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東都銀行。
規制線の外には報道陣が押し寄せ、テレビカメラが銀行の入口を映し続けている。
上空では報道ヘリが旋回し、緊迫した空気が街全体を包み込んでいた。
その時、一台の黒い特殊車両がゆっくりと現場へ到着する。
車体には白い文字で刻まれていた。
能力犯罪総合対策本部。
警察官たちの表情が変わる。
「来た……。」
ドアが開き、一人の男が静かに降り立つ。
黒いコートを羽織り、無駄のない足取りで銀行へ向かう。
その男こそ――
御堂 鷹臣(みどう たかおみ)。
能力犯罪総合対策本部隊長。
「隊長。」
現場責任者が駆け寄る。
「犯人は四名。能力は重力、風、鋼化、電子妨害です。」
「人質は約五十名。」
「現在も銀行内に立てこもっています。」
御堂は銀行を見つめたまま、小さく頷く。
「状況は把握した。」
短い返事だった。
しかし、その一言だけで周囲の警察官たちの緊張が少し和らぐ。
-–
銀行内。
風能力者が入口へ目を向け、不敵に笑った。
「やっと来たか。」
電子妨害能力者がイヤホンに触れる。
「ヴォイアント様。」
『見えている。』
静かな声が全員のイヤホンへ流れる。
『能力犯罪総合対策本部隊長――御堂鷹臣。』
『予定通りだ。』
『風と鋼化で迎え撃て。』
『重力は人質を確保。』
『電子妨害は通信を維持しろ。』
「了解。」
-–
重力能力者が人質へ手を向ける。
一人の女性の身体がゆっくり宙へ浮かび上がった。
「きゃああぁっ!」
銀行内に悲鳴が響く。
重力能力者は入口に立つ御堂へ視線を向ける。
「一歩でも近付けば、この女を地面へ叩きつける。」
御堂は女性を見上げた。
表情は変わらない。
「人質を利用するか。」
重力能力者は静かに笑う。
「利用?」
「違う。」
「強い能力を持つ者は称賛される。」
「弱い能力しか持たない者は見下される。」
「能力の優劣だけで人間の価値が決められる。」
「そんな世界を、お前たちは守っている。」
銀行内が静まり返る。
御堂は一歩だけ前へ出た。
「……能力がある社会も悪くないぞ。」
エデンの四人が御堂を見る。
重力能力者が眉をひそめる。
「何だと?」
御堂は落ち着いた声で続けた。
「腐らせているのは能力じゃない。」
「人間だ。」
その言葉に、風能力者が舌打ちする。
「綺麗事だ。」
御堂は首を横へ振る。
「違う。」
「能力は道具だ。」
「使う人間が一流なら、一流の能力になる。」
「逆に、どれだけ優れた能力でも、使う人間が三流なら、その能力も三流だ。」
重力能力者は鼻で笑う。
「道具だと?」
御堂は真っ直ぐ重力能力者を見据えた。
「強い能力じゃない。」
「強い人間がいるだけだ。」
その言葉を聞いたヴォイアントが、小さく笑う。
『……なるほど。』
『それがお前の答えか。』
-–
御堂は静かに右手を前へ差し出した。
「来い。」
眩い光が右手へ集まり始める。
現場の警察官たちも、銀行内のエデンも、その光景を見つめる。
部下の一人が息を呑んだ。
「今回は……。」
光が弾ける。
御堂の手に握られていたのは――
一本の薙刀。
御堂は軽く薙刀を振る。
ヒュン――。
鋭い風切り音が銀行内へ響いた。
その瞬間。
ヴォイアントの声がイヤホンから流れる。
『気を付けろ。』
『あの男は……能力ではなく、人間が強い。』
風能力者が笑う。
「面白ぇ。」
鋼化能力者が拳を鳴らす。
「なら試してやる。」
御堂は薙刀を静かに構えた。
そして、互いの視線がぶつかる。
次の瞬間――
戦いの幕が上がろうとしていた。
第36話へ続く。
#無能力者
鳳蓮荘
1,017
コメント
1件
第35話、めちゃくちゃかっこよかったです……! 御堂隊長の登場シーンからもう空気が変わって、自然と前のめりになりました。特に「能力は道具だ。使う人間が一流なら、一流の能力になる」という台詞、痺れました。弱いから見下されるという価値観に真っ向から切り込む姿勢が、隊長の強さそのものだなって。最後に薙刀を召喚するところ、本当に絵になるし、次の戦いが待ちきれません! 続き、楽しみにしています🌷