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ユウは歯磨きの後、部屋に戻った。
「むふふー」
部屋はかなり広い。ある一角にはムツキを模したユウお手製のぬいぐるみやフィギュアまでが取り揃えられており、すぐに隠せる程度に並べてあった。そのムツキグッズの中には、この世界ではまだ発明されていない写真まで飾ってあるのだから、神としての職権乱用もいいところである。
「あぁ……いい!」
ユウはぬいぐるみを手に取り、ベッドでぎゅっと抱きしめながらゴロゴロし始めた。姿が幼女のため、はた目にはとても愛らしく似合っているが、年齢はこの世界よりも上である。
「むふー。ムツキは今日も素敵だったー。ずっと眺めてたーい。一生添い寝して過ごしてたい!」
ユウにとって、ムツキは超ドストライクの存在だった。
当然である。
容姿はユウ自身で創造したのだから、彼女好みの美形にしている。ただし、魂、つまり、性格については、いろいろと探し回った末に異世界の神に無理を言って、ひょんなことで死んでしまったムツキの魂をこちらの世界に呼びよせたのだ。
よって、容姿、性格、能力、完全にユウ好みである。
「かっこいいし、強いし、何より、性格が超いい。素敵、素敵、素敵!」
しばらく身悶えた後、何かスッキリしたのか、ユウは目を閉じて、ゆっくりと呟き始めた。
「世界征服は言い過ぎだけれど、このままじゃ、ムツキがこの世界を嫌になっちゃうかもしれない」
ユウはムツキが絶望する顔を思い浮かべた。
一度だけ、様々な呪いの話をした際のムツキの絶望した顔を見た時、ユウは自分が世界とともに終わるような感覚に陥ってしまった。
少し困るかな、くらいの気持ちだったから、彼の表情に相当衝撃を受けたようだ。
「うわああぁっ!」
「どうしました! 何か、ありましたか?!」
少し強めのノックの音とともに、アルの高めの声が扉の外からユウに向けられる。
「ごめん! 何でもない! ベッドから落ちそうになっただけ!」
「そうでしたか。安心しました。お気を付けください」
アルはそう言って、すっと離れていった。
「はーい。ありがとう」
ユウは少し呼吸を整えてから、小さな声で慌て始めた。
「絶望されるのは……それは困る! すっごく困るから、もう少し調整をがんばらないと! ムツキのハーレム要員も探さないといけないし!」
どうやらユウには独占欲がないのか、もしくは、ムツキのハーレム願望を知っているので、それを叶えたい気持ちの方が勝るのか、いずれにしても美女や美少女を彼に与えたいようだ。
「そうだ。たしか、魔王の中に綺麗な女性型がいた気がする! 人族側にもムツキの好きそうな女の子がいた気がする! ムツキにちょっと会わせてみようかしら。うーん。あ、ここら辺なんて、良さそう。この中だと誰がいいかな」
ユウの呟きは何やらおかしな方向へ向かっているようにも聞こえるが、これを否定してくれる者は誰もおらず、いたとしても止められる者はいなかった。