─静かな避暑地の別荘にて─
「……本当に、来てしまった……」
湖のほとりの別荘。見事な眺望。誰もいない。
(なぜ私はこのようなことを…)
帰ったあとの王子達の宿題回収、その他いろいろな仕事のことを考え頭を抱えるハイネ。
──と、とても楽しそうなヴィクトール。
「ハイネ、荷物は運ばせておいたよ。こっちが君の部屋、で、こっちが私の──」
「部屋、分けるんですね?」
「いや、それは一応……紳士として」
「どこがですか」
そもそもこの旅は、“付き合ってもないのに”なぜか計画されたものだった。
ということで、非公式ハネムーン in ニーダーグランツライヒ州、スタート。
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─回想:旅立ち前の王宮にて─
「明日からハイネと二人で、数日間ほど外出してくる」
「えっふたりで!?」
「お父様、もしや王室公務の一環としての視察へ……」
「違うぞブルーノ」
「じゃあなに!?何しに行くの!!」
「決まってるだろう。ハネムーンだよ」
「きゃあああああ!!!!センセーと父上ついに…!!!」
「誤解を生むような発言やめてください。
……はぁ…宿題出しておきますから、私たちが帰ってくる前にしっかりやっておいてくださいね。」
⸻
─現在・別荘の夜。テラスにて─
「……しかし、静かで良いところだろう?」
「確かに……空気も澄んでいて、星がよく見えます」
「私はこういう静けさの中で、君の隣にいられるのが嬉しいんだ」
照れるハイネ、赤い髪が夜風に揺れる。
「……陛下、そういう台詞はもう少し慎重に言ってください」
「なんだい?ハネムーンなのだから、遠慮は無用だろう?」
「付き合ってませんよね!!?」
⸻
─深夜・隣の部屋から壁越しに─
「ハイネー?」
「なんですか……」
「……寂しくなった」
「………」
「ハイネー……」
「……今行きますので黙っててください」
しぶしぶ寝間着で部屋を出るハイネ、その顔はほんのり赤い。
⸻
─そして翌朝・王子たちからの電報が届く─
『父上とハイネへ
無事ですか!!!
事件とか起きてませんか!?
キスとか、してませんか!?!?
愛は確認されましたか!!??
ブルーノ兄様が眠れてません!!
カイ兄様が「大人の関係…」って言ってます!!
レオ兄が泣いてます!!!
⤴︎泣くわけないだろう!!!!!
追伸:リヒトはうるさすぎて廊下に出されました。』
「……王子たちは、全力でハネムーンを見守ってくれているようですね」
「君と来ると、すべてが楽しくなるんだよ」
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