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#希望
#感動的
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◇◇◇◇
刃が走るたび、血が飛び散る。
城門を抜けた瞬間から、戦いは始まっていた。
虚ろな瞳の兵たちが、波のように押し寄せる。叫びも、躊躇もない。ただ命じられるままに剣を振るうだけの存在。
レオニスの剣が、一閃する。
首が飛び、胴が崩れ、音もなく床に沈む。
続けざまに、クリスの剣が横薙ぎに振るわれた。二人、三人とまとめて薙ぎ払われ、血飛沫が石畳を赤く染める。
それでも、兵は止まらない。
倒れても、倒れても、次が来る。
「……なんなんですか、こいつらは!」
クリスが吐き捨てるように叫ぶ。
呼吸は荒く、だが動きは鈍らない。鍛え上げられた身体が、疲労をねじ伏せている。
その横で、セレナが短く答えた。
「……全員、操られています」
走りながらの言葉。
振り返ることもなく、ただ前だけを見据えている。
その声に、躊躇はなかった。
レオニスの剣が、もう一人の兵を斬り伏せる。
そのまま、冷えた声で言い放った。
「クリス全員殺せ」
一瞬の間もない命令。
「……はい」
返答もまた、迷いはなかった。
刃がさらに鋭くなる。
斬り伏せる速度が、わずかに上がった。
セレナは何も言わない。
助けるべき命であることは分かっている。
だが今、手を差し伸べれば、全員が死ぬ。
それもまた、分かっていた。
だから、目を逸らさない。
ただ前へ進む。
城内に滑り込んだセレナたち。
「扉を閉めろ!」
レオニスが叫ぶ。
その前に立ちはだかった兵を、踏み込みと同時に斬り捨てる。
その隙に、クリスが扉へと駆け寄った。
背後から押し寄せる兵たちを、間一髪で押し返し、重い扉を力任せに閉じる。
鈍い音が、城内に響いた。
外から、何度も叩きつけられる衝撃。
だが、扉は開かない。
ようやく、追撃が遮断された。
三人は、その場でわずかに足を止める。
荒い呼吸が重なり、静まり返った空間に響いた。
血と鉄と瘴気の匂いが、混ざり合っている。
レオニスが、息を整えながら口を開く。
「……魔族の位置は分かるか」
視線は、すでに上階へ向いている。
セレナは、ゆっくりと目を閉じた。
「……濃すぎます」
小さく呟く。
「ですが、上にいるのは確かです」
目を開く。
「ただ……どこかまでは分かりません。おそらく、一番瘴気の濃い場所に籠もっています」
「なぜだ」
短い問い。
セレナは即座に答えた。
「この国の外には、魔女たちがいます。魔族が瘴気が薄い場所へ出れば、即座に察知され、一斉に攻撃を受けるでしょう」
その結末を、淡々と告げる。
「どれだけ強くても、その攻撃には耐えきれません」
レオニスはわずかに眉をひそめた。
「……なら、ここに来る必要はなかったのではないか?」
「国民は見捨てることになるが、魔族はいずれ外へ出る」
だが、セレナは首を横に振る。
「いいえ」
その一言に、強さが宿る。
「瘴気は、放置すれば濃くなり、広がります。魔女たちが抑えていても、限界はあります。手の届かない規模になれば、もう止められません」
レオニスは、短く息を吐いた。
「……そうか」
そして、小さく笑う。
「つまり、英雄が必要ということだな」
セレナは、迷いなく頷いた。
「はい」
その瞬間だった。
空気が、変わる。
ふっと、光が落ちた。
城内が、夜に沈む。
「なんですか!?」
クリスが反射的に身構える。
次の瞬間、無数の光が瞬いた。
星だった。
天井も、壁も、床すらも。
すべてが淡い星光に満たされる。
夜空が、そのまま城の中へと流れ込んできたかのように。
セレナの瞳が、わずかに見開かれる。
「……リースペイトの魔法です」
確信の声。
星々が、ゆっくりと動く。
線を描くように。
ひとつの道を、浮かび上がらせる。
それは、まるで導いているようだった。
「……道を示している」
クリスが呟く。
セレナは頷いた。
「魔族のところまで、案内してくれるみたいです」
レオニスは、口元をわずかに歪める。
「いいだろう」
一歩、踏み出す。
星の光が、その先を照らす。
その言葉に、二人も続いた。
三つの影が、再び走り出す。
導かれるままに。
決戦の中心へと。