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#ファンタジー
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「なぁじゅう!ほら、あれ花火ちゃう!?」
そう、舜が俺に話しかける。今日は二人での仕事でこの後予定もなかったから、舜ちゃんの家にお邪魔することになった。ご飯も頼んだのを食べて、そろそろお暇かな〜って思ってたら話しかけられた、ってのが今の流れ。こんな状況整理してる間も「なぁー!」「じゅう〜!?」と飛んでくる声は、ずっと元気。なんならうるせぇ。
「はいはい、聞こえてるって。花火?」
そろそろ行ってあげなきゃ拗ねちゃうだろうから、ソファから腰を上げる。ベランダのバルコニーから身を乗り出した舜太と目が合う。こっちこっち、と手招きされて歩を進める。隣おいで!と言いたげに自分の隣の柵をぺちぺち叩いてるけど、いや俺サンダルないんだよな。素足で行けってこと?うーん。
「舜太、俺サンダルないからいけないよ」
「え?……あ!本当やん!じゃあ俺の履いて!」
慌てたようにこっちに引き返して、サンダルを脱ぐ。はい!と満面の笑みで譲られたものを、断れる訳もなく。サンダルを借りてベランダの柵に手をかける。ぬるい夜風が肌を撫ぜて部屋に抜けてゆく。ドン!パラパラパラ…と空に咲く火の花。あ、あの黄色とピンクのやつは仁ちゃんと勇ちゃんかな、花火でもくっついてんな。あの青くて大きいのは太ちゃん。なんて勝手にメンバーに結びつけてたら、玄関からサンダルを持ってきたらしい舜太が、俺の横に並び立つ。
「な、綺麗やろ」
「めっちゃ綺麗、舜太知ってたの?今日花火なの」
「ポストにチラシ入っててそっから!じゅうと一緒に見たくて引き留めちゃって……でも、柔と話すの楽しくて時間忘れてた!」
あっけらかんと笑顔とともにそう話されてしまえば、本当に?なんて疑う余地もない。犬みたいだなぁ、なんて思いながら笑いが漏れる。
「一緒に見たかったなら時間忘れんなよ」
「確かにそうなんやけど!楽しかったから〜…」
見えないはずのしっぽと耳が垂れたように思えて、分かりやすいやつすぎてもはや心配になる。いや、舜ちゃんは騙されて壺買うとかはないと思う…から大丈夫なんだけど。じぃ、と見つめすぎていたみたいで「俺の顔になんかついてる!?」と騒ぎ出すから「あーついてる。目とか」なんてふざけてみて。けらけらと笑いながら花火を眺めるこの時間が、終わって欲しくない。なんて叶うはずもないお願いはそこいらにしておく。
「なぁ、柔ちゃん」
「ん?」
舜太に顔を向ければ、両頬に手を添えられる。そのまま顔が近付いて来て……あー、これ。傍から見ればめちゃくちゃ絵になるんじゃない?なんて、急な展開に追い付いてない俺の脳を置いて場面は進んでいく。ちう、と軽いキスにしては少し長く俺の唇と舜太の唇が重なる。ぱ、と顔が離れていけば、舜太が俺の頬を撫でる。その表情は愛おしいものを見るような、慈愛に満ちた顔で。
「おじいちゃんになっても、一緒に花火見よな」
……それってもうプロポーズじゃない?って言葉は飲み込んで、舜太の顔を改めて見る。舜太の目は柔らかくて、それでいて冗談なんて一ミリも混ざってませんって瞳をしてて。その目がたまらなく好きな俺はまだ知らないでいてね。あんま照れたりとか、したくないから。恥ずいし。
「……当たり前でしょ。」
ただ、今だけはその瞳に俺を映していて。
コメント
1件
うわ~~~、これめっちゃ良かった……! 花火見ながらの「おじいちゃんになっても一緒に」とか反則すぎるでしょ😭 舜太の犬みたいな感じと、柔ちゃんの冷静っぽくて実は照れてるバランスが最高。最後の「当たり前でしょ」からの、恥ずかしがってるの隠すとこ、刺さった。短いけどぎゅっと詰まってて、続き読みたくなっちゃう!