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⚠️注意⚠️
・太宰治×ゴーゴリ(ドストエフスキー×ゴーゴ リ)です。地雷の方はお気をつけてください
・作者の知識はアニメ止まりです。
・作者は小説を書くことは初心者なのでご了 承ください。
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𑁍あなただけを見つめる(情報屋ゴーゴリ)
目の前で親友が死んだ。残ったのは1本の腕だけ。少し前まではドスくんが死ぬ瞬間を心待ちにしていたのに、今胸にあるのは歓喜ではなく、途方もない哀しみだけだった。遂に天人五衰のメンバーは僕だけとなった。リーダーの居ない組織はもう組織とは言えない。かといって誰もいなくなった天人五衰を引き継ぐ気があるわけもなく。ではどうやって今世を生きる?ムルソーから離れた裏路地で1人悶々と考えていた。その時……
「やあ。ゴーゴリ。」
後ろから迫ってくる気配には気がついていた。伊達に天人五衰をやっていたわけじゃないので。ただ、今は会話する気分にはなれない。もう居ないはずの親友を、想っていたかったのに……
「無視とは随分なことするじゃないか。」
今の僕は少しばかりささくれだっているので、いつものように明るくは振る舞えないが、相手は返事をしろとうるさいので、仕方なしに答えてやる。
「君は変だね。自分自身を殺そうとしていた相手に話しかけるだなんて。もしかしてマゾなのかい?」
「途方に暮れているだろう人を救ってあげるだけさ。それに、君は使える。」
「協力なんてごめんだよ。僕は真の自由を手に入れたいんだ。」
「今後が定まっていない急に与えられた自由に右住左住しているのは誰だい?」
確かにそれは言えていた。もう天人五衰に縛られることは無い。それは急な自由を示す。だが、今後はどうしたらいいのか。教えてくれる親友は一足先に魂の鳥となって飛び立った。
「君にいい仕事があるのだよ。」
「武装探偵社が雇っていた情報屋が蒼の使徒の事件で銃殺されてしまってね。君の異能力は情報を盗むのにもってこいだ。どうだい?武装探偵社専属の情報屋になる気はないかい?」
“人とは結局、不自由が心地良いのです。”
向日葵が咲き誇る畑で、ドスくんは昔、そう言っていた。確かに、僕が真の自由を手に入れる日が来るのなら、それは死ぬ時だろう。
「ドストエフスキーは死して尚、君を縛るのだね。」
その言葉に驚いて、勢いよく太宰くんに振り返った。彼の目元は釣り上がり、目を細めていて、どこか怒っているようだ。それも一瞬で、太宰くんはいつもの顔に戻り、僕の手をいつの間にか取っていた。
「さぁ、武装探偵社に行こう。ゴーゴリ。」
これからは武装探偵社で、心地良い不自由が待っているのだろう。確かに僕の心はドス君に奪われ、縛られているかもしれない。
「ゴーゴリ、道徳心がなければ幸せにはなれないよ。」
だが、太宰くんは道徳心を何よりも嫌う僕の本質を見抜いてくれた。きっとこの人なら、僕を幸せに導いてくれる。
『いつか君も、私だけを見てくれるのだろうか。』
太宰くんがなにか言った気がしたが、上手く聞き取れなかった。これから始まる探偵社員としての自分の物語が、少し楽しみになった。太宰くんが握った手を握り返して探偵社に向かって歩き出した。
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𑁍移り気(サラリーマンゴーゴリと同僚の太宰)
まあ、数ヶ月前の話なんだけど、当時お付き合いをしていた彼女に振られちゃったんだよね…。別れる理由としては……
『貴方本当に私の事好きなの?』
正直、好きだよとは言いがたかった。僕は親から愛されたことがなくて、自分を産んでくれた親のはずなのに、両親に対して愛情を感じなかった。愛しかたがわからず、小・中・高・大で出会った女性に対して、性愛なども全く感じなかったからだ。きっと母親の胎内の中に愛するという感情を置いてきてしまったんだろう。別れた女性からの問のことがどうしても頭から離れず、キーボードを押す手が遅くなった頃、ちょうど昼休憩の時間なった。1時中断して食堂に行く。コーヒーメーカーで豆を炊いていると後ろから同僚の声が聞こえてきた。
「ゴーゴリ。私のも注いで〜。」
「自分で注ぎなよ。」
「やだ。めんどくさい〜」
「もぅ。」
もう一人分の豆も入れて、近くにあるテーブルに座る。太宰くんも同じテーブルの向かいに座った。
「ゴーゴリ最近元気ないじゃないか。どうかしたのかい?」
「数ヶ月前彼女に振られてしまってね。」
「どうしてだい?」
太宰くんは目を丸めて興味深そうに聞いてきた。両肘をテーブルにつき、指を組んだ上に顎をのせる仕草は、やはりイケメンは違うなと再認識させられるを得ない。
「僕が本当に愛しているのか、疑心暗鬼になってしまったみたいで……最近はその事で悩んでるんだ。」
