ白になりそうだった。
彼女が出てきたのは、さっき僕が視線を外した大きな病院。規模からして、入院とかもするようなところなのだろう。
なんで?なんでこんなところからプロイセンが出てきたの????
僕は不思議で不思議で仕方なかった。
そんなことを考えていると、病院の方から誰かが走ってきた。
「姉さん!やっと退院できたのに急にどこかに行かないでよ!!」
「あ、ごめんねドイツ。友達を見つけちゃって。」
退院?姉さん?一体どういうことなんだろう…?
僕の頭は更に混乱していく。そんな中で分かったのは、プロイセンはどうやらこの病院に入院してていること、そして今日退院したらしい、ということだけだ。
「…………プロイセンは…病気、なの……?」
聞かずにはいられなかった。心配でならなかった。…お願い…お願いだから、軽い事であってほしかった。
…でも、やっぱり現実はそう甘くなかった。
「……私ね、生まれつき、体が弱くてさ。今まではなんとかなってきたんだけど…もう駄目らしくて。
………保って、あと数ヶ月だって。」
彼女の言葉に、僕は胸が締め付けられた。『ヒュッ』と、自分の喉から空気が抜ける音がする。
なんとかしてあげたいと思う一方、ただの学生である僕なんかにできることはないと僕の冷静な部分が言う。
……何もできない自分が、とても悔しかった。
もっと…もっとずっと、一緒にいたかったのに……それが叶わないなんて…。
「……そんな悲しい顔しないで?今すぐ死んじゃうわけじゃないんだからさ。」
プロイセンはそう言って苦笑する。でも、僕にとってはとても苦しい。嫌だ、死なないでほしい。……そこまで考えて、気づいた。
(あれ?なんで僕、こんなにプロイセンのことばかり考えてるんだろう……?それに、今までならこんなこと思わなかったのに………。)
………あぁ、わかった。そうか、僕は…
プロイセンのことが、好きなんだ。
…僕のモノクロだった世界に色をくれた彼女に、”僕”をちゃんと見てくれた彼女に…僕は、惹かれていたんだ。
「……そっ、か…。………それなら、君が退屈させないように死ぬまでたくさん話さないとね。」
泣きそうになっていないか。声は上ずっていないか。平静を、装えているか。
……今にも泣きそうなのを堪えている僕には、これを言うので精一杯だった。…想いを伝えたって、きっと彼女を困らせるだけだ。
…それなら、彼女が死ぬまで『友達』という関係でいたい。
……僕は、そっとこの想いに蓋をした。