※R無し
「ガチでさ、ビジネスとかじゃなくていふくんマジ無理だわ」
そう聞こえたのは彼の声
いつもばかやってる相方の声
その言葉に胸を打たれたのは何故だろうか
今日は会議の日
いつもの部屋にメンバーが集まる
今日は特に予定もないから30分前くらいに行ってみる
どーせあの社長はもう居るのだろう
電車を降りて駅から少し歩く
そこで、黒く染まった彼の頭が見える
俺の相方で、ビジネス不仲をやってる彼
不仲をやろうと言い出したのはこっちで、キャラ的にもいいかなって思ってた
今ではビジネスって呼ばれてるけど
それでも俺は別にいいと思ってる
彼が電話をしながら歩く
危なっかしいなと思いつつ、後ろから見る
だんだん近くなって、声が聞こえる
肩に手を当てようとした時彼は言った
「ガチでさ、ビジネスとかじゃなくていふくんマジ無理だわ」
彼の声が心に、心臓に直接突き刺さる
言葉が出ない
立ち止まってしまう
下を向いて、道の真ん中で
彼の電話の相手なんかは誰でもいい
俺は彼の本心を聞いてしまった
彼は俺の事なんて知らずに前へ進む
俺は、どうしたらいいんだろう
このまま会議なんて行けるのだろうか
行ってもいいのだろうか
頭の中が混乱する
でも、彼は俺の事に気づいてない
俺が気付かないふりすれば……
俺に出来るのだろうか、そんな事が
もと来た道へ戻り進む
俺には出来ない
この事が無かったことなんて
この気持ちはなんだろうか
名前はあるのだろうか
無断欠席
この言葉は社会人として禁句だ
このような事があっては行けない
あるはずがない
でも、俺はやってしまった
スマホに通知がたまる
電話もかかってくる
けれど、全て放置
通知OFFにはせずに。
したらこの罪悪感を消してしまうかと思って。
体調不良だとか、都合があるとかいえばうちの社長はすぐ許してくれるけど
何だか今日は何も言えなくて
会議がある日は重要度なんて関係なくて、いつも何かしらの話がある
ライブ決定も、ちょっとしたコラボも、全部【会議】という名で括られる
だから今日、本当に重要なものが知らされているのかもしれないということ
でも、今日は彼の言葉が頭の中でリピートされる
時刻は19時20分
いつもとは違う道を通る
駅に入らずに左へ曲がる
そこは、ラブホ街
夜に輝る街
でも、誰にも声は掛けられない
漫画みたいにはならないんだなぁと常々思う
カップル、おじさんと若い子、いかにもアフターだろみたいな人
色んな人がいて、いろんな恋愛をしている
自由な恋愛と言っても男女の恋愛ばかり
そんな世の中ににイラついてる、怒ってる俺は
彼の事が好きなんだろうな
最終的にはやっぱり家で
独り寂しく過ごすしかない
ここは都会で、人が多いはずなのに
何でなんだろうと自問自答する
涙なんかでない
そんな俺は冷めてるのだろうか
ふとスマホを見る
現時刻22時52分
メンバーからの通知があるはずなのに、1人だけいない
やっぱりそーなんだな
スマホをベッドへ投げつける
意味なんてないのに
何も起こらないのに
その気持ちの片隅に
彼から何か、何かが起きないかななんて
ぐしゃぐしゃの感情のまま
また、外へと飛び出す
何も持たずに
身体ひとつで
ドアノブに手を置く
思い切って引っ張る
扉は固まったまま動かない
ドアノブだけが上下する
息が上がったまま、扉の前へ座る
灯りがついてない
まだ、帰っていないのだろう
上を見上げる
意外にも空が綺麗に見える
前にメンバーで見たよりかは綺麗とは言い難いが
それでも、三日月が綺麗に見える
都会でも見れないものじゃ無いんだなと感じる
何時かは分からない
何も持ってないから
帰って来るかなんて分からない
今日は喋ってすらないから
それでも足が動いたのは
俺の気持ちがずっと動きたかったから
動きたいと思いつつ動けなかったから
膝に顔を埋めて待つ20代後半男性
傍から見ればおかしい奴でしかない
現在2月後半
都内の気温は1桁から2桁いくかいかないか
雪のような雨のようなものが降ってくる
どうしようも無くて
ただじっと待つしか出来なくて
コツコツ
歩く音が聞こえる
眠っていたのだろうか
びくっとなってしまう
「……いふくん…?」
彼の声が聞こえる
家主が帰って来たのだろう
「っなにしてんの!ばかっ!」
会議も行かずに雪の中座っている
それだけ聞けば本当にばかだと思う
「…っみんな心配してたんだから」
…、君は?、彼は俺の事心配してたの?
みんななんて嘘じゃん
「とりあえず中に入って?」
彼がドアノブに手をかけ、鍵を取り出す
そこへ俺は後ろから彼の前へと手を回す
傍から見ればバックハグというもの
「……なに…?」
_ビジネスだけでいいから
俺の事まじ無理でもいいからさ
お願い
これからも俺の相方でいてよ_
「…、なんのはなし」
_好きだよ
だから、俺の相方でいて_
「、訳わかんない…開いたし中入ってから……」
_ばいばい_
「っは?ちょっとどこいくっ…」
言葉に出来ない感情はまだ少し残ってる
でも、言えた
これで良かったんだ
俺の自己満でもいい
彼には申し訳ない気持ちでいっぱいだけど
「っ、待ってっ…… 」
肩に手を置かれる
びくっと跳ねてしまう
こんなにも近くにいて何で気づかなかったんだろう
息があがっている彼
「っ勝手に1人で終わらさないでよ」
「…、僕、まだ何も言ってないじゃん」
何か言ってくれるの?
待ってたらいい事でも言ってくれるの?
あの本音を聞いていい事なんて聞けないよ
_…っ何か言う事あったの?_
「……っ」
_、やっぱり無いじゃん_
「…っ戻ってよ、」
「あの頃のいふくんに戻ってよ!」
_なに言って…っ_
「僕の気なんか知らないくせに」
最初から気なんてないだろ
なんて言えない雰囲気
だって、これは彼が何かしら思っているから言えるセリフだ
「っビジネスする前、不仲になる前、なんで気づかないの?」
「今のいふくんなんて大っ嫌いだ」
心臓に突き刺さる
あの時の言葉と、いやそれ以上に
「……っ最初っから僕はずっとそう思ってたのに、不仲になろうなんて言わないでよっ」
前から彼が飛びつく
手を背中に回して
ぐすっと言いながら
同時に俺の目からも水が垂れる
俺も彼の背中に手を回す
少しさすってあげながら
名前の無いこの感情
君となら無くせれるのかもしれない
_でも、昔には戻れないからさ
今の俺も好きになってよ_
彼の頷きが俺の肩へとあたる
俺は彼を強く抱きしめる
新たに出来たこの感情を無くさないように
泣き虫2人でこれから。
この思いが消えないように。
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