テラーノベル
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ナッキはいつも通り気さくな感じで言う。
「良いよ、どうしたの? 皆揃っちゃって」
カーサは答えた。
「実は皆で話し合ったんですけど、池がここまで整備されて思ったんです、上の池下の池とは別にですねぇ、両方を合わせた名前、つまり王国の国名を決めて頂けないでしょうか? 是非、ナッキ様自らお決め下さいませ」
『お願いしますっ!』
カーサが言い終わると、打ち合わせ済みだったのだろう、モロコとカエルが声を揃える。
ナッキはその横でニコニコしている長老たちに聞く。
「メダカの皆もそれで良いの? 元々の呼び名とか、希望とか有ったら言っておくれよ」
長老たちは例の如くピタリと揃った声で答える。
『元の呼び名は判りません、それにメダカは王様に従います、王様がお決めになった国名でしたら、どんなに恥ずかしい物でも、みすぼらしくて惨めな物でも、胸中でどう思っていようと決して表には出さずに嬉しそうに受け入れます! ですからご安心を』
こんな含みだらけの言葉でも、基本純朴なナッキは気にも留めない。
「そっか、どうしようかなぁ、国名かぁ、ううーん……」
――――メダカとカエルとモロコの国だからぁ~、メカモ? カモメ? うーん何か無意味だしゴロが悪いなぁ~、せめて耳障りが良い様にしたいよなぁ~…… じゃあ、順番を入れ替えるとしてぇ、後は一匹だけの僕の種族名、ギンブナを最後につけようかな? でも…… 一応王様だからね、偉そうかもしれないけど強調しちゃったりしてみようかな? 駄目だったら考え直せばいいし…… 良しっ! まずは皆に提案してみる事としようっ!
「じゃあさ、こんなのはどうかなぁ? モロカメギンギン国、とかぁ?」
「えぇっ!」
「モロ亀ギンギン…… やだ、最低……」
「流石にそれは……」
「なぁ、ナッキ様って頭おかしかったんだな?」
「馬鹿っ! 聞こえるぞっ! それにしても、だけどよぉ~」
「おっほん! 公序良俗的に如何な物かと……」
「ウッシィ……」
何故か超絶不評であった、そう確信できたのはメダカ達の声故である。
『素晴らしい! どんな国名であってもメダカは辛抱できますよ! 腹は兎も角表面上は大賛成ですっ! 王様っ!』
「ごめん、もう一度考えてみるよ……」
天真爛漫でどちらかと言うと鈍い方のナッキであっても、先程皆に告げた第一案が却下されるべきものである事には気が付くことができた……
何故駄目なのか、その理由は判らなかったが、兎に角、止める事にした。
再び熟考を始めたナッキは思う。
――――別に種族名を羅列する必要はなかったんだなぁ、何が良くなかったのか具体的には判らなかったんだけれどぉ…… でもまあ、モロコやカエルみたいにこれから新しい仲間が増えるかもしれないし、あんまり考えたくは無いけれどここを離れる種族だって居るかもしれないしね…… そうだ、この二つの池の特徴を国名にしよう! そうだそうだっ! そうしようっ! だったら……
「えっとぉ、嵐も大雨も何のその三つの砦(とりで)がゴツイ国、かな? いやー違うなぁー、子育て特化の暮らし易い、男女共同参画協賛の国…… 覚え難いよなぁ…… えっと、グルメと砦の町、ウハウハ気分で脱日常を、お得で満足! 近場の楽園満喫国っ! 安っぽいんだよなぁ~、むむむぅ……」
バッシャーンッ!
思い悩んだナッキは、周囲に一言も言わないままで、鰭と全身を力強く動かして下の池から大ジャンプをしたのである。
空中で体を捻りながら、夕日に照らされ始めた上の池の湖面と、周囲の木々の影が射し、それによって早くも静謐(せいひつ)なムードを醸し出している下の池の様子を見回すナッキ。
その目には、上の池の水位が下がった事で広がった乾燥した池のエッジと、逆に水位が増えたことで池の際まで広がり始めた下の池周りの丈の低い草花、その色鮮やかな花々が、競い合うように彩(いろどり)の競演を展開している様が映ったのである。
チャポンッ!
水中に戻ったナッキはやや恍惚とした表情を浮かべ、周囲に集まったメンバーに言うのであった。
「この池は美しいよ…… 凄く綺麗な池なんだ…… 皆ぁ、こう言うのじゃ駄目かな? 美しい池、いいや、『美しヶ池』とか? どうだろうか? 『美しヶ池』! 駄目かな?」
『オオオォォォ!』
『良いですねっ! 王様っ! 漸(ようや)くまともな事をお言いになってメダカも一安心ですっ!』
王様って何? 何なのこの手の平返し……
そう思わざる得ないほどの、大絶賛であった。
それよりもショックな事に、さっきまでイエスマンだったメダカ達が、その発言全てを全否定したのである。
軽く傷付きながらもナッキは下腹に意識を持っていって頑張って言う、因みに半泣きで涙がしとどに頬を濡らしながらであった。
「そっか、そ、そっかっ! み、皆がそれで良いんならそうしよっかぁ? う、う、『美しヶ池』、そうしようよぉぅっ!」
モロ亀ギンギン国は誕生出来なかった……
王様であるナッキ自身の心が折れてしまったのだから、それも止むを得ない事だったのかも知れない……
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