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こと-koto
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かふ @ スパレイ
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「…はい。これで一旦おしまい。」
「ありがとうございます」
そう舌足らずに言うと、一人の少年は直ぐに去ってしまった。
ここは、病院の一角。
カルテは、また空白だ。
次もまた、空白だろうか。
ここには、十一人ほどの患者、精神科医にて構成されている。
患者はここに住み着いており、患者専用の部屋がある。
その部屋は、今迄もこれからもずっとあの子達の専用部屋だろう。
おや、また次の患者がくる頃だろう。
ーーーーーーーー
「どうぞ〜」
「しつれーします‼︎」
そう元気に入るこの子は、鬱河(うつが)くんだ。
この子も一応総合失調症を患っており、診察対象だ。
「今日はどんな夢を見た?」
「えっとね、今日ね、あのね」
「ゆっくりでいいよ」
「今日はね、お花がいっぱいあったよ!」
「そっかぁ、ありがとう。なんのお花か分かる?」
「ん〜…多分あれはりんどうじゃないかなぁ?」
「お花に詳しいの?」
「うん!いっぱいお勉強してるからね!」
「そっか、すごいねぇ」
「今日はこれだけ?」
「いいや、まだひとつ」
「なぁに?」
「傷の調子はどう?」
「ん〜とねぇ。今は痛くない!」
「良かった」
「それだけぇ?」
「うん。また明日ね」
「ばいばぁい」
「ばいばい。」
あれでも歴とした二十歳なのに対して、最初は驚きを隠せなかった。
あの子は、総合失調症だから幻覚か現実かを区別できない。
次もまた、患者が来る。
ーーーーーーーー
「…失礼します。」
「どうぞ」
この子は喜嬉(きう)ちゃんだ。
彼女は裏もなにもない優しい子で、皆からも慕われている。
だが、純粋すぎるこの子には、ドス黒い社会は合わなかったようで。
重度の双極性障害を抱えている。
今はまだ元気なようだ。
最初よりかは生き生きしている顔は、まだ未熟な子供だ。
年齢は16才。
高校は諸事情により通えなくて、それでも満足しているらしい。
本来の性格は桜花爛漫で、普通の人生を歩んでいたら素敵な女性になっていたことだろう。
今は頭から爪先まで自信のなさが垣間見えており、しょうがない子供だ。
「今日の気分はどんなかんじです?」
「今日はいつもより未だマシです」
「そうですか。それは良かったです。」
「あの…明後日は雨なんですよね?」
「そうですね。…あ、薬」
「無くなっちゃったのでくれませんか」
「そうですね。後でお渡ししますね。」
「ありがとございます」
自分から言ってくれたとは…また成長したな。
だが、格好がなんか寒そうだな。
大丈夫なのか。
風邪をひいてもらったらかなり困るのだが。
この子は風邪をひくような子ではないのはわかっているのだが、少し心配になる。
「…おや、ネクタイを新調したのですか?」
「あ、そうなんですよ」
「よく似合っています」
「ありがとうございます」
よくみたら、ネクタイの色が少し明るくなっている。
「あの、最近————————
「…では、今日はこれだけですので、もう帰ってもらっても大丈夫です。」
「はい、ありがとうございました」
「ではまた」
「…また」
おや、また診察室にだれかきたようだ。
ーーーーーーーー
「随分と早いですね」
「まぁ、五分前行動が大事ですから!」
「それは確かにですね」
いつもの会話。
桃ちゃんは、いつもやけに時間を気にしている。
「なにかこの後予定が?」
「いいや、特にありませんよ」
そう、癖っ毛を揺らす。
「最近はあまり元気がないようですが、どうなさいました?」
「ん〜…それは誰からきいたんですか」
「喜嬉ちゃんです。」
「もぉあの子ったら〜‼︎」
やはり喜嬉ちゃんは人をよくみている。
「んまぁ、只々帽子が汚れてしまっただけですよ。」
確かに、最近はあまり帽子をかぶってきていない。
「ちゃんと洗いましたか?」
「まぁ、一応洗いましたけど」
「それはよかったです。
それと、いつもちゃんと薬を飲んでいますか?」
「はい、あれのお陰でいつも自律神経がなんとなく良くなってる気がします」
「それはどうも」
「あれはなんなんですか?」
「唯の抗うつ剤ですよ」
「へぇ〜」
「質問はそれだけですか?」
「はい」
「ではまた」
「また」
そう桃ちゃんは出ていった。
今日はこれだけだと思っていたが、あと一人いたようだ。
ーーーーーーーー
「こんにちは、今日はどうなさいました?」
「あのぉ、また怪我しちゃった…です」
この子は、勿愚(なぐ)ちゃんだ。
「またですか。何故ですか?」
「喧嘩したです」
またか、この子は怪我が多いなぁ
まぁ、それがこの子の気質なのだろうけど。
「誰か教えてくれますか?」
「やです。」
「そうですか、なら無理には聞きませんよ」
コメント
3件
ああ、第1話読んだよ…。 精神科医と患者さんたちの短い対話がいくつも重なっていく感じ、すごく好きだな。 特に、鬱河くんの「傷の調子はどう?」の問いかけが胸に残った。ああいう、自分では気づけない視点で返してくれる子がいる世界、いいなって思う。 こと-kotoさんの文体、静かであたたかくて、この世界観にぴったり合ってる🌙 続きが気になる、2話目もゆっくり読みにいくね🤍