Episode1:異世界と暗黒物質
クラギ視点
ガチャリ、とドアの音がする。
「ついたよ~」
[…]
目の前のその子は興味がないみたい。
家に入って、ドアに鍵をかける。
ただそれだけなのに、懐かしいと感じる。
まあ、数年前に旅に行ってから一回も来てなかったもんな。
懐かしさを感じつつ、とある一部屋の扉を開ける。
そこには、赤黒いシミや異世界の物たちが置かれていた。
それを見た途端、まるでふわふわ宙をさまよってるみたいな、そんな気分に落ちる。
不思議なものを久々に見たから、そんな気持ちになってるんだなと思う。
意識が引き戻されたのは、とある声を聞いてから。
「[…しっかりしろ、旅人。]」
何だろう、この声は。
まるでノイズが走っているかのような、でも聞き馴染みのある声。
「…この声の出どころは…」
ふと疑問をこぼしてみると、あの子が私の喉のあたりに近付く。
「[ここだ。]」
…え。
ああそうか、私の声だったのか……ってなるか!
いや普通にノイズみたいな低めな声と私の声が混じってる感じだったからね?
…あれ、冷静に考えると…
この子なんで謎の声の出どころ知ってんの?
そう思考を回していると、とある結論が私の中で出てきた。
「…もしかして君が私の声借りてる?」
[…]
そう言うとその子は小さく頷く。
…あれ、もしかしてこの子声出せない?
声出せなくて私の声借りてる…ッテコト?!
めちゃくちゃ可愛いじゃん!!!!
あれ?そうなると仲間同士でも意思疎通取れなくね?
…って思ったけど、テレパシーとか便利なものがあるから大丈夫か
そう考えていると、私の悪い癖が出てしまう。
もっとこの子が住んでる場所を知りたい。
もっとこの子の仲間や友達のことを知りたい。
もっと……この子やこの子の友達の強さを知りたい。
私の中の知的好奇心がもっと、もっと、と知識を強請っている。
こういうところで私は止まれない。
欲望がそれを欲するのなら、従うしか選択肢はないのだ。
「…よし、君の世界に行ってみよう!」
[……?!]
「わぁ絵にかいたようなびっくり★」
こういう反応は新鮮で好きだな~
相変わらず前と変わらない部屋から異世界の物を厳選してリュックに詰め込む。
「これと……これと……あ’’ー…全部持っていきたいな…」
どれも思い入れがあって、全部全部欲しいもの。
「[…意外と強欲なんだな]」
「えー…?そうかな~」
なぜか自分は強欲だと言われる。
【別に本能に従ってるだけなんだけどなぁ】
…まぁ、厳選が苦手な私にはぴったりの状況だ。
その苦手さえも、根こそぎ好きに変えてしまおう。
好きになったら、あとはそれを求めるだけになるから。
「…厳選できた~…」
「[よかったな]」
ここまで時間がかかるとは。
一応無くした時すぐ探せるように、メモしとこ。
*ネグジェ・グングニル
・深層と呼ばれた世界の武器。空間を切り裂くことができる。
*ステラ・レーヴァティン
・同じく深層と呼ばれた世界の武器。時空を歪ませることができる。
*もらった黒いチョーカー
・女の子と男の子からもらったチョーカー。あの3人とおそろい。
*クラギお手製二丁拳銃
・私が作った白黒の二丁拳銃。白が死を、黒が生を司る。
*小さい時に女の子が作ってくれた髪飾り
・お墓にいる女の子がくれた水色のリボン×2。お守り効果付きで、彼岸花が刺繡されている。
*日記
・私が愛用している日記。今回は長い旅になりそうだから持っていくことにした。
*貰い物の白いリボン
・私がいつも付けている白いリボン。中央の部分には黒蝶の飾りがついている。
*欲罪刀「大罪」
・全ての罪が集まる世界で抜いたもの。私にしか扱えないものらしい。
「よし、全部メモできた!」
「[お疲れ様。]」
「それじゃ、君の世界にいこっか!危ないから下がっててね!」
そういって、ネグジェを取り出す。
[?]
「一、二の…さん!」
ブゥン、といい心地いい音があたりに響く。
思いっきり振り回したそれは、見事に空間を切り裂いた。
「[…凄いな]」
「この武器やっぱりすごいよね」
まあこれ手に入れるまでにすごく時間がかかったし…
実力はもう強い訳だね。
「じゃ、入るよ~」
そう言って私はその子を抱え、空間の裂け目の中に飛び込んだ。
「よっ…と!」
どこぞのエアライダーのように綺麗な着地を決める。
着地は綺麗に決めたい。
「おお…凄い綺麗なところだな…」
はるかぜが吹いてて、とっても平和そう。
わぁ、綺麗な黒い蝶々^^
それ以外にも、たくさんの自然が感じられる…!
「いい所だね~」
[…(コクコク)]
あ、頷いてくれた
かわよすぎて爆散しそう。
「…そういえば君の名前は?」
[…]
そう言えば聞いてなかったわ
可愛い名前でもかっこいい名前でもいいな…
「[俺の名前はダークマター。]」
あっ(尊死)
待って?めちゃくちゃ強そうな名前…
でも今は私の腕の中にいるっていうギャップが好き!!!!!!
もうね、ビジュが可愛いし可愛いしかっこいいのよ。
それだけでもうね、爆散できるよね。
ね^^
「そうなんだ、じゃあマター君って呼ぶね!」
「[…好きにしろ。]」
おっ、ツンデレか?^^
可愛いし可愛いし可愛い…最強だね
「んー…空気が澄んでるね~」
[……(コクコク)]
マター君をそっと地面に置いて、腕を伸ばす。
いつもは異世界来てからすぐ戦闘することが多かったから、平和なのが新鮮な気分だ。
「よいしょ…」
「[…なんでお前は俺を持つんだ?]」
「え?かわi((ンン”…持ちやすいサイズだから」
つい可愛いからと言うところだった……危ない危ない
というか…ここは何という場所なんだろう。
「とりあえず歩いてみるか~」
「[そうだな]」
とりあえず探索してみよう。
そう思い、私はマター君と一緒に歩くことにした。
今回はマター君の名前がわかりましたね
さあ次回は誰と出会うのか
「[…ばいねこ]」
コメント
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さとり「可愛いわよねぇー」