たき終わったコーヒーを飲んで、普段美味しいと感じていた味は今ばかりは苦かった。またもや太宰くんは目に丸めた。
「ちなみにゴーゴリはその人のこと好きだったのかい?」
「……わからないんだ。愛し方も、愛され方も。」
窓の外の風景を眺める憂い気な顔は、太宰の心を鷲づかんだ。
「じゃあ、私が教えてあげよう。 」
「どうやって?」
教えてくれると言うので窓から目を離し太宰くんの方を見る。
チュッ
椅子から立ちテーブルを挟んで前のめりになった太宰くんは僕の唇を食む様にキスをした。突然の出来事で目を白黒させていると、太宰くんの右手がそっと僕の左頬に添えられて口の中に下を入れられた。
クチュレログチュ
いやらしい水音を立てながら口内を太宰くんの舌が荒らしていく。上顎を撫で、歯列をなぞり、舌を絡ませ、ジュッと吸われる。それだけなのに快感を拾ってしまい腰が重くなる。息が苦しくなって目が潤む。肩をドンドンと叩くとようやく顔が離れた。2人を繋ぐ銀色の糸が往生的でいやらしい気分になりそうだ。
「はぁ…はぁ……なに…するの……はぁ」
息切れしながら問う。
「これはまだ第一歩だよ。これから君は愛を知ることになるんだ。浮気はダメだよ?」
「浮気も何も……僕達は付き合ってない」
「へぇ?付き合ってもいない男とディープキスしたんだ。お仕置しないとね?」
「理不尽じゃない?!」
別れた彼女とは違う何かが芽生えるような予感がした。紫陽花のように色を変えた何かが……。
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𑁍神聖と信仰(狐族太宰×九尾の白狐ゴー)
これは大正の時代の話。横浜の一角にそれはそれは大きな大きな大社があった。その神社が祀るは縁結びの神。艶やかなボブの黒髪。ワインレッドの威厳のある瞳を持ち、妖艶な笑みをたたえる。眉目秀麗で独特な色香を持ち、その姿を人目するだけで皆たちまち彼の虜に。そして、恐ろしい程にその神は頭が切れる。その神の名は不思議なことに誰も知らぬのだ。だが皆は彼をしたって九尾の黒狐様と呼ぶのだ。この大社の特徴は巫女が人ならざるものということ。神主も入れ、大社と黒狐様をお世話するのは揃って狐族なのであった。狐族は神の次に神聖な者たちとして良い待遇を受ける。だが、同じ種族どうしで、争いだって起こるのだ。
赤子の頃から厭われ続けた。親にも愛されず、親戚からは蔑んだ目で見られる。兄弟からは苛立ちの矛先にされ、顔以外の体はほとんど暴力の後で傷つけられた。主人達がこうなのだから、私には良い待遇を与える必要がないと判断した使用人達は、私の食事も部屋のメンテナンスと掃除も私の服の洗濯もないがしろにしていた。いつしかこんなにも辛い生活に耐えかねて、自殺願望さえ持つようになってしまった。誰も味方がいない家に帰りたくなくて、家から少し離れにある屋敷の塀に体を預けてうずくまる。もはや枯れた目からは涙など出やしないが。
「おや?どこの子だい?ここら辺の子供じゃないね。歳は5つくらいかな?」
いつの間にか私の体に影がかかっており、目の前に人がいることが今更知った。誰だろうと思い、顔を上げるとそこには神主の服を着たとても美しい青年がたっていた。色白でぱっちりと開いた瞳は色も形も可愛らしい。艶やかな神聖さを感じる白髪を三つ編みにしている。薄く桃色が乗った唇はプルプルとしていて美味しそうだ。私は生まれて初めて、美しさと神々しさを感じた。
「君は誰だい。」
あまりにも美しいから、この人のことが知りたくなって、何者かを聞いてみた。
「名前は教えられないんだ。君は狐族だろう?ならいつかきっと、僕の正体に気づくはずさ。」
朗らかに微笑んだその顔は心を温める。
「さぁ。もう遅い時間だ。お家へおかえり。」
「嫌だ。帰らない。」
「どうしてだい?」
「あんなの家族じゃない。」
その人はゆっくりとしゃがんで私の顔を覗き込んだ。私がまた俯くと形のいい手が優しく背中を摩ってくれる。
「ごめんね。出来れば引き取りたいんだけど、いろいろあってダメなんだ。」
きっと私の身体中に巻かれた包帯を見て何かを察したのだろう。
「いつかまた、あってくれるかい? 」
「きっと会えるさ。」
その人は優しく私を包み込んで背中を一定のリズムで叩く。
「さぁ。お家へおかえり。」
心地よいリズムで段々と意識が薄れていく。きっと次目覚める時は自室のせんべいのようなうすさの布団の上だろう。なんだかそんな予感がした。
「また神主の服を借りて外へ出ましたね?貴方は何度言ったらわかるのですか?」
「やだな〜。怒らないでよドス君。」
「次があったら監禁ですよ?」
「独占欲が強すぎるよ黒狐様……」
「はぁ……貴方は龍神に狙われているんです。いつ攫われてもおかしくはないんですよ?」
「あと13年の辛抱さ。」
「はぁ〜……まったく。」
九尾の黒狐。彼は神であり、時に白狐の騎士である。庭の泉に浮いている蓮の花と睡蓮は月光を受けて煌めいていた。