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人類滅亡の日にこれは私の日記を元につくられた一冊の本である。
かつてのこの地球の支配者であった人類滅亡後の世界。
といっても多少の人間はまだいるらしい。
私はその数少ない人類のひとりだ。名前は021。元は日本人だ。本名ももちろんある。だが、ここでは番号でしか呼ばれないし、それ以外では呼んではいけない。勘づいた人もいるんじゃないかな。私は奴隷だ。この地球の新たな支配者、…の奴隷だ。それは俗にいう宇宙人である。
-私はこの番号をつけられて思った。少なくとも私以外にも人間は20人いるんだと。いや、違う。3桁なんだから100人はいる。少し安心した。
「@@/&@&_&!?#&?%°#^:」
あぁ、イヤフォンが外れてた。こいつがないと何を言ってるのかまったくわからない。そっと慣れた手つきで耳にはめた。
「おい、聞いてんのか?はやく出てこい」
ん?どこにつれていかれるのだろうか。いつもなら休憩時間なのに。
外に連れ出されるとそこには私以外の人間がただひとり、愚かな姿で佇んでいた。
私を連れ出した宇宙人が口を開いた。
「お前の友達だ。こいつは昨日食べ物を盗んだんだ。愚か者は処刑、よく見ておけ。」
未来の処刑はどうやってやるんだって?聞かない方がいい。それより、私はこのときここにきてはじめて他の人間を見た。
「や、やめてくれーーーー!!」
死に際に叫ぶ。実に人間らしい。それなのに、半ば生きることを諦めている私は処刑されているのを見ても驚きはしなかった。”すでに”私は生き物でなかったのだ。
さて、なぜ宇宙人は私だけにこんなものを見せたのだろうか。人間の悲しむ姿を嘲笑いたかったのか?私にはそんな力は残っていなかったみたいだ。随分長く笑顔にも涙にも縁がなかったことに気づいた。
「すばらしい。」宇宙人がぼそっと言った。私はなんて心のない奴なんだと思いながら、そんなことはわかりきっているじゃないかと心の中でつぶやいた。その後、またどこかにつれて行かれて…あまり記憶がない。
また朝が来た。小さな部屋に取り付けられた小窓から溢れる光に私は黄昏ていた。私の生活で光を感じる瞬間はこのときだけだ。「おい021、朝ごはんだ。今日はご褒美にジャムだ。」いちごジャムだ。何年ぶりだろうか。いつもの朝食はコッペパンがひとつと一杯の水だけなのに。褒美って何の?記憶を巡ってみるが思い当たる節はない。「食べ終わったら少し外に出よう。」「@_&」と返事した。これは日本語でいう「はい。」にあたるみたいだ。もちろん「いいえ。」なんて言葉は教えてくれない。
朝食を食べた後、外に連れ出された。「なんだこれは…」思わず声が出た。自分そっくりの人間がいた。「へっ、驚いたか?お前のクローンさ。」「は?」驚きなのか怒りなのかわからない気持ちが込み上げてくる。夢であってくれといつも以上に強く願ったのだった。