好きなもの

…今、目の前で起こっている事は現実なのだろうか。気付いたら好きで、そこからずっと好きで、苦しいのも超えて、平穏な片想いをし続けて何年経ったのだろうか。ルームメイトであるユンギヒョンに妬いて、夫婦なんて言われてるナムジュニを羨ましく思って、可愛くてあざといジミニに色んな愛嬌の仕方を教えてもらって、格好良すぎるテヒョンイとお似合いすぎて泣いて、容赦なく甘えにいってるジョングギを必死に自分の方に引き寄せて…自分が、ジンヒョンの隣で笑ってる姿なんかちっとも想像出来なかったというのに。

「……僕………」

「ぁ………何て事だ……！」

「？」

「もっと良い雰囲気を醸し出して、そのまま雰囲気で流して既成事実を作る予定が…！あまりにも鈍感すぎて思わず本音が…」

「……既成事実……とんでもない事考えてたんですね」

「……仕方ないじゃん…最近は、いつユンギにとられちゃうのかで頭がいっぱいだったんだから…」

「……なるほど、それでユンギヒョン……」

まだ、夢の中にいるみたいに頭がふわふわしている。…ジンヒョンに大声で捲し立てられたのも一つの理由として挙げられるんだけど。何より、ジンヒョンが僕のことを好きだって…ずっと、好きでいる人と、実は同じ気持ちだったなんて……

「……………」

「…あの……ごめん……こんなだけど、一応…その……こ、告白、であって……」

「……………」

「す、すぐに返事が欲しいわけでは……いや、出来ることならすぐ欲しいんだけど…その、急かしたりはしないから……」

「……………」

「……ホ、ホバ？あの……！？、え、な、泣いて……ご、ごめん！全然気付かなかった…！ティ、ティッシュ…！」

「………ティッシュ、は…後で、良いです……」

「え？でも、滝みたいになってるよ…？」

「………良い…です……それより…返事、を…したい、です………」

「っ、……分かった……ふぅ……改めて言わせて欲しい。…僕は、ホバの事が、好きだ。…僕の、恋人になって、欲しい……」

…ジンヒョンのこの真剣な顔、大好きなんだよな…いつもなら、この真面目な顔で寒い親父ギャグを言ってくるのに、今日は違う。……どうしよう、僕……ジンヒョンの事、大好きだ。

「……っ、はい……僕、も…ひくっ…ジ、ヒョン、の…ぐすっ…事…っ、大、好き……です…ぐずっ…こ、な…僕で…良いなら…ひっく…お願……っんぐ……」

ぎゅぅ……

「……急にごめん……でも、離せない事を許して。…やばい、めっちゃ嬉しい……」

「…っ、ヒョン……うぅ〜……！」

…夢じゃないよな？だって、嗚咽の出しすぎで喉が痛いし、泣きすぎで目がしょぼしょぼするし、抱きしめられているから体があったかい。少し息が苦しいけど、そこも含めて今起きてる事は全て現実なのだというのが分かる。…今、凄い幸せだ。こんな幸せな事、今までは夢のまた夢だったのに。

「…そんな泣くなよ…ほら、一回拭いたら？」

「っぐず……う、ん……はぁ…ひっく……っうぅ……えぅ、う……！」

「やぁー…何か、嫌々に見えるよ…え？嫌々じゃないよね？気を遣ってるとかなら今言って欲しいんだけど……」

「…んん……！違う……ひっく…嬉し、から……ジンヒョ……僕…ずずっ…今…っ、凄い、幸せ…です……っ」

「……そんな風に笑われると、余計離したくなくなっちゃうでしょ……」

「はぁ……っ、ずず………ないで……離さないで、欲しい、です……」

「……良いの？そんな事言われると、本当に離さないけど」

さっきまでの真剣な顔から、気の緩んだ、ホッとした顔で僕の事を抱きしめてくれるジンヒョン。とてもあったかくて、優しくて、涙が止まらない。こんな泣き虫だったっけ、僕…でも良いや。こういう時くらい良いでしょ。だって嬉し涙なんだもん。ジンヒョンの服に涙のシミを作っちゃってる事は少し申し訳ないなと思うけど。

「ホバ、絶対大事にするから。だから、ずっと側にいる事を誓ってほしい」

「…もち、ろん……！絶対、ですからね…！」

「…ありがとう…愛してるよ、ホバ」

「僕も…僕も、ジンヒョンの事、愛してます…」

正直、不安がないのかと言われたら嘘になる。男と付き合うなんて初めてだから…分からない事だらけだ。それでも、僕一人じゃない…ジンヒョンがいるから。それだけで心強くて、暖かい気持ちになれる。…ジンヒョンが僕にとってそうであるように、僕もジンヒョンにとって、側にいて安心出来るような存在になれるように頑張ろうと心の中で強く誓い、抱きしめている腕に力を込めた。

皆様、【好きなもの】これで完結でございます。長らく読んで下さった方々、本当にありがとうございました。始めたばかりの初心者であるにも関わらず、沢山のいいねと愛読、感謝しております。

そして、【好きなもの】で無事ゴールインしたので、新作という名の続編を書こうと考えております。タイトルや進行は何も考えておりませんが、付き合ってからの二人のやり取りや苦悩等を書けたら良いな…と思っております。

改めて、ありがとうございました。そして、次回作も宜しくお願いします！

（コメントもお待ちしております…🙏）