テラーノベル
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四月の終わり、駅前のロータリーは小雨に濡れていた。
傘を忘れた私は、コンビニの軒下で立ち尽くしながら、スマートフォンの画面を何度も消してはつけていた。
「……やっぱり、ここだったんだ」
背後から聞こえた低い声に、心臓が跳ねる。
振り返らなくても、誰の声かわかってしまった自分が怖かった。
「……久しぶり」
そこに立っていたのは、三年前に何も言わずにいなくなった人――**高瀬 恒一(たかせ こういち)**だった。
高校の同級生。
初恋。
そして、私の心に何も残さずに消えた人。
「元気そうでよかった」
彼はそう言って、少し困ったように笑った。
昔と同じ笑い方だった。
私は笑えなかった。
会いたかったはずなのに、胸の奥がひどく痛んだ。
「……どうして、今さら」
問いかける声は、思っていたよりも震えていた。
「偶然だよ。仕事でこっちに戻ってきただけ」
その言葉はあまりにも軽く、三年間の空白を埋めるには足りなかった。
雨音が強くなり、私たちは仕方なく同じ傘に入る。
肩が触れそうな距離。
なのに、心は遠い。
「……また、会える?」
そう聞いたのは、私のほうだった。
情けないと思いながらも、言葉が勝手にこぼれてしまった。
彼は一瞬だけ目を伏せ、それから静かに頷いた。
「うん。ちゃんと話そう」
その「ちゃんと」が、何を意味するのかもわからないまま、
私は再び彼と同じ時間を歩き始めてしまった。
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