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👻🔪 🐙🌟
「」 『』
と、なっております。
それでは、どうぞ。
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まだ蒸し暑さの残る秋頃。
この時期になると思い出す、あの日の事を。そしてオレの心に残る一生のモヤを。
「長期任務が入った。」
そうぶっきらぼうに告げたのは同じヒーローの小柳ロウ。一見怖そうに見えるが蓋を開けば思いやりがあって、責任感が強くヒーローという自分の役に真っ当に向き合いその役目を果たす男。
そんな男だが、仲間への連絡はこれでもかを言うほど遅い。オレたちへの報連相は何処に?という程にね。なのに今回は自分の口で、しかも行く1週間前に告げてきたものだから明日は大雪でも降るのかと疑ってしまう。
『そうなんですか?ていうか報告なんて珍しい。明日大雪でも降るのかなー』
「るせぇな、オレが急に居なくなったら星導悲しむだろ?」
なんてふざけ笑う彼に
『そんなことありませんよ』
と返せば、明らかに耳をしゅんとさせたような顔をするからか笑ってしまう。
『ウソですウソです、寂しいですよー』
「世辞なんかいらねえよ!!」
嗚呼、ホントにツンデレだな。この人は。でもそれが可愛らしくて、カゲツとライにもそうだぞ!!寂しいぞー!なんて言われてしまえば何も言えなくなってしまう小柳くんはヴィランだなんだ言われながらも必要不可欠な存在なんです。
でもね、長期任務なんてたまにあるのになんでこんな早く報告なんか…そう違和感を感じてしまった。
上のヤツらも任務内容を教えてくれなかったですし、なんだ?この違和感は。
そうしているうちに小柳くんが行ってしまう日になってしまった。
1ヶ月は帰ってこれないらしく、それまではディティカ3人というわけだ。
やっぱりこの1週間は違和感が気になってしまって、駅まで送ることになったオレは小柳くんを引き止めたかった。
何か嫌な予感さえしてしまって、それが怖くて。多分顔は強ばってしまっているだろう、行ってらっしゃいと送る時くらいは笑顔で送り出してやりたいんですけど。
「星導、顔強ばってるけどどうした?」
やっぱり、強ばっていたみたいだしホントよく人の事見てるなあ、小柳くんは
『なんでもありませんよ』
なんて答えれば「そうか。」と微笑む小柳くんは列車の方へと向かおうとする。やっぱり送り出したくないですよ、この違和感と嫌な予感がある中で送り出すなんてバカなことはしたくない。
でも、ヒーローとして真正面から向き合って役目を果たす小柳くんが任務に行かないなんてそれはダメな気がして。プライドを潰してしまう気がして
『小柳くん…』
と名前を呼ぶが
『やっぱりなんでもありません』
と口を噤んだ。ちょっとでも足を止めてほしくて、やっぱ行くの怖いから一緒に来いとか行かないとか言ってくれないかと無理な願いをしてしまう。
でも、小柳くんはそんなオレの心に気付かず早足で行ってしまいますね。オレは貴方を背中を見送るしか選択肢はないのでしょうか。
いや、その選択肢しか許されていないんでしょうね 。
そうやって、そっと振り向いた小柳くんは
「じゃ、ここまでありがとな星導。行ってくるわ」
『行ってらっしゃい、いつでもるべちの所に連絡くださいね』
と列車へと乗り込む小柳くんに笑顔を向け軽く手を振った。
「気が向いたらな。」
『そんな〜、絶対くださいね』
無理な笑顔を作れば
「いってきます」
と告げた小柳くんの声と同時にドアが閉まる。
ゆっくりと走り出す列車が小柳くんとオレの距離を離していった、景色が滲んでいく。
行って欲しくなかった、上のヤツらが任務内容を教えないなんて危険な任務だというのはわかっていたのだ。わかっていたからこそ送り出したくなかった。
行かないで欲しかった_
1ヶ月後に帰ってきた小柳くんは、酷く焼け焦げていて安らかな顔だなんてとてもじゃ言えなかった。骨だけのその骨すら今にも砕け落ちてしまいそうな傷だらけの骨だった。
泣いちゃダメなのに、貴方の勇姿を讃えそして送り出してやらないといけないというのに。
泣いちゃダメだ、ダメだと思えば思うほど涙がとめどなく溢れ出てくる。
あの時、本当は言いたかった言葉を小柳くんに言えば未来は変わりましたか?
『いかないでください』
その言葉を。
蒸し暑さが残り夕日が目を刺激する時間帯。オレは目の前の大きい石に手を合わせる。
『見てますか?小柳くん。オレはいまやっと立ち直れそうです、だから空から見守っていてくださいね』
そうやって手を合わせ終えれば彼が好きだった食べ物や飲み物をお供えして後にする。
天国ではオレが来るまで来世にいかないでくださいね。