テラーノベル
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「近いうちにちゃんと言う」
あの日から。
僕はずっと落ち着かなかった。
授業中も。
昼休みも。
家に帰ってからも。
頭の中にあるのは悠真のことばかり。
言われなくても分かっている。
悠真が伝えようとしている言葉も。
そして。
自分が返したい言葉も。
◇
金曜日。
放課後。
写真部の部室。
僕は写真の整理をしていた。
だけど全然集中できない。
同じ写真を三回も開いていた。
「先輩」
蓮が隣から覗き込む。
「また悠真先輩の写真見てますね」
「っ!?」
思わず変な声が出た。
蓮は呆れたように笑う。
「分かりやすすぎです」
「そんなことない」
「あります」
即答だった。
「最近ずっとそうです」
逃げられない。
蓮は本当に人を見るのが上手い。
しばらく沈黙が流れる。
そして。
蓮は少しだけ笑った。
「先輩」
「ん?」
「ちゃんと幸せになってくださいね」
その言葉に胸が締め付けられる。
「蓮……」
「俺、本気でしたよ」
優しい声だった。
だから余計に苦しい。
「ごめん」
「だから謝らないでください」
そう言って。
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蓮はいつもの笑顔を浮かべた。
「応援はしてませんけど」
「どっちなんだよ」
「ライバルですから」
ふっと笑いがこぼれる。
蓮も笑った。
少しだけ寂しそうに。
◇
その日の帰り。
校門を出たところでスマホが震えた。
送り主は悠真。
『今から来れるか』
短いメッセージ。
場所も書いてある。
学校近くの河川敷。
胸が大きく跳ねた。
たぶん。
今日だ。
◇
夕暮れ。
川の水面が赤く染まっている。
風は少し冷たい。
そこに悠真はいた。
制服姿。
フェンスにもたれながら川を見ている。
僕が近づくと。
悠真はゆっくり振り返った。
「来たか」
「うん」
それだけで会話が止まる。
気まずいわけじゃない。
ただ。
お互いに何を言うべきか分かっているから。
◇
「俺さ」
先に口を開いたのは悠真だった。
低い声。
少し緊張しているのが分かる。
「昔からお前といるのが当たり前だった」
僕は黙って聞く。
「だから気づかなかった」
悠真が苦笑する。
「蓮が現れて」
「……」
「お前があいつと楽しそうにしてるの見て」
夕陽が横顔を照らす。
「取られるみたいで嫌だった」
胸が苦しくなる。
でも。
嫌じゃない。
むしろ嬉しい。
「嫉妬してた」
悠真はまっすぐ僕を見る。
逃げないように。
誤魔化さないように。
そして。
「好きだ」
時間が止まる。
風の音も。
川の流れる音も。
何も聞こえなくなる。
「湊」
名前を呼ばれる。
優しく。
大事なものみたいに。
「好きだ」
二度目。
今度ははっきりと。
告白だった。
◇
本当は。
驚くべきなのかもしれない。
でも。
不思議なくらい落ち着いていた。
だって。
ずっと待っていたから。
聞きたかったから。
「悠真」
名前を呼ぶ。
声が震える。
それでも。
ちゃんと伝えたかった。
「僕も好きだよ」
悠真の目が見開かれる。
たぶん。
予想していなかった。
「ずっと前から好きだった」
本当は違う。
自覚したのは最近だ。
でも。
振り返ってみれば。
好きになる理由なんてずっと前から積み重なっていた。
優しいところ。
不器用なところ。
僕を大事にしてくれるところ。
全部。
◇
しばらく。
二人とも何も言えなかった。
ただ見つめ合う。
信じられないみたいに。
すると。
悠真が小さく笑った。
「マジか」
「うん」
「夢じゃない?」
「たぶん」
「たぶんかよ」
二人で笑う。
緊張が少しだけほどけた。
そして。
悠真はゆっくり手を伸ばした。
少しだけ迷うように。
僕も逃げなかった。
指先が触れる。
それだけなのに。
胸がいっぱいになる。
「これからも」
悠真が言う。
「隣にいてくれ」
僕は頷いた。
「うん」
迷いなんてなかった。
◇
その頃。
駅前。
「やっぱりそうなりますよね」
蓮は一人で空を見上げていた。
少しだけ悔しい。
少しだけ寂しい。
でも。
それ以上に。
二人のことをよく知っていた。
だから。
「負けたなあ」
そう呟いて笑う。
そして。
カメラを構えた。
夕焼けの空を切り取る。
シャッター音が響く。
新しい一枚。
新しい始まり。
三人の関係もまた。
少し形を変えながら続いていくのだっ
た。
一応終わり
完結!
コメント
1件
ああ、ついに来ましたね…!悠真からの告白、湊くんがずっと待っていた言葉がようやく届いた瞬間、読んでいて胸がぎゅっとなりました。二人とも本当に不器用で真っ直ぐで、互いを想う気持ちにじわじわと感動させられました。特に「好きだ」って二度重ねる悠真くんと、「僕も」と震えながら返す湊くんの空気感がとても丁寧で好きです。ラストの蓮くんの描写も切なくて、この三人の関係がこれからどう変わっていくのか楽しみです。素敵なエピソードをありがとうございました🌷