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僕は鞄を堤防に置いて、下へ降りる。
靴を脱いで靴下も脱いで、裸足で砂浜を歩くなんていつぶりだろうか。
そうだな…6歳とかだな、母さんと父さんと一緒に手を繋いで歩いたっけ…。
海の地平線に太陽が沈もうとしている、この時間帯の砂浜は少し冷たかった。
僕は海水へ足を入れた、冷たかった。もう夏も終わり9月の海は足にこれから来る寒さを伝えているかのようだ。
下半身が海水へ浸かり、海水の冷たさにも慣れた。後ろを向くと1人の女の子がこちらを向いている。
僕はその女の子に見覚えがあった。でも思い出せない、僕の頭があの子を拒んでいるかのように思い出させてくれない。
止めようとしているのか、僕に話しかけて来ている。僕はその声すらもう聞こえない、この身体で生きていて何が出来るというのだろうか。
ならもう一度やり直そう、今日僕はこの人生に
『終止符を打つ』
朔 琉華(さく るか)
この名前を母さんと父さんにつけてもらった。この名前で生きるのももう一生ない。
目の前が暗い、何も見えない。
でも周りがうるさい、神様か何かが喧嘩でもしているのだろうか。
それに何か甲高い音が鳴り響いている。僕の嫌いな目覚まし時計の音だ…朝から憂鬱になる音。
それに聞いた事のある声も聞こえる。
あぁ、幻聴が聴こえているのだろうか。
「琉華!!」
聞いたことある声に僕は驚いた。
「琉華、早く起きないと入学式遅れるよ」
「入学…式…?」
「なんで、僕は確か昨日海で死んだはずじゃ」
「何おかしなこと言ってるの、早く支度しなさい」
意味が分からない、何故母さんがこの場にいるのだろか、それに入学式って3年前の話だ。
何もかも分からなかった、でも今分かるのは目の前の壁に埃が1つもない綺麗な海花高校の制服があった。
とりあえず、ぼーっと考え事をしていたら母さんに怒られたので一応謎のまま支度をする。
なんで僕が入学式の日に戻っているんだ、これから新しい人生を歩もうとしていたのに。
「琉華、早く食べないと入学そうそう遅刻するよ」
「うん」
僕は素っ気ない返事を母さんに返した。
「海花高校楽しみにしてたもんね、軽音部に入りたくて選んだ高校だもんね」
そんな選び方したっけ…
「うん」
また僕は素っ気ない返事を返した。
「ほら、もう出る時間だよ」
「うん」
僕は海で脱ぎ捨てたはずの靴をもう一度履き、堤防に置いたはずの鞄を肩にかけ、玄関の扉を開けた。
開けた瞬間、とても眩しい光に覆われた。
外はとても明るく、空は雲ひとつない快晴だった。
「行ってらっしゃい」
後ろから母さんに声をかけられた。
だけど僕は返さず、そのまま高校へ歩いていった。
僕が終止符を打ったのは3年後の9月。
僕は今高校1年生…戻っているとしか思えない。
「琉華!」
前に手を振りながら僕の名前を呼ぶ子がいる。
「おはよっ!朝から元気ねぇなー笑」
「…」
あぁいるのか、まだこの子がいるのか。
「おはよう、朝緋」
僕は少し微笑しながら友達に挨拶をした。
蓮香 朝緋(はすか あさひ)
この子は中学からの僕の唯一の友達だ。高校も偶然一緒でこうやって朝は一緒に行こうと言われた。
朝緋は勉強はまぁまぁだけど、運動神経が良くて部活では引っ張りだこだった。
「今日、入学式だな」
「そうだね」
「俺さーまだ入る部活決まってないんだよなー、琉華は部活どうするんだ?」
「僕は…帰宅部かな…」
「えっ!?何もしないのか?人生に1度の高校生活だぞ、?」
「うん、僕はこのままでいいかな」
「そうかぁ」
「じゃ、俺先に行っとくぞ!!また学校で!!」
「うん、また学校で」
朝緋は相変わらず朝から元気で、こんな僕と一緒にいていいのかたまに分からなくなる。
まぁもう少しの我慢だね
ガラガラ
下駄箱で自分のクラスを見て1-3がある2階へと階段を上がりドアを開けた
まぁ何組かも知ってたんだけどね…
「皆おはよう、席に着いてくれ」
「「はーい」」
「僕は1-3の担任になった間宮だ、1年間よろしく」
ほんとにこの人は愛想のない先生だ、数ヶ月後にはハズレの先生と呼ばれるぐらいに、
「入学式は体育館でやる、HRが終わり次第皆体育館へ向かってくれ」
「じゃ、僕は職員室に帰る」
「ではこれから20xx年度入学式を始めます」
「起立、礼」
「着席してください」
その後校長先生の挨拶や色々お話か終わっていった
「では次に生徒代表の式辞に移ります。」
「生徒代表、1年2組明日香聖良(あすかせいら)」
「はい!」
ドクン
その時僕の心臓は1回大きく飛び跳ねた
その明日香聖良の顔に良く見覚えがあった
死ぬ時に浜辺にいた、あの子だ
僕の脳が直接話しかけてるように、あの子に関わるなと言っているかなように拒絶しているのが分かる
分からなかった、なぜこんなにも拒絶しているのか
なぜなら…あの子との記憶が一切ないからだ。
【1話 ~完~】