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30
食事を終え、シャワーを浴びて寝る支度を整えた二人。
ここはギルバートが一人で暮らしている家なので当然寝室は一部屋でベッドも一つしかない。
それに気付いたエリスは自分の寝床をどうしようか考えていた。
「エリス、ベッドはお前が使え。まあ城のベッドと違ってあまり寝心地は良くないだろうが、そこは我慢してくれ」
「え……、ですが……」
しかしギルバートから自身のベッドを使うよう言われたエリスは思う、自分がこのベッドを使うとギルバートはどこで寝るのだろうかと。
辺りを見回す限りベッドの代わりになる家具は無い。
椅子を二脚合わせたとしてもギルバートには小さくて寝られないだろう。
かくなる上はテーブルの上か床くらいのものだ。
「あの、私がベッドを使ってしまったらギルバートさんの寝る場所がありませんよ?」
「俺は床で寝るから問題無い」
「ええ!? 駄目ですよ、床で寝るなんて」
「姫様には経験が無いだろうが、床で寝るくらい普通のことだ。仕事中は野宿だってあるくらいだからな」
「……それでも、今はお仕事中じゃありません。それなら私が床で寝ます! だってここはギルバートさんの家ですもの、置いて貰っている私の方がベッドを使うなんておかしいです……」
そしてギルバートの話を聞いたエリスは、それならば自分の方が床で寝ると言い出した。
「気持ちは嬉しいが、男が女を床で寝かせて自分だけベッドを使うわけにはいかない。遠慮はしなくていい、お前がベッドを使ってくれ」
「いやです、私は使えません。それなら外で寝ます!」
ギルバートは何とかしてエリスにベッドを使わせたいと思っているのだけど、エリスはそれを頑なに拒否し続ける。
いつまでも続く押し問答に困り果てたギルバートは悩み悩んだ末、
「――分かった、ならば二人でベッドを使う、それでどうだ? まあ、あのベッドは二人用では無いが二人で寝れないことも無い広さだ。二人で使えばどちらかが床で寝ることも無い」
二人一緒にベッドを使う提案をエリスにした。
幸いギルバートが使っているベッドはセミダブルより少し大きめのサイズで二人一緒に寝れない広さでは無い。
勿論、ギルバートに下心など一切無いし、いつまでも折れないエリスに配慮して二人で使う提案をしたまでだ。
それは恐らくエリスも分かっているのだろう。
だがしかし、エリスは異性とベッドで寝るという経験が一度だけあり、それがシューベルトとの初夜で、あれは彼女が生きてきた中で一番苦痛な時間だった。
シューベルトは経験が無く怖がり嫌がるエリスを押さえつけて無理矢理犯す形で自身の欲を放ったのだ。
エリスにとってあの夜の行為はトラウマにしかならず、異性と同じベッドで眠る状況になればそれを思い出してしまいそうで怖かったのだ。
コメント
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ギルバートの「床で寝る」発言、男らしくてかっこよかったです!でもエリスが頑なに拒否するのも、彼女の過去を思うと無理もなくて…。トラウマを抱えながらもギルバートを気遣う優しさに胸が締め付けられました。あの押し問答、お互いを想う気持ちがにじみ出ていて、読んでいてじんわりと温かくなりました🤍