「おはよう花里さん」
「お、おはよう……?」
朝、優奈と廊下を歩いていた凛は、最近よく話しかけてくるサッカー部の橋本悠斗(はしもとゆうと)に挨拶された。挨拶だけだったが、普段あまり話さない相手だったので凛は驚いた。優奈と凛と言えば美術部に他のみんなより一足先に向かっていた。
「なんか……あの子凛のこと好きそうねぇ」
近所のおばさんのような口調でジトーっと目を細め、ニヤニヤしながら言う優奈に凛は言った
「いやいや私の事好きになるなら見る目がないよ……」
「そうよねぇ」
「え?そこ肯定しない所。」
そんな茶番をしながら前を見ると、ちょうど凛達を見ていたらしい家庭科室の前に居る隆と目が合った。
「あ、隆だ。おはよっす」
「おはよう隆」
「ん……あぁ、凛と優奈か、おはよう。」
ぼーっとしていたらしい隆は凛と優奈に気づいていないらしく、驚いた表情で挨拶を交わした。
「部活頑張ってねー」
「あぁ、2人も頑張れよー」
軽く声をかけ、美術部へ向かおうとすると
「あ、凛、ちょっといいか」
「ん?」
隆は呼び止めた。凛は少し驚きながらも嬉しそうに振り返る。優奈はすっとこすっとこ先へ行ってしまった
「あのー……、今日、一緒に帰んねェか?」
「……え?」
急な言葉に凛は思わず腑抜けた声をだした。
「いや、全然優奈と帰りたかったらいいんだけど、家の方向同じだし、良かったら____」
「もちろん。じゃあ部活終わったら家庭科室寄るね」
ニコリと言うと隆は意外だと言うような顔をしながらも、ニカッと嬉しそうに笑って言った
「いや、いいよ。俺が迎えに行くワ。だから待ってて」
「あ、ありがとう……」
あまりにも眩しい笑顔に凛は思わず顔を赤くした。そしてまた後でと言って別れ、少し進んで振り返り、隆が家庭科室に入ったのを見ると同時に凛は「あ゛ぁ~……」と長いため息をついた。そして、まだ少し熱を持つ頬に、冷たい手を当てながら紅潮する頬を必死に覚まそうとした。
「っしゃっ……!」
一方、隆の方と言えば、家庭科室に入ってすぐガッツポーズをキメていた。彼自身、断られるかもしれないと言う不安で胸が押しつぶされそうになりながら必死で言った一言であった。それに、知らない男子と挨拶を交わし、言葉は聞こえなかったが笑っていた凛を見るとどうも無性に胸が落ち着かなかった。
「あぁ……
____好きだ。」
そんな隆の言葉は、まだ誰もいない家庭科室に消えていった。
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少し短いです。
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