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なんて事ない日。いつも通り友達と話したり、勉強したりするような、何ら変わりない一日。学校から帰って家の前につき、何をしようかと考えながら家の扉を開けようとすると、急に扉が開き中に引っ張られた。
「っ痛、」
転んでしまって少々痛いので何するんだと思いながら顔をあげると僕と同じ顔の男がいた。
「は、」
「あ、待ってましたよー、刀也。」
唖然としている僕にお構い無しにそいつは僕をロープで縛った。気づいた時にはがっちり縛られていて、逃れようとするもビクともしなかった。
「どういうつもりですか。勝手に人の家にあがって僕を縛るなんて。大体あなたは誰なんですか。」
「見たらわかるでしょ?僕は剣持刀也。用なんてそりゃあ、あなたを捕まえるために決まってるじゃないですか……♡」
「は?何のために、」
「あなたを逃がさないためですよ。ずっと、ずっと僕のそばにいてもらうために。」
そう言ってこいつはうっとりとした顔をした。冗談じゃない。というかこいつ、僕が罰ゲームで出した束縛グッズのやつじゃないか?だとしたらかなり面倒だ。本当に逃がしてくれないだろう。だがしかし、簡単に捕まる僕じゃない。隙を見て逃げ出してやる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
結論から言うと、全然逃げられなかった。まず逃げられるような縛り方をしていない。こいつプロだな。いやまあ束縛グッズのやつなんだから当たり前だろうが。というかしばらく学校にも事務所にも行けていない。不審がられていないのはあいつが代わりに休みの連絡を入れているからだろう。何せ声も顔も僕そっくりなのだから。家族はどうしたのかって?それぞれ用事があって数日間誰もいないのだ。なんてこったい。
とはいえずっとそういう訳にはいかないだろうし、明日には両親は帰ってくる予定だ。
「ねえ、ちょっと。」
「ん?どうしたの?」
昼食を作っているそいつに話しかける。
「明日には僕の両親帰ってくるんだけど、どうするつもりなのさ。このままってのが出来るわけないけど。」
僕がそういうとそいつは少し目を見開いて、それからすぐにまたにっこりとした。
「ああ、心配してるんだね。大丈夫だよ。今ここを借りてるのは仮なんだ。ちゃんと家族が帰ってくる前に僕の家に行くよ。」
なんということだろう。流石に僕がいないとなれば家族の誰かが……いや、こいつが色々と理由をつけて誤魔化すだろう。こいつの家がどこにあるのか分からない以上、逃げるなら今日しかない。だがしかしどうすれば逃げられる……?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はい、どうぞ。」
夜。こいつはご丁寧に寝る前は必ずホットミルクを作って飲ませてくれる。素直に受け取りたくはないのだが、飲み物に罪は無いし、寝つきが良くなるのは本当なので毎回飲むのだが。第一既に手料理を毎食食べているため今更だ。
「ん、飲み終わったね。コップちょうだい。洗っておくから。」
飲み終わったばかりでまだ少し暖かいコップを渡す。こいつはだいぶ人の世話に向いてると思う。向きすぎて相手をだめにしてしまうくらいには。
「ふふ、おやすみ。明日は僕の家に行くから、ここで寝るのは最後だね。」
「帰らせてくれたりとかしないわけ。」
「もちろん。家からは絶対に出さないよ。だってようやく捕まえたのに、逃がすなんてことするわけないでしょ?……さ、早く寝よ。おやすみ。」
こいつは何か用事がない限りはずっと僕のそばにいる。当然寝る時だって一緒に寝るわけだ。目の前に同じ顔したやつがいるのは慣れてしまったが嫌なものは嫌だ。というか本当に隙がない。僕だろ。言っちゃなんだけど僕なら絶対どこかしらでやらかすだろ。こういうの得意じゃないだろうし……というか眠い。ものすごく眠い。どうしても人間の三大欲求には勝てない。あぁ、どうしよう……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……ん、」
明るい、気がする。とりあえず起きるか。
「……は?何ここどこ?」
「あ、起きたんだね。おはよう。」
「ねぇ、ちょっと、ここどこなの。僕の、部屋……」
「ふふ、ここはね、僕の家!いらっしゃい、刀也。あ、違うか。これから一緒に住むんだし、おかえりかな。」
「は、」
ちら、と近くにあった時計を見る。
「え、?」
いつも起きる時間より何時間も遅い。
「あ、そういえばね、昨日のホットミルクに割と強めの睡眠薬入れたの。移動する時がいちばん危ないからね。刀也は全然僕に心を許してくれないし……」
そう言って優しく頬を撫でてくる。僕は脳が理解することを拒んでいるのか、何も言えずにされるがままになるしかなかった。